嘘つき運命ごっこ


「おばあちゃん!」


おじいちゃんの遺体が安置されている病院に到着し、待合所で顔を両手で覆って座っているおばあちゃんに声をかける。


私の声を聞いた瞬間、小さく縮こまっていたおばあちゃんは顔を上げ、真っ赤な目を細めて笑った。


「芙結ちゃん、遠いところをありがとう」

「ううん、おばあちゃん、辛い時にひとりで寂しかったでしょ?」


おばあちゃんは泣きそうな顔で笑い、椅子から立ち上がった。


「栄一も、旅行中だったのにごめんね。おじいちゃん、まだ遺体安置室で眠ってるから、一緒に会いに行こう」


フラフラとおぼつかないおばあちゃんをふたりで支えながら、指を差す方向へと向かう。

場所を案内してもらわなくても、私には、その場所がどこにあるのか分かっていた。

大好きなふたりの赤い糸が、まだ繋がっていたから。
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