追放予定(希望)の悪役令嬢に転生したので、悪役らしく物語を支配する。
取り込みが完了したスイは、きゅーっと満足気に一声あげると、大人しく私の肩に乗る。
はじめに比べると色んなモノを取り込んだスイは大きくなったけれど、子どもの私の両手に乗るくらい小さいのでまぁ邪魔にはならない。
「わぁ、可愛い。私も手に乗せてみてもいいですか?」
「どうぞ。噛みついたりしないので、そっと触ってあげてください」
ゼリー状のスイの身体は触れると冷たいのだけれど、不思議とスイに触れても濡れる事はなく、ゼリー状の物体が残ることもベタつく事もない。
私は手を出してスイを自分の手に移し、ワクワクという表情を浮かべるエリィ様の手にそっと乗せる。
その時だった。私の手がエリィ様の手に触れた瞬間、聞き覚えのあるBGMと共に私の脳内に見た事のないシーンが流れ込む。
『エリィ……何で……こんな事にっ』
棺の中に沢山の花と共に横たわるお腹の大きなエリィ様。
『離れたりしなければよかった。俺が、そばにいさえすれば……』
愛する人を失って深い深い後悔と共に涙を流す師匠の姿。
そして、師匠は宮廷魔術師をやめ魔法省を去る。
課金ストーリーは見た事がないのだけれど、コレは師匠ルートの回想シーンだと直感する。
だけど、どうして?
私には、課金ストーリーの知識はないはずなのに。
「カ……リティカ!!」
師匠の声で私の意識は現実に戻る。
「あれ? 師匠?」
「お前、立ったまま寝るなんて器用過ぎだろ」
ぼんやりとした意識のまま私はその場に座り込む。
「リティー様、大丈夫ですか?」
血の気が引いているだろう私の事を心配そうに覗き込むエリィ様。
私は先程見た白昼夢を反芻する。
「うぇ……けほっ……気持ち、悪っ」
口元を押さえて吐きそうな私の背をさするエリィ様は、
「イーシス、早くお医者様!! 急いで!!」
師匠にそう指示を出す。
「大丈夫、大丈夫ですよ。ゆっくり深呼吸して、リティカ様。そうです、ゆっくり、ゆっくり」
まだ生きてここにいるエリィ様の声に安心しながら、私の耳にはヒロインのセリフがこだまする。
『お辛かったですね、先生。私、先生の支えになりたいです』
やめて。そんな一言で片付けないで。
その人に触らないで。その人には大事なヒトがいるんだから。
私は初めてヒロインに対して嫌悪感と運営に対して怒りを覚えた。
これが、課金のシナリオ?
だとしたら私に言えるのは一言。
『ふざけるな』だ。
私は手放す意識の中で、悪態を吐く。
これがシナリオなのだとしたら、私は運営様にだって逆らってやる。
だって私はこの世界の悪役令嬢なのだから。
はじめに比べると色んなモノを取り込んだスイは大きくなったけれど、子どもの私の両手に乗るくらい小さいのでまぁ邪魔にはならない。
「わぁ、可愛い。私も手に乗せてみてもいいですか?」
「どうぞ。噛みついたりしないので、そっと触ってあげてください」
ゼリー状のスイの身体は触れると冷たいのだけれど、不思議とスイに触れても濡れる事はなく、ゼリー状の物体が残ることもベタつく事もない。
私は手を出してスイを自分の手に移し、ワクワクという表情を浮かべるエリィ様の手にそっと乗せる。
その時だった。私の手がエリィ様の手に触れた瞬間、聞き覚えのあるBGMと共に私の脳内に見た事のないシーンが流れ込む。
『エリィ……何で……こんな事にっ』
棺の中に沢山の花と共に横たわるお腹の大きなエリィ様。
『離れたりしなければよかった。俺が、そばにいさえすれば……』
愛する人を失って深い深い後悔と共に涙を流す師匠の姿。
そして、師匠は宮廷魔術師をやめ魔法省を去る。
課金ストーリーは見た事がないのだけれど、コレは師匠ルートの回想シーンだと直感する。
だけど、どうして?
私には、課金ストーリーの知識はないはずなのに。
「カ……リティカ!!」
師匠の声で私の意識は現実に戻る。
「あれ? 師匠?」
「お前、立ったまま寝るなんて器用過ぎだろ」
ぼんやりとした意識のまま私はその場に座り込む。
「リティー様、大丈夫ですか?」
血の気が引いているだろう私の事を心配そうに覗き込むエリィ様。
私は先程見た白昼夢を反芻する。
「うぇ……けほっ……気持ち、悪っ」
口元を押さえて吐きそうな私の背をさするエリィ様は、
「イーシス、早くお医者様!! 急いで!!」
師匠にそう指示を出す。
「大丈夫、大丈夫ですよ。ゆっくり深呼吸して、リティカ様。そうです、ゆっくり、ゆっくり」
まだ生きてここにいるエリィ様の声に安心しながら、私の耳にはヒロインのセリフがこだまする。
『お辛かったですね、先生。私、先生の支えになりたいです』
やめて。そんな一言で片付けないで。
その人に触らないで。その人には大事なヒトがいるんだから。
私は初めてヒロインに対して嫌悪感と運営に対して怒りを覚えた。
これが、課金のシナリオ?
だとしたら私に言えるのは一言。
『ふざけるな』だ。
私は手放す意識の中で、悪態を吐く。
これがシナリオなのだとしたら、私は運営様にだって逆らってやる。
だって私はこの世界の悪役令嬢なのだから。