追放予定(希望)の悪役令嬢に転生したので、悪役らしく物語を支配する。
「さて、と。じゃあそろそろ予定通りライラのエスコート役に徹しようかな」
その一言で私は正気に戻る。
会場の空気が先程とは全く変わっている事に驚きながら、目を瞬かせる私に。
「リティカ、今日のドレスも良く似合ってる」
リティカにはピンクと青がよく似合うとロア様が褒める。
「ロア様のお見立ですもの。当たり前ではないですか」
とドレスの礼を述べる。
「わぁ、リティカ様もロア殿下にドレスを貰ったんですね!」
お揃いだと嬉しそうな声を上げるライラちゃん。
「ふふ、そうだね」
そう言って私達に近づいたロア様は私からライラちゃんを引き剥がし、彼女の手を取る。
「でも、君とリティカとでは贈る意味合いが違うんだ」
私達にだけ聞こえるようにロア様は囁く。
「そんなわけで彼女をあまり独占しないでくれるかな? 妬いてしまいそうだ」
冗談めかしたセリフだけど、ロア様の濃紺の瞳に本気の色が混じっていて、私は思わず息を呑む。
同性である私に嫉妬?
もう、それほどまでにライラちゃんの事を?
王子ルートの進行が速い気がするけれど、2人は同じクラスで私の知らない時間を過ごしているわけで。
ゲームよりも密度が濃いのかもしれないと私は考える。
何より本物のヒロインは見た目は勿論性格も面白くて超可愛いし。
これで落ちないわけがないなと納得して内心で頷く。
だというのに私はロア様の心情にも気づかずに、ライラちゃんにスパルタ淑女レッスンを行い、毎日彼女の時間を独占していたなぁとここ最近の己の行動を反省する。
仕方なかったのと心の中でロア様にお詫びしつつ、そろそろ撤退するかと私が行動に移すより前に。
「あ、じゃあリティカ様とダンスして来たらいかがです? さっきステップ間違えてしまったし、お手本見せてください! 覚えます」
私ここでごはん食べてるのでお二人でどうぞ、なんて無邪気にライラちゃんが提案する。
ライラちゃん、そうじゃない。ロア様が独占したいのはライラちゃんなんだって。この天然さんめっ!!
どう返すべきか、と逡巡している私に。
「踊らない」
ロア様は間髪入れずにキッパリと言い切った。
「今日の舞踏会で、俺はリティカとだけは踊らない。絶対に」
淡々とした、冷たい口調での拒絶。
取りつく島もないほどに。
分かっている。婚約者である私は今日、ロア様とは踊れない。
公爵令嬢としても、絶対に2番目に踊るわけにはいかないのだ。
分かっている。
ロア様の言葉の意味も、ライラちゃんがダンスを踊る順番の意味を知らないだろうことも。
全部ちゃんと、分かっている。
なのに、彼の口から聞いたその言葉が棘のように刺さって胸が痛んだ。
「さて、ライラが軽食を摂る時間がなくなってしまうな」
「そうですね。あちらのお席が空いておりますよ」
泣くな。
込み上げてきそうなものを押さえ込みながら、私は精一杯微笑んで席を指すと淑女らしく礼をする。
「それでは、私はこの辺で失礼いたします。殿下と聖乙女にたくさんの祝福があらんことを」
私はゆっくりと背を向けて、2人から離れる。
私は笑顔の仮面をつけたまま、会場内に視線を流す。
大半の視線はゲームの攻略対象達に注がれていて、悪役令嬢に注目している視線はもうない。
スチル回収だって充分だし、今日の推し事は終了。
私はそっと気配を消して、すばやく会場を後にした。
その一言で私は正気に戻る。
会場の空気が先程とは全く変わっている事に驚きながら、目を瞬かせる私に。
「リティカ、今日のドレスも良く似合ってる」
リティカにはピンクと青がよく似合うとロア様が褒める。
「ロア様のお見立ですもの。当たり前ではないですか」
とドレスの礼を述べる。
「わぁ、リティカ様もロア殿下にドレスを貰ったんですね!」
お揃いだと嬉しそうな声を上げるライラちゃん。
「ふふ、そうだね」
そう言って私達に近づいたロア様は私からライラちゃんを引き剥がし、彼女の手を取る。
「でも、君とリティカとでは贈る意味合いが違うんだ」
私達にだけ聞こえるようにロア様は囁く。
「そんなわけで彼女をあまり独占しないでくれるかな? 妬いてしまいそうだ」
冗談めかしたセリフだけど、ロア様の濃紺の瞳に本気の色が混じっていて、私は思わず息を呑む。
同性である私に嫉妬?
もう、それほどまでにライラちゃんの事を?
王子ルートの進行が速い気がするけれど、2人は同じクラスで私の知らない時間を過ごしているわけで。
ゲームよりも密度が濃いのかもしれないと私は考える。
何より本物のヒロインは見た目は勿論性格も面白くて超可愛いし。
これで落ちないわけがないなと納得して内心で頷く。
だというのに私はロア様の心情にも気づかずに、ライラちゃんにスパルタ淑女レッスンを行い、毎日彼女の時間を独占していたなぁとここ最近の己の行動を反省する。
仕方なかったのと心の中でロア様にお詫びしつつ、そろそろ撤退するかと私が行動に移すより前に。
「あ、じゃあリティカ様とダンスして来たらいかがです? さっきステップ間違えてしまったし、お手本見せてください! 覚えます」
私ここでごはん食べてるのでお二人でどうぞ、なんて無邪気にライラちゃんが提案する。
ライラちゃん、そうじゃない。ロア様が独占したいのはライラちゃんなんだって。この天然さんめっ!!
どう返すべきか、と逡巡している私に。
「踊らない」
ロア様は間髪入れずにキッパリと言い切った。
「今日の舞踏会で、俺はリティカとだけは踊らない。絶対に」
淡々とした、冷たい口調での拒絶。
取りつく島もないほどに。
分かっている。婚約者である私は今日、ロア様とは踊れない。
公爵令嬢としても、絶対に2番目に踊るわけにはいかないのだ。
分かっている。
ロア様の言葉の意味も、ライラちゃんがダンスを踊る順番の意味を知らないだろうことも。
全部ちゃんと、分かっている。
なのに、彼の口から聞いたその言葉が棘のように刺さって胸が痛んだ。
「さて、ライラが軽食を摂る時間がなくなってしまうな」
「そうですね。あちらのお席が空いておりますよ」
泣くな。
込み上げてきそうなものを押さえ込みながら、私は精一杯微笑んで席を指すと淑女らしく礼をする。
「それでは、私はこの辺で失礼いたします。殿下と聖乙女にたくさんの祝福があらんことを」
私はゆっくりと背を向けて、2人から離れる。
私は笑顔の仮面をつけたまま、会場内に視線を流す。
大半の視線はゲームの攻略対象達に注がれていて、悪役令嬢に注目している視線はもうない。
スチル回収だって充分だし、今日の推し事は終了。
私はそっと気配を消して、すばやく会場を後にした。