追放予定(希望)の悪役令嬢に転生したので、悪役らしく物語を支配する。
「まぁまぁお兄様、いいではありませんか。権力者とお友達なんて素敵でしょう? 悪巧みし放題」
私、権力って言葉好きですよと微笑めば。
「リティカ、メンタル強すぎだろ。俺はお前の将来が本気で心配になるんだが」
と頭を抱えられた。
追放予定の妹の将来なんて案じる必要ないんだけど、と思いつつ普通にお兄様と話せている事に安堵する。
お兄様の心遣いを断ってしまったから、もっと気まずくなるかと思っていたのに、お兄様はその件に触れる事なく普通に接してくれる。
「……当日は、側にいてやろうか? 変な奴に絡まれても困るし」
王城の夜会とは違ってどの階層の人間もいる以上、身分だけでは守れない部分もあるしと心底心配そうに紫暗の瞳が私に尋ねる。
「ふふ、お兄様ったら」
あんな態度を取ったのに。
お兄様が、優しくて。
「天から与えられた類稀なる美貌を持つ私があまりに可愛くて連れ回したいのは理解できますけど、いい加減妹離れしていただかないと婚期逃しますよ?」
絆されそうになる。
「別に構わんさ。リティカの価値が分からない人間をこの家に入れても先がしれてる」
ぽんっと頭に置かれた手が温かくて。
私のコスモス色の髪を撫でる手つきが優しくて。
「……ボケたんだから、ツッコんでくださらないと。私、ただの痛い子ではありませんか」
ああ、困った。
これ以上、お兄様の事を揶揄えなくなる。
大きく息を吐き、気持ちを整えた私は、
「ねぇ、お兄様。精霊祭が終わったら、お茶会しません? 私とお兄様とお父様の3人で」
そうお兄様に提案する。
追放されてしまったら、私は公爵令嬢ではなくなってしまうから。
この家に転がる大きな問題をそろそろ片付けてしまおうと思う。
驚いた顔をするお兄様に、
「私、アップルパイを焼きますわ! とびっきり美味しいの」
そう言って私はとびっきりの笑顔を向ける。
お兄様とお父様。
家族、と呼ぶにはあまりによそよそしい2人の関係。
どちらも私の大事な人達だから。
放っておいてなんてあげないわ。
「……リティ」
「お父様のスケジュールは確か、中日が空きでしたわね。早速お父様に打診して」
「それ、来年じゃ駄目か? ミズロ茸のシーズン今年は過ぎてもう生えてないんだよなぁ。アレ貴重な上に保存効かないし」
私の提案にそう言って待ったをかけるお兄様。
「お兄様、何で最強の胃薬錬成しようとしてやがるのですか!?」
「いや、流石に何の備えもなくリティカの手作りはちょっと。しかも難しいやつはなぁ」
などとマジレスしやがりました。
「失礼なっ!! しばきますわよ!?」
確かに消し炭とか丸コゲの何かとか生産しましたけども。
そんな言い方はないじゃない!
いらっとした私は懐から一枚の写真を取り出す。
それはまだ少年だった頃のお兄様の姿。普段仏頂面のくせに、にゃんこにデレデレなお兄様が3徹明けの働かない頭で捕まえたそれがゴミ袋だったという黒歴史。
激写しましたとも。話しかけてましたね、ゴミ袋に。ちなみに映像記録水晶のムービー機能で録画済みです。
「リティカ! まだそれ持ってたのかよ!!」
ええ、こんな面白いネタ捨てるはずないじゃないですか。
私はニヤリと黒い笑みを浮かべ、
「私が望んだ事で叶わないことはないのですよ、お兄様?」
お兄様にそう告げる。
ばら撒くわよ、と脅しをつけて。
「お茶会、絶対決行しますから、付き合ってくださいますよね?」
絶対、超絶美味しいアップルパイ作ってギャフンと言わせてやんよ。
この世界にギャフンなんて概念があるかどうかは知らないけど。
「首を洗って待っていてくださいね、お兄様」
視線を逸らしたお兄様に、私はにこやかにそう宣言する。
前言撤回。
やっぱりこの家を出るまでお兄様の事は揶揄い倒そうと私は心に強く誓ったのだった。
私、権力って言葉好きですよと微笑めば。
「リティカ、メンタル強すぎだろ。俺はお前の将来が本気で心配になるんだが」
と頭を抱えられた。
追放予定の妹の将来なんて案じる必要ないんだけど、と思いつつ普通にお兄様と話せている事に安堵する。
お兄様の心遣いを断ってしまったから、もっと気まずくなるかと思っていたのに、お兄様はその件に触れる事なく普通に接してくれる。
「……当日は、側にいてやろうか? 変な奴に絡まれても困るし」
王城の夜会とは違ってどの階層の人間もいる以上、身分だけでは守れない部分もあるしと心底心配そうに紫暗の瞳が私に尋ねる。
「ふふ、お兄様ったら」
あんな態度を取ったのに。
お兄様が、優しくて。
「天から与えられた類稀なる美貌を持つ私があまりに可愛くて連れ回したいのは理解できますけど、いい加減妹離れしていただかないと婚期逃しますよ?」
絆されそうになる。
「別に構わんさ。リティカの価値が分からない人間をこの家に入れても先がしれてる」
ぽんっと頭に置かれた手が温かくて。
私のコスモス色の髪を撫でる手つきが優しくて。
「……ボケたんだから、ツッコんでくださらないと。私、ただの痛い子ではありませんか」
ああ、困った。
これ以上、お兄様の事を揶揄えなくなる。
大きく息を吐き、気持ちを整えた私は、
「ねぇ、お兄様。精霊祭が終わったら、お茶会しません? 私とお兄様とお父様の3人で」
そうお兄様に提案する。
追放されてしまったら、私は公爵令嬢ではなくなってしまうから。
この家に転がる大きな問題をそろそろ片付けてしまおうと思う。
驚いた顔をするお兄様に、
「私、アップルパイを焼きますわ! とびっきり美味しいの」
そう言って私はとびっきりの笑顔を向ける。
お兄様とお父様。
家族、と呼ぶにはあまりによそよそしい2人の関係。
どちらも私の大事な人達だから。
放っておいてなんてあげないわ。
「……リティ」
「お父様のスケジュールは確か、中日が空きでしたわね。早速お父様に打診して」
「それ、来年じゃ駄目か? ミズロ茸のシーズン今年は過ぎてもう生えてないんだよなぁ。アレ貴重な上に保存効かないし」
私の提案にそう言って待ったをかけるお兄様。
「お兄様、何で最強の胃薬錬成しようとしてやがるのですか!?」
「いや、流石に何の備えもなくリティカの手作りはちょっと。しかも難しいやつはなぁ」
などとマジレスしやがりました。
「失礼なっ!! しばきますわよ!?」
確かに消し炭とか丸コゲの何かとか生産しましたけども。
そんな言い方はないじゃない!
いらっとした私は懐から一枚の写真を取り出す。
それはまだ少年だった頃のお兄様の姿。普段仏頂面のくせに、にゃんこにデレデレなお兄様が3徹明けの働かない頭で捕まえたそれがゴミ袋だったという黒歴史。
激写しましたとも。話しかけてましたね、ゴミ袋に。ちなみに映像記録水晶のムービー機能で録画済みです。
「リティカ! まだそれ持ってたのかよ!!」
ええ、こんな面白いネタ捨てるはずないじゃないですか。
私はニヤリと黒い笑みを浮かべ、
「私が望んだ事で叶わないことはないのですよ、お兄様?」
お兄様にそう告げる。
ばら撒くわよ、と脅しをつけて。
「お茶会、絶対決行しますから、付き合ってくださいますよね?」
絶対、超絶美味しいアップルパイ作ってギャフンと言わせてやんよ。
この世界にギャフンなんて概念があるかどうかは知らないけど。
「首を洗って待っていてくださいね、お兄様」
視線を逸らしたお兄様に、私はにこやかにそう宣言する。
前言撤回。
やっぱりこの家を出るまでお兄様の事は揶揄い倒そうと私は心に強く誓ったのだった。