嘘つき運命ごっこ
遺体安置室の前に立ち、意を決して扉を開ける。

暗い部屋に、顔に白い布をかけられた人が横たわっていた。

手は、布団の中だろうか。

おばあちゃんから伸びた赤い糸が、掛け布団に入り込んでいる。


「おじいちゃん……」


顔を見る前に私が呟くと、ふたりから小さく泣き声が届いた。


「お昼まではね、普通に生活してたのよ。ふたりでご飯を食べて、のんびりテレビを見て……。おじいちゃんが、頭が痛いって言って……突然。……それきり」


優しい声が、途切れ途切れに詰まっていく。


パパが、顔にかけられた布をめくると、すこし青白く眠った顔があった。

化粧で、肌を綺麗に整えられている。

私たちは、静かに手を合わせた。
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