追放予定(希望)の悪役令嬢に転生したので、悪役らしく物語を支配する。
「すっごい! いっぱいある」

 ライラちゃんは興味深々といった様子で私のコレクションをめくっていく。
 それは6年前から私が撮り溜めてきた、全部私の大事な思い出の写真。

「わぁーコレ会長ですよね! 小さい時からイケメンだ」

「そ、私の自慢のお兄様だもん。お兄様は優しい上にかっこいいんだから」

 この映像記録水晶(カメラ)もお兄様が作ったのよと私は我が事のように自慢する。

「それにしてもリティカ様撮るのお上手ですね」

「……改めて誰かに見られるなんて恥ずかしいわね」

 初めの頃の写真なんて、撮り方や構図なんて分からなくて、ただただシャッターを切っていただけだ。
 写真の上手い撮り方なんて、前世でだって学んだ事はないし、この世界には私に写真の撮り方を教えてくれる人なんていないし。
 素敵なスチルを回収するために、まさに試行錯誤の日々だった。
 ぶれているモノも見切れているモノも多いけれど、でも全部アルバムに挟んでとってある。

「えー誰この赤ちゃん抱いてるかっこいいヒト。めちゃくちゃ眉間に皺よってる。隣の人奥さんですか? すっごい幸せそう」

「この人は私の師匠。で、こっちは奥さんのエリィ様。2人には今でもすごくお世話になっていて、2人の娘のララとリズのことは妹のように大事に思ってる」

 一緒にアルバムをめくりながら私は写真に解説を加える。

「ふふ、セドくんすっごい生意気そうな顔してる」

「それはセドがうちに来た頃の写真。セド写真嫌いで撮るの大変だったのよ? もーすっごい生意気で。躾けるのに苦労しちゃったわ」

 警戒心強くてごはん全然食べないんだものと毎食あの手この手で攻防戦を繰り広げていた頃の事を思い出す。

「初めて家に来た頃は、本当にガリガリに痩せていて、喧嘩っぱやくて、すぐ怪我をしてくるから心配してたんだけど、今では誰もが振り返りイケメンに」

 暗殺者セドリック・アートはこの世界には存在しない。セドはどこに出しても恥ずかしくないうちの自慢の子だ。

「わぁ、殿下の写真多っ。ロア殿下は小さな時から美人さんなんですね。お隣の方は……もしかして王妃様?」

 婚約者ですもんね、とロア様の写真を目を輝かせて見るライラちゃん。
 ライラちゃんの口から聞かれた婚約者、という響きになぜか私の胸はチクリと痛む。
 ヒトのモノには興味がない、と私は口内でそんな呪文を転がして、痛みに気づかないフリをして笑う。
 こんなところでも王妃教育は役に立つのだから、真面目に修練を積んでおいて良かったと自分を褒めながら、

「ふふ、ロア様小さな時から可愛いでしょ。王妃であるメアリー様によく似てるの」

 私は言葉を続ける。
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