追放予定(希望)の悪役令嬢に転生したので、悪役らしく物語を支配する。
「パパ! 私、料理を習いたいの」
気にしたら負けだと言い聞かせつつ、自分のことを愛称で呼ぶのはさすがに痛すぎるので、これ以上お父様をダメにする前にさっさと矯正する。
「料理? なんだってそんなものを」
「私、この間のお誕生日にお手製のアップルパイをいただいたの。イーシス先生の奥様から」
家に持って帰って食べたアップルパイは冷めていたけど、とても美味しくて。
ひと口食べて、これをもう二度と口にする機会がないかもしれないと言う未来を想像して私は泣いてしまった。
「パパも知っている通り、エリィ様は魔力適性がありませんわ。すべて自分だけの力で、あんなにおいしいものが作れるって言うことにとても感動したの」
前世では当たり前だったそれは、魔法が当たり前にあふれている今世ではなかなかに貴重だ。
「私、エリィ様に料理を教えていただきたいわ。そして上手にできるようになったら一番に私の作ったアップルパイをパパに食べて欲しいの」
とってもおいしかったから、自分の手で作ったものをパパに食べて欲しくてと、とっておきの笑顔で付け足せば、感動したような表情を浮かべる、紫暗の瞳と目が合う。
「そうかぁ。パパのために」
「エリィ様は今ご妊娠中だから無理のない範囲でお願いするつもり。だから時間がかかっちゃうかもしれないけど」
「リティカのお手製のアップルパイか。そうだな、私からもイーシスに頼んでおこう」
楽しみだと言って、お父様はあっさり了承する。
お給金はこれくらいで、と提示すれば、それよりもさらに上乗せした額を記入して、お父様はあっさり書類を作ってしまった。
条件も悪くないし、何より上司直々の頼みなら、さすがの師匠も断れまいよ。
あとは、エリィ様と過ごしつつ、お姉様のように慕うエリィ様と離れたくないと駄々をこねて領地に帰らせないようにする。
もちろん出産に向けて、公爵家で最高の医師も助産師も乳母も用意するつもりだ。何だったら、産前産後ずっと公爵家にいてもらっても構わない。
まぁ、師匠をどこにも行かせないつもりだからきっと必要ないだろうけど。
「それともう一つ、許可をいただきたいことがあって」
私が提示した書類を見て驚いたように目を見開き、お父様は書類と私の顔を交互に見る。
「こういう企画やってみたくて。だめ?」
全部自分でやりたいの。コテンと小首をかしげて可愛らしいポーズをとればお父様は脊髄反射のような速さで了承した。
「ありがとう。パパ!!」
大好きと私は椅子から立ち上がり、パパのほうに駆け出してぎゅっと抱きつく。
「リティカのお願いで叶わないものなんて何もないんだよ」
まんざらでもなさそうな声で、抱きしめ返すお父様。
我が父ながら、本当にちょろい。まぁお父様が盲目的にちょろいのは、リティカに対してだけだけど。
普段優秀なだけに、この欠点は痛すぎるけど私的には好都合なので良しとする。
「ふふ、すっごく楽しみだわ」
こうして、私のおねだりは無事終了した。
気にしたら負けだと言い聞かせつつ、自分のことを愛称で呼ぶのはさすがに痛すぎるので、これ以上お父様をダメにする前にさっさと矯正する。
「料理? なんだってそんなものを」
「私、この間のお誕生日にお手製のアップルパイをいただいたの。イーシス先生の奥様から」
家に持って帰って食べたアップルパイは冷めていたけど、とても美味しくて。
ひと口食べて、これをもう二度と口にする機会がないかもしれないと言う未来を想像して私は泣いてしまった。
「パパも知っている通り、エリィ様は魔力適性がありませんわ。すべて自分だけの力で、あんなにおいしいものが作れるって言うことにとても感動したの」
前世では当たり前だったそれは、魔法が当たり前にあふれている今世ではなかなかに貴重だ。
「私、エリィ様に料理を教えていただきたいわ。そして上手にできるようになったら一番に私の作ったアップルパイをパパに食べて欲しいの」
とってもおいしかったから、自分の手で作ったものをパパに食べて欲しくてと、とっておきの笑顔で付け足せば、感動したような表情を浮かべる、紫暗の瞳と目が合う。
「そうかぁ。パパのために」
「エリィ様は今ご妊娠中だから無理のない範囲でお願いするつもり。だから時間がかかっちゃうかもしれないけど」
「リティカのお手製のアップルパイか。そうだな、私からもイーシスに頼んでおこう」
楽しみだと言って、お父様はあっさり了承する。
お給金はこれくらいで、と提示すれば、それよりもさらに上乗せした額を記入して、お父様はあっさり書類を作ってしまった。
条件も悪くないし、何より上司直々の頼みなら、さすがの師匠も断れまいよ。
あとは、エリィ様と過ごしつつ、お姉様のように慕うエリィ様と離れたくないと駄々をこねて領地に帰らせないようにする。
もちろん出産に向けて、公爵家で最高の医師も助産師も乳母も用意するつもりだ。何だったら、産前産後ずっと公爵家にいてもらっても構わない。
まぁ、師匠をどこにも行かせないつもりだからきっと必要ないだろうけど。
「それともう一つ、許可をいただきたいことがあって」
私が提示した書類を見て驚いたように目を見開き、お父様は書類と私の顔を交互に見る。
「こういう企画やってみたくて。だめ?」
全部自分でやりたいの。コテンと小首をかしげて可愛らしいポーズをとればお父様は脊髄反射のような速さで了承した。
「ありがとう。パパ!!」
大好きと私は椅子から立ち上がり、パパのほうに駆け出してぎゅっと抱きつく。
「リティカのお願いで叶わないものなんて何もないんだよ」
まんざらでもなさそうな声で、抱きしめ返すお父様。
我が父ながら、本当にちょろい。まぁお父様が盲目的にちょろいのは、リティカに対してだけだけど。
普段優秀なだけに、この欠点は痛すぎるけど私的には好都合なので良しとする。
「ふふ、すっごく楽しみだわ」
こうして、私のおねだりは無事終了した。