追放予定(希望)の悪役令嬢に転生したので、悪役らしく物語を支配する。
「メアリー様はとても素敵な王妃様なの。ライラが将来謁見する時もきっと良くしてくださるわ」
「私が王妃様にお会いする機会なんてありませんよ!」
「あら、そんなの分からないじゃない」
だって、ライラちゃんはヒロインでいずれロア様と結ばれるのだから。
そうなればメアリー様は彼女の義理の母だ。
「もし、困ったらメアリー様は絶対力を貸してくださるわ。王妃様は頑張る女の子の味方なのよ。いざとなったら私の名前を出してもいいわ」
トンとライラちゃんが身につけてくれている私があげた花飾りを指さして私は彼女に笑いかける。
「覚えておいて。生まれは変えられないかもしれない。だけど足掻きつづければ未来は変わる。努力して身につけたモノはなくならない。誰にも奪われず自分らしく、生きていけるように一つでも多くの武器を持ちなさい」
ライラちゃんはヒロインらしく波瀾万丈な人生を送るのだろう。
庶民が王家に嫁ぐ。
物語では美しく語られる身分違いの恋は美しいけれど、現実は厳しい。
それを跳ね除けるには並大抵の努力ではどうにもならない。
「でも大丈夫、可愛いは唯一普遍の正義なんだから」
だから王子ルートのハッピーエンドを望む私が、多少困難を祓っておいたとしても問題はないでしょう。
本来なら私が背負うはずだった重責を彼女に押し付けるのだから。
「リティカ……様?」
舞踏会の日の光景を思い出す。とてもお似合いの2人。
あの日以来2人で並ぶ姿を見かける日が増えた。勿論、取り巻きはいたりするし、側から見ても咎められることのない節度ある行動ではあるけれど。
多忙なロア様がライラちゃんのために時間を割いている。それと同時に私にロア様からお茶会の誘いがかからなくなった。
その事実を周囲がどう受け止めているか。確認するまでもなく明白だ。
「……私とロア様の婚約は、いずれ解消されるわ。私はロア様がこの国を共に支えていくパートナーとしてふさわしい相手を選ぶまでの風除けなの」
「え?」
驚いたように声を上げるライラちゃんに、内緒よと私は笑う。
「婚約者、と位置付けられているだけで、私達の間には恋愛感情は存在しない。今までも、これから先も」
私が悪役令嬢らしく振る舞えば、物語通りにエピソードは進む。
王子様の隣は悪役令嬢なんかではなく、ヒロインにこそ相応しい。
多分ロア様の気持ちはライラちゃんに傾いている。
あとはライラちゃんの気持ちが傾くのを待つだけだけど、ロア様はとても素敵な王子様だもの。惹かれ合うまできっと時間の問題だ。
だから、私は心のストッパーをひとつはずす事にする。
「おふたりは想いあっているのではないのですか」
「違うわ」
少なくとも、ロア様にとって私はそうではない。
私達の婚約は、陛下に望まれリティカのわがままで成立しただけ。
「だけどロア様は、私の大事な幼馴染なの」
占いをしたあの日、前世の記憶を見てしまった時から決めていた。
私はロア様の味方でいよう、と。
ロア様の魔障を完治することができるのも、毒に怯えない生活を保証できるのも神様に愛された聖女になるライラちゃんだけ。
その上ライラちゃんが王子ルートでロア様と結ばれてハッピーエンドを迎えれば、神様からの加護でこの国の安泰は確定だ。
私だけがいなくなるこの国で、私の推し達はいつまでも幸せに暮らす。
それが、私の望む結末。
「だから、これからもロア様の事よろしくね」
私は2人の恋物語の裏側でこっそりこの国の危機を回避する。
悪役の私が紡ぐのは歴史に消え、誰の記憶にも残らないストーリー。
悪役らしく、物語を支配してみせると、改めてそう決意した。
「私が王妃様にお会いする機会なんてありませんよ!」
「あら、そんなの分からないじゃない」
だって、ライラちゃんはヒロインでいずれロア様と結ばれるのだから。
そうなればメアリー様は彼女の義理の母だ。
「もし、困ったらメアリー様は絶対力を貸してくださるわ。王妃様は頑張る女の子の味方なのよ。いざとなったら私の名前を出してもいいわ」
トンとライラちゃんが身につけてくれている私があげた花飾りを指さして私は彼女に笑いかける。
「覚えておいて。生まれは変えられないかもしれない。だけど足掻きつづければ未来は変わる。努力して身につけたモノはなくならない。誰にも奪われず自分らしく、生きていけるように一つでも多くの武器を持ちなさい」
ライラちゃんはヒロインらしく波瀾万丈な人生を送るのだろう。
庶民が王家に嫁ぐ。
物語では美しく語られる身分違いの恋は美しいけれど、現実は厳しい。
それを跳ね除けるには並大抵の努力ではどうにもならない。
「でも大丈夫、可愛いは唯一普遍の正義なんだから」
だから王子ルートのハッピーエンドを望む私が、多少困難を祓っておいたとしても問題はないでしょう。
本来なら私が背負うはずだった重責を彼女に押し付けるのだから。
「リティカ……様?」
舞踏会の日の光景を思い出す。とてもお似合いの2人。
あの日以来2人で並ぶ姿を見かける日が増えた。勿論、取り巻きはいたりするし、側から見ても咎められることのない節度ある行動ではあるけれど。
多忙なロア様がライラちゃんのために時間を割いている。それと同時に私にロア様からお茶会の誘いがかからなくなった。
その事実を周囲がどう受け止めているか。確認するまでもなく明白だ。
「……私とロア様の婚約は、いずれ解消されるわ。私はロア様がこの国を共に支えていくパートナーとしてふさわしい相手を選ぶまでの風除けなの」
「え?」
驚いたように声を上げるライラちゃんに、内緒よと私は笑う。
「婚約者、と位置付けられているだけで、私達の間には恋愛感情は存在しない。今までも、これから先も」
私が悪役令嬢らしく振る舞えば、物語通りにエピソードは進む。
王子様の隣は悪役令嬢なんかではなく、ヒロインにこそ相応しい。
多分ロア様の気持ちはライラちゃんに傾いている。
あとはライラちゃんの気持ちが傾くのを待つだけだけど、ロア様はとても素敵な王子様だもの。惹かれ合うまできっと時間の問題だ。
だから、私は心のストッパーをひとつはずす事にする。
「おふたりは想いあっているのではないのですか」
「違うわ」
少なくとも、ロア様にとって私はそうではない。
私達の婚約は、陛下に望まれリティカのわがままで成立しただけ。
「だけどロア様は、私の大事な幼馴染なの」
占いをしたあの日、前世の記憶を見てしまった時から決めていた。
私はロア様の味方でいよう、と。
ロア様の魔障を完治することができるのも、毒に怯えない生活を保証できるのも神様に愛された聖女になるライラちゃんだけ。
その上ライラちゃんが王子ルートでロア様と結ばれてハッピーエンドを迎えれば、神様からの加護でこの国の安泰は確定だ。
私だけがいなくなるこの国で、私の推し達はいつまでも幸せに暮らす。
それが、私の望む結末。
「だから、これからもロア様の事よろしくね」
私は2人の恋物語の裏側でこっそりこの国の危機を回避する。
悪役の私が紡ぐのは歴史に消え、誰の記憶にも残らないストーリー。
悪役らしく、物語を支配してみせると、改めてそう決意した。