追放予定(希望)の悪役令嬢に転生したので、悪役らしく物語を支配する。
76.悪役令嬢と王子様。
「リティカ!!」
駆け寄ったロア様が私を抱き留め、すでに虫の息だった大神官を昏倒させた。
きっと先程のロア様の純度の高い魔力に触れた事に加えて、呪いを無効化したことで負荷がかかり過ぎたのだろう。
外部干渉の魔法が解けた。
私の中で制御されていたはずの魔力が一気に解放される。
嫌な汗が背を伝い、激しい痛みと頭の中をぐるぐる掻き回されているかのような感覚。
「……っ」
自分が自分でなくなってしまいそうな恐怖。
ああ、制御が効かず魔力に飲み込まれるとはこんなにも怖いモノなのか、と私はぼんやり考える。
「リティカ、落ち着いて」
ロア様が何かを言っているけれど、私の耳は彼の声を拾わず、ただ苦しい胸を押さえることしかできない。
「マズいな、場所を変える」
そう言ったロア様に抱え上げられ、次の瞬間にはどこか別の場所にいたけれど、頭が上手く働かず、情報処理が全くできない。
「リティカ、大丈夫。大丈夫だから! ゆっくり息を」
ロア様が私を落ち着けるように背をさすってくださるけれど、
「……っ……ぁ……ふ……」
呼吸の仕方が、分からない。
息ができないことが私の恐怖心をさらに煽り、私はポロポロと涙を溢す。
「……リティー」
私の背をさする事をやめたロア様は優しい声で私の名前を呼び、私の頬に手を当ててふわりと笑って見せる。
あ、私の大好きな、優しくて可愛い王子様の顔だ。
「大丈夫、俺に任せて」
そう言った濃紺の瞳視線が絡んだ瞬間、私の唇とロア様のそれが重なった。
「……んっ……はぁ」
何度か角度を変えながら、ロア様と幾度も唇が重なる。
「そう、上手」
少し離れる度にロア様は優しくそう囁く。
だんだんと身体が息つぎの仕方を思い出し、胸をかき乱すような苦しさが消えていく。
ゆっくりとロア様の唇が離れ、吐息を感じるほど近い距離で覗き込むように私の瞳を見つめる。
「……はぁ、はぁ」
まだ肩で息をする私を抱きしめて、
「もう、大丈夫」
トントンと私の背中を優しく叩く。
「……ふ……わぁ、ぅう、ぁああ」
「怖かったね。もう、大丈夫だよ。リティカ」
ようやくロア様の言葉を耳が拾うようになり、本当にもう大丈夫なのだと理解した私は、縋りつくようにロア様に抱きついて、その胸に顔を埋める。
ロア様は私の王子様ではないのだから甘えてはいけない、と思うのに。
「わた……こわ……うぅ……ふぇ」
「うん、大丈夫。もう、大丈夫」
ロア様がここにいてくれる事に安心して、悪役令嬢を演じられず子どもみたいにわんわん泣く私が落ち着くまで、ロア様はずっと私の背を優しく撫でてくれていた。
駆け寄ったロア様が私を抱き留め、すでに虫の息だった大神官を昏倒させた。
きっと先程のロア様の純度の高い魔力に触れた事に加えて、呪いを無効化したことで負荷がかかり過ぎたのだろう。
外部干渉の魔法が解けた。
私の中で制御されていたはずの魔力が一気に解放される。
嫌な汗が背を伝い、激しい痛みと頭の中をぐるぐる掻き回されているかのような感覚。
「……っ」
自分が自分でなくなってしまいそうな恐怖。
ああ、制御が効かず魔力に飲み込まれるとはこんなにも怖いモノなのか、と私はぼんやり考える。
「リティカ、落ち着いて」
ロア様が何かを言っているけれど、私の耳は彼の声を拾わず、ただ苦しい胸を押さえることしかできない。
「マズいな、場所を変える」
そう言ったロア様に抱え上げられ、次の瞬間にはどこか別の場所にいたけれど、頭が上手く働かず、情報処理が全くできない。
「リティカ、大丈夫。大丈夫だから! ゆっくり息を」
ロア様が私を落ち着けるように背をさすってくださるけれど、
「……っ……ぁ……ふ……」
呼吸の仕方が、分からない。
息ができないことが私の恐怖心をさらに煽り、私はポロポロと涙を溢す。
「……リティー」
私の背をさする事をやめたロア様は優しい声で私の名前を呼び、私の頬に手を当ててふわりと笑って見せる。
あ、私の大好きな、優しくて可愛い王子様の顔だ。
「大丈夫、俺に任せて」
そう言った濃紺の瞳視線が絡んだ瞬間、私の唇とロア様のそれが重なった。
「……んっ……はぁ」
何度か角度を変えながら、ロア様と幾度も唇が重なる。
「そう、上手」
少し離れる度にロア様は優しくそう囁く。
だんだんと身体が息つぎの仕方を思い出し、胸をかき乱すような苦しさが消えていく。
ゆっくりとロア様の唇が離れ、吐息を感じるほど近い距離で覗き込むように私の瞳を見つめる。
「……はぁ、はぁ」
まだ肩で息をする私を抱きしめて、
「もう、大丈夫」
トントンと私の背中を優しく叩く。
「……ふ……わぁ、ぅう、ぁああ」
「怖かったね。もう、大丈夫だよ。リティカ」
ようやくロア様の言葉を耳が拾うようになり、本当にもう大丈夫なのだと理解した私は、縋りつくようにロア様に抱きついて、その胸に顔を埋める。
ロア様は私の王子様ではないのだから甘えてはいけない、と思うのに。
「わた……こわ……うぅ……ふぇ」
「うん、大丈夫。もう、大丈夫」
ロア様がここにいてくれる事に安心して、悪役令嬢を演じられず子どもみたいにわんわん泣く私が落ち着くまで、ロア様はずっと私の背を優しく撫でてくれていた。