兵士となった幼馴染の夫を待つ機織りの妻
「風呂の用意ができるまで……まだ時間がかかるようだ」

 首元に頭を乗せた清隆は、ぐっと引き寄せて身体を密着させる。馬上でも抱かれていたが、今は部屋に二人きりだ。

「まだ汗を流していません」
「そんなのは構わない。だが……雪乃が怖がるようなら何もしない」
「怖いだなんて」

 確かに、誠一に襲われそうになった時は怖かった。だが、今雪乃の身体に触れているのは、恋しくてたまらなかった清隆だ。全く違う。

「あなたになら……どこを触られても気持ちいいもの」

 雪乃がはにかみながら答えると、清隆はごくりと唾を飲み込み喉ぼとけを大きく動かした。

「雪乃……なら、触るぞ」

 浴衣の上から、大きな手の平がなぞるように動き始める。うなじの匂いを嗅ぎつつ、耳たぶを甘く噛まれる。

「胸が大きくなったか?」
「だって……もうすぐ二十歳(はたち)だもの。あの頃とは、違います」
「だったら今夜は、たくさん違いを見せて貰おう」

 不埒に動く手の平から、官能が引き出される。久しぶりとなる睦みあいに、トクトクと胸が高まる。けれど、まだ旅でかいた汗さえ拭いていない。

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