追放予定(希望)の悪役令嬢に転生したので、悪役らしく物語を支配する。
魔法省への立ち入りを許された私が魔法を学ぶために付けられた師匠は、トップクラスの宮廷魔術師イーシス・ハーディスだった。紹介された時は、息が止まるかと思った。
だって彼は、この乙女ゲームの世界の攻略対象なのだから。とは言え課金必須のイーシスルートの内容を私は知らない。
どうして宮廷魔術師であるイーシスが数年後魔法学校で先生をする事になるのかも、彼の身にこれから先一体どんな事が降りかかるのかも。
「わからないことだらけね。でもまぁこれはきっとチャンスだわ」
悪役令嬢たるもの裏で暗躍してこそ価値があると私は早期に攻略対象に接触できたこの機会を生かすべく本日も魔法省に通っていた。
魔法を学びたいと言うのはもちろんだけれど、うまくいけば魔法学校に師匠が来ること自体を阻止できるかもしれないしね。
それにもう一つ、私には気になる事がある。
「よし、今度はちゃんとできたかしら?」
手順通りに薬草を煮詰め、そっと魔力を込めればそれはきれいな水色の液体になった。多分成功!
「さすが、私! やればできる子」
自画自賛をしたところで、
「リティカ。俺は早引きする。続きがやりたければ、明日にしろ」
と師匠から声がかかる。
「早引き……ですか?」
首をかしげる私に、師匠は先ほどとは違い優しい笑顔を浮かべてふわりと笑う。
「ああ、今日は結婚記念日だからな」
あーなるほど。
道理で師匠が珍しく浮かれているわけだ。多分、師匠にこんな顔をさせられるのは、師匠の奥様だけなのだろう。
他人にも自分にも厳しい師匠が唯一愛情を捧げる最愛の人。
あーもう設定が尊すぎる。内心でキュンキュンしつつ、
「師匠! メルフィー通りの季節のタルト。すっごいオススメです。紅茶は絶対アルメイト。ふわっとお口の中でお花が咲くみたいに素敵な香りが広がるんです」
私は、女子ならではの有益な情報を師匠に提供する。
「お前ほんとにそういうのだけは詳しいな」
「えーじゃあもう教えてあげませんよー。せっかく最近流行のデートスポットも教えてあげようと思ったのに」
むぅと頬を膨らませる私を見ておかしそうに笑った師匠は、
「それはぜひ知りたい。リティカのオススメは確かにエリィが喜ぶし」
エリィと幸せそうに奥様の名を口にする。そんな師匠に私はおすすめスポットを書いて手渡す。
だって彼は、この乙女ゲームの世界の攻略対象なのだから。とは言え課金必須のイーシスルートの内容を私は知らない。
どうして宮廷魔術師であるイーシスが数年後魔法学校で先生をする事になるのかも、彼の身にこれから先一体どんな事が降りかかるのかも。
「わからないことだらけね。でもまぁこれはきっとチャンスだわ」
悪役令嬢たるもの裏で暗躍してこそ価値があると私は早期に攻略対象に接触できたこの機会を生かすべく本日も魔法省に通っていた。
魔法を学びたいと言うのはもちろんだけれど、うまくいけば魔法学校に師匠が来ること自体を阻止できるかもしれないしね。
それにもう一つ、私には気になる事がある。
「よし、今度はちゃんとできたかしら?」
手順通りに薬草を煮詰め、そっと魔力を込めればそれはきれいな水色の液体になった。多分成功!
「さすが、私! やればできる子」
自画自賛をしたところで、
「リティカ。俺は早引きする。続きがやりたければ、明日にしろ」
と師匠から声がかかる。
「早引き……ですか?」
首をかしげる私に、師匠は先ほどとは違い優しい笑顔を浮かべてふわりと笑う。
「ああ、今日は結婚記念日だからな」
あーなるほど。
道理で師匠が珍しく浮かれているわけだ。多分、師匠にこんな顔をさせられるのは、師匠の奥様だけなのだろう。
他人にも自分にも厳しい師匠が唯一愛情を捧げる最愛の人。
あーもう設定が尊すぎる。内心でキュンキュンしつつ、
「師匠! メルフィー通りの季節のタルト。すっごいオススメです。紅茶は絶対アルメイト。ふわっとお口の中でお花が咲くみたいに素敵な香りが広がるんです」
私は、女子ならではの有益な情報を師匠に提供する。
「お前ほんとにそういうのだけは詳しいな」
「えーじゃあもう教えてあげませんよー。せっかく最近流行のデートスポットも教えてあげようと思ったのに」
むぅと頬を膨らませる私を見ておかしそうに笑った師匠は、
「それはぜひ知りたい。リティカのオススメは確かにエリィが喜ぶし」
エリィと幸せそうに奥様の名を口にする。そんな師匠に私はおすすめスポットを書いて手渡す。