追放予定(希望)の悪役令嬢に転生したので、悪役らしく物語を支配する。
61.悪役令嬢とガールズトーク。
「さて、お仕事の話はこれくらいにして本題。南部の動きについて教えて頂戴」
私は以前クロエが送って来た便りの内容を尋ねる。
クロエはトンっと地図を指し、
「リティカ様がお探しだった"幻惑石"。それは確かに隣国アルカラントの南部で掘り起こされ、そのうちのいくつかが消えています」
と私に報告する。
「……消えた?」
私は眉根を寄せ考え込む。
幻惑石。私はそれを前世でやったゲームの中で見たアイテム。
『ヒトの心は容易く惑わされる』
そう、大神官が独白していたシーンで彼の手にあった怪しく光る紫色の石。
王子ルートに入った今、バッドエンドを回避するために私が手に入れたかったアイテム。それが幻惑石だ。
「クレティア王国に持ち込まれた可能性もあるのですが、貿易録には全く出てこないんですよね」
正当な取引でなく裏ルートで我が国に持ち込まれた可能性もあるが、現在の陛下に変わってから不正の類はかなり厳しく取り締まっている。
検疫所の買収はほぼ不可能。
その石は一体どこに消えてしまったのか?
「……精霊の宿木」
大神官の手に握られた石の大きさを思い出し、私はぽつりとつぶやく。
神殿の儀式で使われる精霊の宿木は、精霊信仰が根付いているアルカラントの世界樹から作られていたはずだ。
「え?」
「神殿に持ち込まれる精霊の宿木。あれは神聖なモノだからという理由で開封検疫されない。その箱に忍ばせ、なんらかの方法で魔力が感知されないようにしていれば少なくとも外側から見ただけでは石の存在は分からないわ」
だとすれば、すでに幻惑石は大神官の手に渡っている可能性が高い。
一足遅かったか、と私は試験結果発表の日の出来事を思い出し舌打ちする。
「ヒトを操るだなんて眉唾物だと思っていたんですけど、その様子だと現状不利な戦況なのですか?」
クロエを深く巻き込みたくなくてふわりとした断片的な情報しか与えていないのに、本当に察しがいいんだから。
「……どうかしらね。正直不確定要素が多くて断定は難しいわね」
思い込みで動くのは危険だと師匠ルートを潰した時に充分反省している私は今度は慎重に情報を精査することにする。
「でも、現にルシファー様やサイラス様の様子がおかしいと思うのです」
そう言ってクロエは私に意見を述べる。
学園での糾弾劇はクロエの耳にも入っていたようで、私は彼女の情報網の広さに感心する。
「私の知ってる2人は無闇矢鱈と誰かを攻撃するタイプじゃなかったはずなんです。サイラス様はまぁちょっと真面目が過ぎるけど紳士だし、ルシファー様は脳筋だけど性格は大らかなタイプだし」
クロエの説明に生真面目紳士とわんこ系男子の単語が浮かぶ。
そういえばそんな設定だったわと本来の攻略対象の性格を思い出したところで。
「ん? クロエは2人のこと知ってるの?」
王子様の婚約者である私ですらほぼほぼ接触出来なかったのに? と私は首を傾げる。
「ああ、2人とも私の婚約者候補として幼少期に交流があったので。まぁ、王都を離れたせいでその話も立ち消えましたけど」
クロエはさらっと私の知らない情報をぶち込んでくる。
なんてこった。
私のせいで、可愛いクロエが大事な結婚相手を逃してしまうかもしれない。
今時点では神殿や大神官についてこれ以上分かりそうにないし、一旦こちらは置いておいて数少ない友人の恋愛方面の応援をせねば!
「ええっと、なんかごめん。確か2人ともまだ誰とも婚約してないはずだし、もしクロエにその気があるなら、縁組できるように便宜を図るけど?」
攻略対象本人とはほぼ接触はないが2人の父とはかなり親しい間柄。
政略結婚の一つや二つ容易くまとめられる。
そう思って食い気味に尋ねてみたのだけど、
「え? マジでいらないんですけど」
クロエに真顔で即レスされた。
私は以前クロエが送って来た便りの内容を尋ねる。
クロエはトンっと地図を指し、
「リティカ様がお探しだった"幻惑石"。それは確かに隣国アルカラントの南部で掘り起こされ、そのうちのいくつかが消えています」
と私に報告する。
「……消えた?」
私は眉根を寄せ考え込む。
幻惑石。私はそれを前世でやったゲームの中で見たアイテム。
『ヒトの心は容易く惑わされる』
そう、大神官が独白していたシーンで彼の手にあった怪しく光る紫色の石。
王子ルートに入った今、バッドエンドを回避するために私が手に入れたかったアイテム。それが幻惑石だ。
「クレティア王国に持ち込まれた可能性もあるのですが、貿易録には全く出てこないんですよね」
正当な取引でなく裏ルートで我が国に持ち込まれた可能性もあるが、現在の陛下に変わってから不正の類はかなり厳しく取り締まっている。
検疫所の買収はほぼ不可能。
その石は一体どこに消えてしまったのか?
「……精霊の宿木」
大神官の手に握られた石の大きさを思い出し、私はぽつりとつぶやく。
神殿の儀式で使われる精霊の宿木は、精霊信仰が根付いているアルカラントの世界樹から作られていたはずだ。
「え?」
「神殿に持ち込まれる精霊の宿木。あれは神聖なモノだからという理由で開封検疫されない。その箱に忍ばせ、なんらかの方法で魔力が感知されないようにしていれば少なくとも外側から見ただけでは石の存在は分からないわ」
だとすれば、すでに幻惑石は大神官の手に渡っている可能性が高い。
一足遅かったか、と私は試験結果発表の日の出来事を思い出し舌打ちする。
「ヒトを操るだなんて眉唾物だと思っていたんですけど、その様子だと現状不利な戦況なのですか?」
クロエを深く巻き込みたくなくてふわりとした断片的な情報しか与えていないのに、本当に察しがいいんだから。
「……どうかしらね。正直不確定要素が多くて断定は難しいわね」
思い込みで動くのは危険だと師匠ルートを潰した時に充分反省している私は今度は慎重に情報を精査することにする。
「でも、現にルシファー様やサイラス様の様子がおかしいと思うのです」
そう言ってクロエは私に意見を述べる。
学園での糾弾劇はクロエの耳にも入っていたようで、私は彼女の情報網の広さに感心する。
「私の知ってる2人は無闇矢鱈と誰かを攻撃するタイプじゃなかったはずなんです。サイラス様はまぁちょっと真面目が過ぎるけど紳士だし、ルシファー様は脳筋だけど性格は大らかなタイプだし」
クロエの説明に生真面目紳士とわんこ系男子の単語が浮かぶ。
そういえばそんな設定だったわと本来の攻略対象の性格を思い出したところで。
「ん? クロエは2人のこと知ってるの?」
王子様の婚約者である私ですらほぼほぼ接触出来なかったのに? と私は首を傾げる。
「ああ、2人とも私の婚約者候補として幼少期に交流があったので。まぁ、王都を離れたせいでその話も立ち消えましたけど」
クロエはさらっと私の知らない情報をぶち込んでくる。
なんてこった。
私のせいで、可愛いクロエが大事な結婚相手を逃してしまうかもしれない。
今時点では神殿や大神官についてこれ以上分かりそうにないし、一旦こちらは置いておいて数少ない友人の恋愛方面の応援をせねば!
「ええっと、なんかごめん。確か2人ともまだ誰とも婚約してないはずだし、もしクロエにその気があるなら、縁組できるように便宜を図るけど?」
攻略対象本人とはほぼ接触はないが2人の父とはかなり親しい間柄。
政略結婚の一つや二つ容易くまとめられる。
そう思って食い気味に尋ねてみたのだけど、
「え? マジでいらないんですけど」
クロエに真顔で即レスされた。