兵士となった幼馴染の夫を待つ機織りの妻
 俯いた雪乃の前にして、清隆が声をかける。背の高い彼は、夕日を背にしていた。影法師が長く伸びる。

「雪乃、俺と家族になろう」
「……家族って、清兄さんと?」
「そうだ」

 清隆はこれまでも何かと雪乃を助けてくれた。手先も器用で、力も強い。両親の看病も、葬儀の手配も手伝ってくれた。けれど、彼の家は子だくさんで兄妹も多い。いくら何でも、雪乃が世話になれる余裕はない。

「……そんなこと、できない」

 下を向いて答えると、雪乃の顔に影がかかる。息がかかるほど近くに寄った清隆は、焦った声をだした。

「お、俺ではだめか?」
「だめって、おばさまに悪いもの」

 雪乃は首を傾けて彼を見上げると、清隆は形の良い眉を寄せている。

「なんで母さんが? むしろ喜ぶぞ」
「だって……清兄さんのところは兄弟も多いし。私なんかが増えると、困るでしょ?」

 清隆は雪乃の両肩を持つと、瞬きもせず真剣な眼差しを向けた。夕日が顔にかかる。

「俺の嫁になってくれ。雪乃と夫婦(めおと)になりたい」
「えっ」

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