追放予定(希望)の悪役令嬢に転生したので、悪役らしく物語を支配する。
そっと靴を外して、靴下を脱ぐと赤黒く内出血し腫れ上がっている自分の足と対面する。
わぁーお、これは痛いわけだ。
「全く、お前はどうしてこう無茶をする」
確かに強引にねじ込んだのは私ですが、私の足をここまで容赦なく痛めつけたのはお兄様ですけどね。
「申し訳……ございません」
言いたいことがたくさんあったけれど、しゅんと目を伏せ私はおとなしく謝罪の言葉を口にする。
「いや、まぁ……俺も、悪かったな」
私が素直に謝ったので少し驚いたような顔して、バツが悪そうに視線を外したお兄様はぽつりとつぶやくように私に謝ってくれた。
「とりあえず、手当てをしよう。作り置きのポーションがあったはずだから」
そう言って机に向かい、手当の準備をしてくれるお兄様。
その背中を見ながら、私はメアリー様の言葉を思い出す。
「ふふっ」
「なんだよ」
突然笑い出した私に、お兄様は訝しげな視線を寄越す。
「いいえ〜。ただ、お兄様は優しいなって思っただけです」
メアリー様の言った通り、私は自分が思っているよりもずっとお兄様に嫌われてなどいないのかもしれない。
「はぁ?」
呆れたような声音で、お父様と同じ紫暗の瞳が私をとらえる。
手際よく私の足を手当てしていくお兄様を見ながら、
「お兄様、ありがとうございます」
と私は礼を述べた。
「まぁ、別に大した事は……って何をやっている」
口元を押さえて悶えているとお兄様からまた呆れたような声が漏れる。
「いえ、なんでも」
精神年齢の上がった私は気づいてしまった。イケメンのツンデレ尊い、と。
さすが攻略対象。我が兄ながら恐ろしい。
「お兄様! カメラ!! カメラ作りましょう、今すぐにっ」
私は目を輝かせてお兄様にそう提案する。
「は? カメラ……って何だ?」
「新しい魔道具の名前です! 私とお兄様が今から作る」
私が悪役令嬢としてスチル回収を行うための必須アイテム! それがカメラだ。
「あ、できたらムービー取れる仕様で。もういっそデジカメを作りましょう!」
ワクワクとカメラについて語る。
実はこの乙女ゲーム、本編開始時点で魔道具としてカメラが存在する。
ちなみにカメラは有料アイテムで課金しなければ購入できない。
カメラがあれば、基本スチル以外にも特別なイベント発生時のスチルを保存できるのだ。
とは言え本編が始まるより前、現時点ではこの世に存在しない。
ないのなら作ってしまえばいい。
転生した私はカメラというものがどういうものなのか知っているし、アイディアと研究資金さえあれば作れるはずだ。
だって、この世界でのカメラの開発者は師匠とお兄様なのだから。
「肖像画を一瞬で、か。アイデアとしては面白いな。実験記録の作成にも役立ちそうだし」
「ムービーが撮れれば何かあったときの証拠として提出できますわ。不貞の証拠とか」
「用途方法が不穏なんだが、一考の余地はあるな」
お兄様はふむと考え込むと、
「まぁ問題は、俺1人では魔術式を組むのが難しいのと研究資金の確保だな」
問題点を上げる。
「その点は心配いりませんわ。私たちには、お父様と最強の師匠がついているではありませんか!」
公爵家の財をもってすれば、課金し放題。私にベタ甘のお父様なら、喜んでお金を出してくれるだろう。リティカのドレスや宝石に使い込むより、よっぽど有意義な投資先だ。
「父親を財布って呼ぶなよ。師範はどうやって巻き込む気だ?」
「そこも大丈夫かと。私少々、師匠の取り扱いには自信がございますので」
師匠の行動原理は9割奥様だ。師匠には、私と近い匂いを感じるし、推しスチル回収の話にきっと食いつく。
「それともう一つ。私に魔術方程式を覚えよとおっしゃっていましたね。ではまず、基本の火属性の項目から」
私は魔法省に出入りを始めてからの3ヶ月の成果をお兄様に披露する。方程式はただ暗記するだけだからそれほど難しくない。正直王妃教育に比べれば、楽勝だ。
「以上です」
「リティカ、お前」
驚いたようなお兄様の顔を見ながら、
「言ったではありませんか、私だって本気ですと」
私はそうってドヤる。
私にはお兄様のようなチート能力はないですけれど、悪役令嬢にだって努力はできるんですよ?
「カメラが実現したら私の功績にはなりませんか?」
活用方法と販路開拓も考えてみたんですと、私は前世の知識を駆使して作成したレポートを提出する。
「本気、なんだな」
「ええ、全力で!」
私が目指すのは、最高の悪役令嬢ですから。
それにせっかく本編では見られない幼少期の王子様や攻略対象たちが見られると言うのに、限定スチルを回収しないなんてもったいない!
「そんなわけで、お兄様。私と協力プレイしませんか?」
答えは聞くまでもない。だってお兄様の目が魔術師らしく、ワクワクと好奇心に満ちているのだから。
わぁーお、これは痛いわけだ。
「全く、お前はどうしてこう無茶をする」
確かに強引にねじ込んだのは私ですが、私の足をここまで容赦なく痛めつけたのはお兄様ですけどね。
「申し訳……ございません」
言いたいことがたくさんあったけれど、しゅんと目を伏せ私はおとなしく謝罪の言葉を口にする。
「いや、まぁ……俺も、悪かったな」
私が素直に謝ったので少し驚いたような顔して、バツが悪そうに視線を外したお兄様はぽつりとつぶやくように私に謝ってくれた。
「とりあえず、手当てをしよう。作り置きのポーションがあったはずだから」
そう言って机に向かい、手当の準備をしてくれるお兄様。
その背中を見ながら、私はメアリー様の言葉を思い出す。
「ふふっ」
「なんだよ」
突然笑い出した私に、お兄様は訝しげな視線を寄越す。
「いいえ〜。ただ、お兄様は優しいなって思っただけです」
メアリー様の言った通り、私は自分が思っているよりもずっとお兄様に嫌われてなどいないのかもしれない。
「はぁ?」
呆れたような声音で、お父様と同じ紫暗の瞳が私をとらえる。
手際よく私の足を手当てしていくお兄様を見ながら、
「お兄様、ありがとうございます」
と私は礼を述べた。
「まぁ、別に大した事は……って何をやっている」
口元を押さえて悶えているとお兄様からまた呆れたような声が漏れる。
「いえ、なんでも」
精神年齢の上がった私は気づいてしまった。イケメンのツンデレ尊い、と。
さすが攻略対象。我が兄ながら恐ろしい。
「お兄様! カメラ!! カメラ作りましょう、今すぐにっ」
私は目を輝かせてお兄様にそう提案する。
「は? カメラ……って何だ?」
「新しい魔道具の名前です! 私とお兄様が今から作る」
私が悪役令嬢としてスチル回収を行うための必須アイテム! それがカメラだ。
「あ、できたらムービー取れる仕様で。もういっそデジカメを作りましょう!」
ワクワクとカメラについて語る。
実はこの乙女ゲーム、本編開始時点で魔道具としてカメラが存在する。
ちなみにカメラは有料アイテムで課金しなければ購入できない。
カメラがあれば、基本スチル以外にも特別なイベント発生時のスチルを保存できるのだ。
とは言え本編が始まるより前、現時点ではこの世に存在しない。
ないのなら作ってしまえばいい。
転生した私はカメラというものがどういうものなのか知っているし、アイディアと研究資金さえあれば作れるはずだ。
だって、この世界でのカメラの開発者は師匠とお兄様なのだから。
「肖像画を一瞬で、か。アイデアとしては面白いな。実験記録の作成にも役立ちそうだし」
「ムービーが撮れれば何かあったときの証拠として提出できますわ。不貞の証拠とか」
「用途方法が不穏なんだが、一考の余地はあるな」
お兄様はふむと考え込むと、
「まぁ問題は、俺1人では魔術式を組むのが難しいのと研究資金の確保だな」
問題点を上げる。
「その点は心配いりませんわ。私たちには、お父様と最強の師匠がついているではありませんか!」
公爵家の財をもってすれば、課金し放題。私にベタ甘のお父様なら、喜んでお金を出してくれるだろう。リティカのドレスや宝石に使い込むより、よっぽど有意義な投資先だ。
「父親を財布って呼ぶなよ。師範はどうやって巻き込む気だ?」
「そこも大丈夫かと。私少々、師匠の取り扱いには自信がございますので」
師匠の行動原理は9割奥様だ。師匠には、私と近い匂いを感じるし、推しスチル回収の話にきっと食いつく。
「それともう一つ。私に魔術方程式を覚えよとおっしゃっていましたね。ではまず、基本の火属性の項目から」
私は魔法省に出入りを始めてからの3ヶ月の成果をお兄様に披露する。方程式はただ暗記するだけだからそれほど難しくない。正直王妃教育に比べれば、楽勝だ。
「以上です」
「リティカ、お前」
驚いたようなお兄様の顔を見ながら、
「言ったではありませんか、私だって本気ですと」
私はそうってドヤる。
私にはお兄様のようなチート能力はないですけれど、悪役令嬢にだって努力はできるんですよ?
「カメラが実現したら私の功績にはなりませんか?」
活用方法と販路開拓も考えてみたんですと、私は前世の知識を駆使して作成したレポートを提出する。
「本気、なんだな」
「ええ、全力で!」
私が目指すのは、最高の悪役令嬢ですから。
それにせっかく本編では見られない幼少期の王子様や攻略対象たちが見られると言うのに、限定スチルを回収しないなんてもったいない!
「そんなわけで、お兄様。私と協力プレイしませんか?」
答えは聞くまでもない。だってお兄様の目が魔術師らしく、ワクワクと好奇心に満ちているのだから。