追放予定(希望)の悪役令嬢に転生したので、悪役らしく物語を支配する。
62.悪役令嬢の乙女心。
サイラスやルシファーの調査をクロエに任せる事にした私は、別ルートから"幻惑石"と大神官を探ることにした。
秘書官、という立場をもらったおかげで沢山の情報が手に入った。
今まで知らなかったこと、見えてこなかった神殿と王家の関係。
そして。
「絶対外れない、なんてこと本当にあるのかしら?」
神からのお告げとされる"神託"。
神託を下すのは神殿に祀られている加護石に宿る神に仕える精霊。
そしてそれを伝えるのは大神官だ。
神託は未来を変える事のできる手段、とされている。
だけど、回避策を取らない限り100%的中するというのなら、それは神の言葉というよりももはや未来視ではないだろうか?
「そもそも神託って、もっと抽象的でぼんやりしたものだと思うのよね」
んーっと、私は過去の神託と現代で告げられた神託の内容を並べる。
過去に遡れば遡った分だけ文言が曖昧。
精霊様のお告げを読み解く能力の差、と言ってしまえばそうなのかもしれないけれど。
「……お母様に降った神託。メアリー様に起きた悲劇」
全部、具体的過ぎる。
それにどれもこれもこの国に影響を与える人間にばかり降りかかる不幸だ。
古い文献に載っている神託は国の吉凶に関わる内容なのに。
「私の知っているエタラブの神託は魔物によってもたらされる"災厄"」
以前の内容に近い神託。
もうすぐ、それが神殿から発表されそしてそれを光魔法で浄化させたライラちゃんが聖女として崇められるようになるはずなんだけど。
「……この違和感は……一体何?」
点と点を繋ぐパーツが足らない。
「また、派手に散らかしたな」
思考が絡まった私の頭上にそんな声が落ちてきた。
「……師匠?」
私は資料を読み漁る手を止めて、視線を上げる。
「随分熱心に調べてたな」
ノックしても気づかないし、と呆れたようにそう言って。
「適度に休憩入れとけ。しばらく秘書官も続けてもらわなきゃ困るしな」
「そっちの仕事はあらかた片付けましたけど?」
師匠こそこんなところで油を売っていていいのですか? とため息をついた私に、
「せっかくお前が興味ありそうな文献持ってきてやったのに」
いらないなら戻すぞと山の様に資料を机に載せる。
「何です? コレ」
「アリシア様の研究資料。今じゃ厳重保管されていて、閲覧資格がなければ手に取ることすらできない」
確かに私が魔法省に出入りするようになって6年経つけれど、お母様の研究資料は見た事がない。
お母様が偉大な魔術師であったことは知っているけれど、その研究過程が一般公開されていない理由も含めて私は知らない事が多すぎると改めて思う。
「多分、公爵が一番お前に見せたかったのはコレだろう」
秘書官、という身分をお父様が私にくれたのはこれのため?
私は驚いたように目を瞬かせ、そっと手を伸ばす。
封筒に書かれていた文字と同じく、少し癖のある筆跡は間違いなくお母様のもの。
「でも、お兄様を差し置いて私が見てもいいのでしょうか?」
「セザールは直接アリシア様から教わっているからな」
「って、いっても2〜3歳ぐらいの話ですよね?」
私にはそれぐらいの頃の記憶などないに等しいのだけど。
「それを覚えているのがセザールなんだよな」
流石攻略対象。チートが過ぎる。
お父様のいう片方だけって、お兄様の事を指していたのかしら?
私にはお母様との思い出がないから?
手を伸ばしていいのか迷う私に、
「そう気負うな。読みたくなったら見ればいい」
と師匠は素っ気なくも優しい言葉をかけてくれる。
本当に丸くなってとちょっと感動していたところに、
「そして早々に長官を呼び戻してほしい。長官の仕事量エグい。俺は研究以外に時間割きたくない」
これ以上ないくらい真顔でそう言った。
秘書官、という立場をもらったおかげで沢山の情報が手に入った。
今まで知らなかったこと、見えてこなかった神殿と王家の関係。
そして。
「絶対外れない、なんてこと本当にあるのかしら?」
神からのお告げとされる"神託"。
神託を下すのは神殿に祀られている加護石に宿る神に仕える精霊。
そしてそれを伝えるのは大神官だ。
神託は未来を変える事のできる手段、とされている。
だけど、回避策を取らない限り100%的中するというのなら、それは神の言葉というよりももはや未来視ではないだろうか?
「そもそも神託って、もっと抽象的でぼんやりしたものだと思うのよね」
んーっと、私は過去の神託と現代で告げられた神託の内容を並べる。
過去に遡れば遡った分だけ文言が曖昧。
精霊様のお告げを読み解く能力の差、と言ってしまえばそうなのかもしれないけれど。
「……お母様に降った神託。メアリー様に起きた悲劇」
全部、具体的過ぎる。
それにどれもこれもこの国に影響を与える人間にばかり降りかかる不幸だ。
古い文献に載っている神託は国の吉凶に関わる内容なのに。
「私の知っているエタラブの神託は魔物によってもたらされる"災厄"」
以前の内容に近い神託。
もうすぐ、それが神殿から発表されそしてそれを光魔法で浄化させたライラちゃんが聖女として崇められるようになるはずなんだけど。
「……この違和感は……一体何?」
点と点を繋ぐパーツが足らない。
「また、派手に散らかしたな」
思考が絡まった私の頭上にそんな声が落ちてきた。
「……師匠?」
私は資料を読み漁る手を止めて、視線を上げる。
「随分熱心に調べてたな」
ノックしても気づかないし、と呆れたようにそう言って。
「適度に休憩入れとけ。しばらく秘書官も続けてもらわなきゃ困るしな」
「そっちの仕事はあらかた片付けましたけど?」
師匠こそこんなところで油を売っていていいのですか? とため息をついた私に、
「せっかくお前が興味ありそうな文献持ってきてやったのに」
いらないなら戻すぞと山の様に資料を机に載せる。
「何です? コレ」
「アリシア様の研究資料。今じゃ厳重保管されていて、閲覧資格がなければ手に取ることすらできない」
確かに私が魔法省に出入りするようになって6年経つけれど、お母様の研究資料は見た事がない。
お母様が偉大な魔術師であったことは知っているけれど、その研究過程が一般公開されていない理由も含めて私は知らない事が多すぎると改めて思う。
「多分、公爵が一番お前に見せたかったのはコレだろう」
秘書官、という身分をお父様が私にくれたのはこれのため?
私は驚いたように目を瞬かせ、そっと手を伸ばす。
封筒に書かれていた文字と同じく、少し癖のある筆跡は間違いなくお母様のもの。
「でも、お兄様を差し置いて私が見てもいいのでしょうか?」
「セザールは直接アリシア様から教わっているからな」
「って、いっても2〜3歳ぐらいの話ですよね?」
私にはそれぐらいの頃の記憶などないに等しいのだけど。
「それを覚えているのがセザールなんだよな」
流石攻略対象。チートが過ぎる。
お父様のいう片方だけって、お兄様の事を指していたのかしら?
私にはお母様との思い出がないから?
手を伸ばしていいのか迷う私に、
「そう気負うな。読みたくなったら見ればいい」
と師匠は素っ気なくも優しい言葉をかけてくれる。
本当に丸くなってとちょっと感動していたところに、
「そして早々に長官を呼び戻してほしい。長官の仕事量エグい。俺は研究以外に時間割きたくない」
これ以上ないくらい真顔でそう言った。