追放予定(希望)の悪役令嬢に転生したので、悪役らしく物語を支配する。
「……………ふわぁぁぁ、私、ほんっとーに
なんって取り返しのつかない事を」
攻略対象の初めてが人助けなんて可哀想過ぎる。
「やり直し! せめてなんとかライラちゃんと上書きを」
「待った。だから何でそこでライラの名前が出てくるの」
私を撫でていたロア様の手がぴたっと止まり、やや低い声でそう言った。
いや、だってロア様の想い人なのだろうしと思ったらまたぐしゃりと胸が潰れそうな痛みが走る。
「リティー」
「すみませんでした。私の失態のせいで、ロア様を事故に巻き込んで、ロア様のファーストキスがぁぁあ」
私はすでに床に引っ付いている頭をさらに低くして、何度目か分からない謝罪を口にする。
想い人がいる攻略対象の唇、しかもファーストキスを奪うという暴挙。本来ならエンディング後発生のイベントのはずなのに。
悪役令嬢の働く悪事だとしてもやっていいことと悪いことがあるわと私は自分で自分を殴りたくなる。
完全なる巻き込み事故に申し訳なさすぎて顔を上げるなんて絶対無理!!
「何でリティカが俺も初めてだったっていう当たり前の事実にそんなにショックを受けてるのかが俺にはイマイチ理解できないんだけど」
ロア様は再び私の頭をゆっくり優しい手つきで撫でて、
「リティカが自分の理想通りの初めてじゃなかったからショックを受けてるなら分かるけどね」
苦笑しながらそんな事を口にする。
「理想?」
ロア様の言葉に思い当たることがなく聞き返した私に。
「リティカは満点の星空の下で流星群見ながらプロポーズされてファーストキス交わすのが夢だったのにね。ごめん、叶えてあげられなくて」
実現はできるけど現実にはしなさそうなシチュエーションを語り出す。
「はっ? へ、ちょ、はぁぁぁあーー? な、ん!? はい? な、なんですかソレは」
ロア様の口から出てきたセリフを脳が受付けず私の語彙力は消失する。
何、その小っ恥ずかしい乙女チックな夢はっ!! とびっくりしすぎて顔を上げた私に、
「あ、やっとこっち見た」
と、のほほーんとロア様が笑う。
「ほら、小さい頃よく言ってただろう」
4つか5つくらいの時に、なんて言われるが正直微塵も覚えていない。
「いやぁーあの頃婚約者でもないのによくここまで決定事項として語れるなぁって感心しながら聞いてた」
「えっ! えっ!? 嘘、ウソですよね?」
お願いだから嘘だと言って、と縋るような目でロア様を見るも。
「俺が嘘ついてると思う?」
疑問符が疑問符で帰ってきた。キラキラとした美しい笑顔と共に。
ふわぁーーーっ。
まったく、覚えてないけども。
何してるの、過去の自分!! もうこれ完全に黒歴史!!
「うぅ、そんな子どもの戯言、今すぐに忘れてくださいませ。もしくは地中深く私事埋めてください」
私は両手で顔を覆って、ロア様にそう懇願する。
「……忘れないし、埋めないよ。リティカとの時間は全部、全部覚えてる」
そっとロア様の指が私の手に触れ、ゆっくりと私の顔を覆っている手は引き剥がされて脆くもガードは崩れ去る。
「耳まで真っ赤。本当に俺の婚約者殿は可愛いな」
私に笑いかけるその顔は、愛するヒロインに向ける攻略対象のスチルなんかよりずっと強力な破壊力を伴って、私の胸を貫いたのだった。
なんって取り返しのつかない事を」
攻略対象の初めてが人助けなんて可哀想過ぎる。
「やり直し! せめてなんとかライラちゃんと上書きを」
「待った。だから何でそこでライラの名前が出てくるの」
私を撫でていたロア様の手がぴたっと止まり、やや低い声でそう言った。
いや、だってロア様の想い人なのだろうしと思ったらまたぐしゃりと胸が潰れそうな痛みが走る。
「リティー」
「すみませんでした。私の失態のせいで、ロア様を事故に巻き込んで、ロア様のファーストキスがぁぁあ」
私はすでに床に引っ付いている頭をさらに低くして、何度目か分からない謝罪を口にする。
想い人がいる攻略対象の唇、しかもファーストキスを奪うという暴挙。本来ならエンディング後発生のイベントのはずなのに。
悪役令嬢の働く悪事だとしてもやっていいことと悪いことがあるわと私は自分で自分を殴りたくなる。
完全なる巻き込み事故に申し訳なさすぎて顔を上げるなんて絶対無理!!
「何でリティカが俺も初めてだったっていう当たり前の事実にそんなにショックを受けてるのかが俺にはイマイチ理解できないんだけど」
ロア様は再び私の頭をゆっくり優しい手つきで撫でて、
「リティカが自分の理想通りの初めてじゃなかったからショックを受けてるなら分かるけどね」
苦笑しながらそんな事を口にする。
「理想?」
ロア様の言葉に思い当たることがなく聞き返した私に。
「リティカは満点の星空の下で流星群見ながらプロポーズされてファーストキス交わすのが夢だったのにね。ごめん、叶えてあげられなくて」
実現はできるけど現実にはしなさそうなシチュエーションを語り出す。
「はっ? へ、ちょ、はぁぁぁあーー? な、ん!? はい? な、なんですかソレは」
ロア様の口から出てきたセリフを脳が受付けず私の語彙力は消失する。
何、その小っ恥ずかしい乙女チックな夢はっ!! とびっくりしすぎて顔を上げた私に、
「あ、やっとこっち見た」
と、のほほーんとロア様が笑う。
「ほら、小さい頃よく言ってただろう」
4つか5つくらいの時に、なんて言われるが正直微塵も覚えていない。
「いやぁーあの頃婚約者でもないのによくここまで決定事項として語れるなぁって感心しながら聞いてた」
「えっ! えっ!? 嘘、ウソですよね?」
お願いだから嘘だと言って、と縋るような目でロア様を見るも。
「俺が嘘ついてると思う?」
疑問符が疑問符で帰ってきた。キラキラとした美しい笑顔と共に。
ふわぁーーーっ。
まったく、覚えてないけども。
何してるの、過去の自分!! もうこれ完全に黒歴史!!
「うぅ、そんな子どもの戯言、今すぐに忘れてくださいませ。もしくは地中深く私事埋めてください」
私は両手で顔を覆って、ロア様にそう懇願する。
「……忘れないし、埋めないよ。リティカとの時間は全部、全部覚えてる」
そっとロア様の指が私の手に触れ、ゆっくりと私の顔を覆っている手は引き剥がされて脆くもガードは崩れ去る。
「耳まで真っ赤。本当に俺の婚約者殿は可愛いな」
私に笑いかけるその顔は、愛するヒロインに向ける攻略対象のスチルなんかよりずっと強力な破壊力を伴って、私の胸を貫いたのだった。