追放予定(希望)の悪役令嬢に転生したので、悪役らしく物語を支配する。
「と、いうわけで! マカロンの売り上げは上々。本拠地を置いているマリティでは勿論、珍しくて可愛いもの好き、社交界の花形シャーロット姉様のお気に入りとして話題になった後はすっかりクレティア王国の社交界でも定着しました」

 じゃんと綺麗にまとめた販売実績を私の前に提示したクロエは、得意げにそう述べる。
 数年前までこの世界になかったカラフルなマカロン。絶対流行ると私は手始めにコレを作らせた。
 前世でも可愛いマカロンは人気だったけど、効果は絶大。
 特にうちの国の社交界の花形と呼ばれる華やかな女性、シャーロット・シャデラン伯爵夫人がお茶会でプリントマカロンを使用してからは一気に社交界に広まりトレンド入り。あっという間に社交界で話題になり、アイリス商会の人気を後押しした。

「クロエの働きには感謝しているわ。おかげで私は表に出ることなく情報を把握できる」

 シャーロット嬢とクロエははとこにあたり、クロエを田舎の領地に追いやったと因縁をつけられている私は何かとシャーロット嬢に嫌われているのだけど、私は彼女が嫌いではない。
 シャーロット嬢は社交界の花形。クロエ経由で接触している彼女は社交界の情報をもたらしてくれるし、商品の話題も流したい噂も広めてくれるまさに重要人物。
 貴族令嬢達がこぞって夢中になっているアレコレが全て私の推したモノで、社交を全くしない嫌われモノの私が実は裏側から情報も含めて社交界を制圧しているなんて誰も気づくまい。

「さっすがリティカ様。アレもコレもぜーんぶヒット商品。次はナニやります?」

 クロエは最近流行りの小説を片手にニヤッと笑う。
 ちなみに内容は"追放モノ"
 婚約破棄されて奮闘する女の子が、イケメンに溺愛される系は自由恋愛を夢見る貴族令嬢達にあっという間に支持された。

「そうねぇ、次はタピオカミルクティー行ってみる?」

 当然この世界には存在せず、類似品にはなるけれど物珍しさから話題になるんじゃないかしらと私は前世の記憶を掘り起こす。

「え? それどんなモノです?」

 私はタピオカミルクティーの商品案をクロエに渡す。キラキラと目を輝かせた彼女は、絶対当たると早速試作するよう手配しようと次なるヒットにむけての構想を練り始めた。

「はぁ、本当どうしてこうも素敵アイデアが湧くんです?」

「詮索しない、が条件のはずよ?」

 アイデアのほとんどは前世の知識によるモノなので、若干の後ろめたさを感じつつ私はきっぱり線引きをする。

「わかってますよぅ」

 クロエは肩をすくめて、

「私がリティカ様の側にいるには、"詮索しない""漏らさない"でしょ?」

 私がクロエに求めた条件を復唱する。
 私が持っている知識、求める情報、起こそうとする行動、私とクロエの関係性その全てにおいて詮索せず、外部に漏らさず、私に尽くす事。
 とても一方的な要求をクロエは全て飲んで私の手足となって側にいる。
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