兵士となった幼馴染の夫を待つ機織りの妻
彼がいるだけで、心が温かくなった。——彼の柔らかい眼差しに、何度も助けられていた。だから、これからは彼の道を邪魔しないように……彼の前から姿を消すべきだ。
「……はい、わかりました」
「清隆は藩主様のお館に招かれておるから、この村に留まることあるまい。お前もまだ若いし、嫁に迎えたい男もおるだろう。何なら、息子の誠一はどうだ」
「いえ、それは……」
村の男衆は、清隆と雪乃の仲睦まじい姿を知っている者ばかりだ。村長の息子の誠一は働きもせず、破落戸と一緒にいるから、そんな男と結婚したくない。
それに、この村に留まればいつ清隆が実家に顔をだすかわからない。彼の新しい妻を、家族を見ることに耐えられそうになかった。
「村長様。私は村を出たいと思います」
「……そうか」
村長は首を深くして頷いた。雪乃が他の男と所帯を持つならともかく、いつまでも一人でいられると旧藩主に顔向けできない。村を出るのであれば、好きにしたらいいと言い席を立つ。
「そうであれば、清隆が帰って来る日までに出て行くのだぞ」
餞別とばかりに小さな袋を置いていった。ジャリ、と銭が重なりあう音がする。
「……はい、わかりました」
「清隆は藩主様のお館に招かれておるから、この村に留まることあるまい。お前もまだ若いし、嫁に迎えたい男もおるだろう。何なら、息子の誠一はどうだ」
「いえ、それは……」
村の男衆は、清隆と雪乃の仲睦まじい姿を知っている者ばかりだ。村長の息子の誠一は働きもせず、破落戸と一緒にいるから、そんな男と結婚したくない。
それに、この村に留まればいつ清隆が実家に顔をだすかわからない。彼の新しい妻を、家族を見ることに耐えられそうになかった。
「村長様。私は村を出たいと思います」
「……そうか」
村長は首を深くして頷いた。雪乃が他の男と所帯を持つならともかく、いつまでも一人でいられると旧藩主に顔向けできない。村を出るのであれば、好きにしたらいいと言い席を立つ。
「そうであれば、清隆が帰って来る日までに出て行くのだぞ」
餞別とばかりに小さな袋を置いていった。ジャリ、と銭が重なりあう音がする。