追放予定(希望)の悪役令嬢に転生したので、悪役らしく物語を支配する。
そこから先は操られているフリをして悪の手先として、大神官の指示通り悪事を働いてみせた。
と、言う訳で。
私は現在、王子ルート真っ最中のヒロインライラちゃんをはじめ、ロア様やお兄様と言った攻略対象達、そして本命の大神官を前に追い詰められている。
「リティカ!」
私を壁際に追い詰めたロア様が、私の名を呼ぶ。
心配そうな色をした濃紺の瞳と視線が絡み、私は自分が正気である事を伝えたくていつも通りの笑顔を見せる。
「やっと見つけてくれたのですね。待ちくたびれてしまいましたわ」
さすがロア様。僅かなヒントからちゃんとこうして私を追いかけてくれた。
ほっとすると同時に、やっぱりこのポジションってスチル回収特等席だなと改めて思う。
錚々たる面々が一斉にコチラを見つめている。しかも衣装がみんなエタラブで敵を追い詰めるときの正装! やばい、かっこいいしか出てこないんだが!?
映像記録水晶で今すぐ連写したい!
そんな私の煩悩は、
「リティカ様、それ以上罪を重ねないでっ」
ライラちゃんの悲痛な叫びで吹っ飛んだ。
ふわりと揺れる青緑色の髪に翡翠の目を持つ神に愛された聖女様。
エタラブで見た通りの姿。
何コレ。可愛いが過ぎるとニヤニヤしそうな顔面を王妃教育の一環で鍛えた表情筋を総動員して耐える。
ちなみにライラちゃんは私が潜入捜査中である事を知らない。
本気で心配しているのだろう。翡翠の瞳からは今にも大粒の涙が溢れ落ちそうで。
こんな時まで悪役令嬢の事を気にかけるだなんて本当にいい子だなと改めて思う。
もし、彼女が脳内お花畑ヒロインだったなら、私はロア様を私から掻っ攫っていく彼女を貶めて嫌な悪役令嬢になっていたかもしれないけれど、このヒロイン相手では無理だわ。
こんな風に健気に向かって来られたら、愛でずにはいられないもの。
「私達はあなたを止めに来たのです! リティカ嬢、何故このような事を」
なんて感傷的に物思いに耽っていたら大神官がやや芝居がかったセリフを述べてきた。
今はまだ断罪イベント真っ最中だった、と思い出した私は、
「……何故?」
目を瞬かせ、首を傾げると、
「気に入らない、からですわ」
子どもらしい残酷で無邪気な笑みを浮かべ、ナイフを弄んでみせた。
「ああ、本当。何もかも気に入らない。だって私はこの国唯一の公爵令嬢よ? 私はもっと丁重に扱われるべきだと思わない?」
悪役令嬢らしく、傲慢な微笑みを浮かべた私は、
「さぁ、仕上げと行きましょうか?」
この舞台のラストを盛り上げるために、自らの手をそのナイフで傷つけ、魔法陣に血を垂らす。
「"この国に混沌を!"」
勝利を確信している大神官を前にそれっぽいセリフを述べて、私は魔法陣を展開させる。
だけどこれは彼が作った"凶悪な魔物を召喚"させるための魔法陣ではない。
口角を上げた微笑んだ私は肩に乗せたスイから改良型の映像記録水晶を取り出し、あちら側に見せる。
「なぁーんてね」
駆け引きはこれでおしまい。
準備は全部整った。
「私を三流格下の悪役扱いした事を後悔なさい、大神官! この物語を支配する悪役令嬢は私よ!!」
そんなセリフを吐くと、
「"#拡散希望"ってね!」
ライラちゃんのテレポーテーションの魔術式を解析し、師匠に作ってもらった魔法陣を起動する。
国中に大神官と神殿が今まで行ってきた不正の証拠を一斉にばら撒き、大神官と2人で決着をつけるために。
と、言う訳で。
私は現在、王子ルート真っ最中のヒロインライラちゃんをはじめ、ロア様やお兄様と言った攻略対象達、そして本命の大神官を前に追い詰められている。
「リティカ!」
私を壁際に追い詰めたロア様が、私の名を呼ぶ。
心配そうな色をした濃紺の瞳と視線が絡み、私は自分が正気である事を伝えたくていつも通りの笑顔を見せる。
「やっと見つけてくれたのですね。待ちくたびれてしまいましたわ」
さすがロア様。僅かなヒントからちゃんとこうして私を追いかけてくれた。
ほっとすると同時に、やっぱりこのポジションってスチル回収特等席だなと改めて思う。
錚々たる面々が一斉にコチラを見つめている。しかも衣装がみんなエタラブで敵を追い詰めるときの正装! やばい、かっこいいしか出てこないんだが!?
映像記録水晶で今すぐ連写したい!
そんな私の煩悩は、
「リティカ様、それ以上罪を重ねないでっ」
ライラちゃんの悲痛な叫びで吹っ飛んだ。
ふわりと揺れる青緑色の髪に翡翠の目を持つ神に愛された聖女様。
エタラブで見た通りの姿。
何コレ。可愛いが過ぎるとニヤニヤしそうな顔面を王妃教育の一環で鍛えた表情筋を総動員して耐える。
ちなみにライラちゃんは私が潜入捜査中である事を知らない。
本気で心配しているのだろう。翡翠の瞳からは今にも大粒の涙が溢れ落ちそうで。
こんな時まで悪役令嬢の事を気にかけるだなんて本当にいい子だなと改めて思う。
もし、彼女が脳内お花畑ヒロインだったなら、私はロア様を私から掻っ攫っていく彼女を貶めて嫌な悪役令嬢になっていたかもしれないけれど、このヒロイン相手では無理だわ。
こんな風に健気に向かって来られたら、愛でずにはいられないもの。
「私達はあなたを止めに来たのです! リティカ嬢、何故このような事を」
なんて感傷的に物思いに耽っていたら大神官がやや芝居がかったセリフを述べてきた。
今はまだ断罪イベント真っ最中だった、と思い出した私は、
「……何故?」
目を瞬かせ、首を傾げると、
「気に入らない、からですわ」
子どもらしい残酷で無邪気な笑みを浮かべ、ナイフを弄んでみせた。
「ああ、本当。何もかも気に入らない。だって私はこの国唯一の公爵令嬢よ? 私はもっと丁重に扱われるべきだと思わない?」
悪役令嬢らしく、傲慢な微笑みを浮かべた私は、
「さぁ、仕上げと行きましょうか?」
この舞台のラストを盛り上げるために、自らの手をそのナイフで傷つけ、魔法陣に血を垂らす。
「"この国に混沌を!"」
勝利を確信している大神官を前にそれっぽいセリフを述べて、私は魔法陣を展開させる。
だけどこれは彼が作った"凶悪な魔物を召喚"させるための魔法陣ではない。
口角を上げた微笑んだ私は肩に乗せたスイから改良型の映像記録水晶を取り出し、あちら側に見せる。
「なぁーんてね」
駆け引きはこれでおしまい。
準備は全部整った。
「私を三流格下の悪役扱いした事を後悔なさい、大神官! この物語を支配する悪役令嬢は私よ!!」
そんなセリフを吐くと、
「"#拡散希望"ってね!」
ライラちゃんのテレポーテーションの魔術式を解析し、師匠に作ってもらった魔法陣を起動する。
国中に大神官と神殿が今まで行ってきた不正の証拠を一斉にばら撒き、大神官と2人で決着をつけるために。