追放予定(希望)の悪役令嬢に転生したので、悪役らしく物語を支配する。
64.悪役令嬢とイベント報酬。
これでも一応最低限の武術の心得はある。まぁ基本的には対人用なんだけど、何とかなるかななんて思っていた数分前までの自分に教えたい。
チートスキルは攻略対象およびヒロインにしかないんだ、って。
「はぁ、何コレ全然攻略できる気がしないんだけど!」
そもそもなんで運営様は乙女ゲームにバトル要素ぶっ込んだのよ! と私は盛大に世界観にケチをつける。
『ぐるるるる』
「全っ然可愛くないんだけど!?」
私は目の前にいる魔物、おそらく竜種だろうそれに向かって手持ちの魔石を使って攻撃魔法を連打する。
ポーションなど何かを生み出す生成術が何故か生まれつき使えない私にできるのは、複雑な術式を事前に書き込んでおく魔法陣での魔法展開か、魔力を秘めた魔石を爆ぜさせる単純攻撃。
いくつか持ち歩いていたそれはもうすぐ底をつきそうなのに、固い鱗に覆われたその魔物にはほとんどダメージを与えられていない。
「!?」
魔力切れのインターバルを見計らったかのように振り上げられた魔物の尻尾で吹き飛ばされ壁に激突する。
ぶつかる瞬間にかけた身体強化が間に合いわずかにダメージが軽減できたが、息をするのも苦しくて口内に血の味が広がった。
「……ああ、もう本当。なんて日かしら?」
唯一の救いはコレに食べられそうになっていた子どもを逃がせた事くらいで。
気配遮断のせいで多分私の存在に気づいてないだろうから、誰かの助けなんて期待できないし。
私、こんなところで一人で死ぬのかしら?
『ガルルルル』
ゆっくりと近づいてきた魔物の紅の瞳と目が合う。
どうせなら魔物にも気配遮断効けばよかったのに、なんてどうしようもないことを考えながら。
「……あなた、一体どこから来たの?」
ダメ元で魔物に問いかける。
王都の街中など、他所よりももっと厳重に魔物避けが施してあると言うのに。
たった一匹、どうやって街中に紛れ込ませたのか。
『ガァーァー』
スイと違って人語を理解しないらしい魔物から解を得ることはできず、私は振り下ろされる鋭い爪をぼんやりと見る。
「ああ、本当に。一体、なんて日かしら?」
死、というものが急に身近に感じた瞬間、脳裏に浮かんだのはロア様の顔で。
走馬灯の様に駆け巡るのは、ロア様との思い出ばかり。
私のために淹れてくれたお茶が美味しかったとか。
いつもさりげなく私の事をフォローしてくれて嬉しかったとか。
カメラ越しに視線が絡む時、その藍色の瞳を見ながら本当はとてもドキドキしていたのとか。
ずっと、ずっと、見ないようにしていた自分の気持ち。
恋をしたくない、だなんてそう言っている時点できっともう恋に落ちていた。
そして、私は気づいたその日に失恋したのね。
伝える機会もないままに。
『ぐわぁぁーー』
「さい、あく」
ゲームオーバーね。
リセットボタンの存在しないこの世界で、私はせめてヒントだけでも残そうとまだ未確認であった魔物の正体を映像記録水晶に残す。
きっとこの写真を見つけてくれた誰かが対応を練ってくれることを願って。
そう思った時だった。
魔物が盛大に吹き飛び、建物を破壊して吹っ飛んだ。
チートスキルは攻略対象およびヒロインにしかないんだ、って。
「はぁ、何コレ全然攻略できる気がしないんだけど!」
そもそもなんで運営様は乙女ゲームにバトル要素ぶっ込んだのよ! と私は盛大に世界観にケチをつける。
『ぐるるるる』
「全っ然可愛くないんだけど!?」
私は目の前にいる魔物、おそらく竜種だろうそれに向かって手持ちの魔石を使って攻撃魔法を連打する。
ポーションなど何かを生み出す生成術が何故か生まれつき使えない私にできるのは、複雑な術式を事前に書き込んでおく魔法陣での魔法展開か、魔力を秘めた魔石を爆ぜさせる単純攻撃。
いくつか持ち歩いていたそれはもうすぐ底をつきそうなのに、固い鱗に覆われたその魔物にはほとんどダメージを与えられていない。
「!?」
魔力切れのインターバルを見計らったかのように振り上げられた魔物の尻尾で吹き飛ばされ壁に激突する。
ぶつかる瞬間にかけた身体強化が間に合いわずかにダメージが軽減できたが、息をするのも苦しくて口内に血の味が広がった。
「……ああ、もう本当。なんて日かしら?」
唯一の救いはコレに食べられそうになっていた子どもを逃がせた事くらいで。
気配遮断のせいで多分私の存在に気づいてないだろうから、誰かの助けなんて期待できないし。
私、こんなところで一人で死ぬのかしら?
『ガルルルル』
ゆっくりと近づいてきた魔物の紅の瞳と目が合う。
どうせなら魔物にも気配遮断効けばよかったのに、なんてどうしようもないことを考えながら。
「……あなた、一体どこから来たの?」
ダメ元で魔物に問いかける。
王都の街中など、他所よりももっと厳重に魔物避けが施してあると言うのに。
たった一匹、どうやって街中に紛れ込ませたのか。
『ガァーァー』
スイと違って人語を理解しないらしい魔物から解を得ることはできず、私は振り下ろされる鋭い爪をぼんやりと見る。
「ああ、本当に。一体、なんて日かしら?」
死、というものが急に身近に感じた瞬間、脳裏に浮かんだのはロア様の顔で。
走馬灯の様に駆け巡るのは、ロア様との思い出ばかり。
私のために淹れてくれたお茶が美味しかったとか。
いつもさりげなく私の事をフォローしてくれて嬉しかったとか。
カメラ越しに視線が絡む時、その藍色の瞳を見ながら本当はとてもドキドキしていたのとか。
ずっと、ずっと、見ないようにしていた自分の気持ち。
恋をしたくない、だなんてそう言っている時点できっともう恋に落ちていた。
そして、私は気づいたその日に失恋したのね。
伝える機会もないままに。
『ぐわぁぁーー』
「さい、あく」
ゲームオーバーね。
リセットボタンの存在しないこの世界で、私はせめてヒントだけでも残そうとまだ未確認であった魔物の正体を映像記録水晶に残す。
きっとこの写真を見つけてくれた誰かが対応を練ってくれることを願って。
そう思った時だった。
魔物が盛大に吹き飛び、建物を破壊して吹っ飛んだ。