追放予定(希望)の悪役令嬢に転生したので、悪役らしく物語を支配する。
「悪いわね、クロエ。何も言えなくて」
あなたを信用していないわけじゃないの、と目を伏せる私の手を取って、
「別にいいです。私は自分がそうしたくてリティカ様に着いていくって決めたんだから」
ぎゅっと握って綺麗に微笑む。
「リティカ様には、本当に感謝しています。私や母を助けてくれてありがとう」
「……別に助けた覚えなんてないんだけど?」
私はクロエの澄んだ碧眼を見ながら肩をすくめる。
「母は侯爵家の重圧や私を王太子妃にしなきゃってプレッシャーから解放されて、領地で息をつけるようになって今はとても楽しそうに孤児院で教鞭をとっています」
「別に追いやった人間のその後に興味ないわ。私は余っている教師という使える資源を再利用しただけよ」
私は侯爵夫人を追いやった後、彼女の背景を調べた。
貧乏伯爵家から身を削るような努力で王室務めまで上り詰めた彼女は、侯爵家に嫁いだにも関わらず跡取りとなる男児を産めなかったことで精神的に相当追い詰められていたのだと知った。
だからといって私は私を害した人間に同情したりなどしない。
だから、彼女には今もその能力で以って罪を償ってもらっている。
「クロエがどう解釈しても自由だけど。私はあなたの母親を許す気はないの。だからこれはただの能力搾取よ」
平民と貴族の間に大きな格差のあるこの国で"教育"を施し、優秀な人材を確保することは急務だ。
平民向けの学校設立と就職支援による生活の安定。
それはメアリー様の悲願でもある。いつか私が王太子妃になって、国やロア様を支えるのだと信じて私に沢山の手ほどきをしてくれたメアリー様。
だけど、追放される予定の私はメアリー様の期待に応えられないから。
代わりに大好きでお世話になっているメアリー様のためにそれを叶えたかった。ただそれだけだ。
とはいえ言うのは簡単だが教育機関の設立は課題が多く、実現可能なレベルに落とし込みそれを推し進めるためには"実績"を伴ったモデルが必要で。
私の痕跡を残さずにそのデータを取りたいから他領であるヴァレンティ侯爵領でとっているに過ぎない。
「そう、だとしても。私達が救われた事に変わりはないから。私は勝手にリティカ様に感謝するの」
リティカ様のツンデレ〜なんて天真爛漫に笑う彼女は全くもって貴族令嬢らしくない。
でも、無表情でお人形のようだった出会ったころのクロエより今のクロエの方が私はずっと好きだ。
「そう、じゃあせいぜいこれからも国の発展のために尽くしなさいな」
優秀なクロエはこの国に必要だ。
いずれ私がいなくなる日が来たら、アイリス商会の商会長の座をクロエに譲ってもいいし、ヴァレンティ侯爵領での教育機関モデル事業の功績を手土産に王都に戻ればクロエはこの国で重宝される事だろう。
「リティカ様の御心のままに」
綺麗なカーテシーをする彼女を見ながら、私は私のいないこの国の未来に思いを馳せた。
あなたを信用していないわけじゃないの、と目を伏せる私の手を取って、
「別にいいです。私は自分がそうしたくてリティカ様に着いていくって決めたんだから」
ぎゅっと握って綺麗に微笑む。
「リティカ様には、本当に感謝しています。私や母を助けてくれてありがとう」
「……別に助けた覚えなんてないんだけど?」
私はクロエの澄んだ碧眼を見ながら肩をすくめる。
「母は侯爵家の重圧や私を王太子妃にしなきゃってプレッシャーから解放されて、領地で息をつけるようになって今はとても楽しそうに孤児院で教鞭をとっています」
「別に追いやった人間のその後に興味ないわ。私は余っている教師という使える資源を再利用しただけよ」
私は侯爵夫人を追いやった後、彼女の背景を調べた。
貧乏伯爵家から身を削るような努力で王室務めまで上り詰めた彼女は、侯爵家に嫁いだにも関わらず跡取りとなる男児を産めなかったことで精神的に相当追い詰められていたのだと知った。
だからといって私は私を害した人間に同情したりなどしない。
だから、彼女には今もその能力で以って罪を償ってもらっている。
「クロエがどう解釈しても自由だけど。私はあなたの母親を許す気はないの。だからこれはただの能力搾取よ」
平民と貴族の間に大きな格差のあるこの国で"教育"を施し、優秀な人材を確保することは急務だ。
平民向けの学校設立と就職支援による生活の安定。
それはメアリー様の悲願でもある。いつか私が王太子妃になって、国やロア様を支えるのだと信じて私に沢山の手ほどきをしてくれたメアリー様。
だけど、追放される予定の私はメアリー様の期待に応えられないから。
代わりに大好きでお世話になっているメアリー様のためにそれを叶えたかった。ただそれだけだ。
とはいえ言うのは簡単だが教育機関の設立は課題が多く、実現可能なレベルに落とし込みそれを推し進めるためには"実績"を伴ったモデルが必要で。
私の痕跡を残さずにそのデータを取りたいから他領であるヴァレンティ侯爵領でとっているに過ぎない。
「そう、だとしても。私達が救われた事に変わりはないから。私は勝手にリティカ様に感謝するの」
リティカ様のツンデレ〜なんて天真爛漫に笑う彼女は全くもって貴族令嬢らしくない。
でも、無表情でお人形のようだった出会ったころのクロエより今のクロエの方が私はずっと好きだ。
「そう、じゃあせいぜいこれからも国の発展のために尽くしなさいな」
優秀なクロエはこの国に必要だ。
いずれ私がいなくなる日が来たら、アイリス商会の商会長の座をクロエに譲ってもいいし、ヴァレンティ侯爵領での教育機関モデル事業の功績を手土産に王都に戻ればクロエはこの国で重宝される事だろう。
「リティカ様の御心のままに」
綺麗なカーテシーをする彼女を見ながら、私は私のいないこの国の未来に思いを馳せた。