追放予定(希望)の悪役令嬢に転生したので、悪役らしく物語を支配する。

18.悪役令嬢のネタバラシ。

 外に出てからしばらく沈黙したまま歩いていた私は、立ち止まって息を整える。

「どうしたの、リティカ?」

 まだ隣にいるロア様の空気がささくれだっていて、こうして対峙しているだけでピリピリと肌を刺すような痛みを感じる。
 ロア様が全然知らない人みたいで怖い、とすら思う。
 本音を言えば今すぐ逃げ出したい。でも、カッコいい悪役令嬢は、怖いなんて理由で逃げたりしないはず。

「ロア様先程は失礼いたしました。いかようにもご処分ください」

 私はゆっくり息を吐き出してからロア様にそう声をかけ、頭を下げた。

「処分だなんて、そんなこと……。それよりも震えて……ごめん、助けに来たのに結局俺がリティカを怖がらせてしまって」

 しゅんと視線を下げるロア様はいつもみたいに優しい声をしていて、私は少しホッとする。

「大丈夫、ですよ。助けに来てくださってありがとうございます」

 落ち込んでいるロア様に私は手を伸ばして軽く頭を撫でてみる。
 私は今までも含めて多分ロア様にだいぶ失礼な事をしてきているのだけれど、彼から不敬だと咎められたことはない。
 ロア様はメアリー様同様寛大だ。だからきっと話せば分かってくれるはず。

「でも私のやらなきゃいけない事を取っちゃダメです。あれくらい、返り討ちにできます!」

 ずっと計画練ってこの日のために我慢してました! と私は意気込んで話す。

「それに私は自分で自由にできるお金が欲しいので。ロア様が介入しちゃったら侯爵家潰れちゃう。私はそんな事望んでません」

「お金?」

 困惑気味に首を傾げるロア様の仕草やきょとん顔が可愛くて、私は思わずクスリと笑う。

「ええ、慰謝料をたっぷりふんだくってやるのです! それに弱みを握って生かしておいた方が長く使えると思いませんか?」

 素直に応じるならば、本当に法廷で騒ぎ立てるつもりはない。
 今後の事を思えば切れるカードは多い方がいいのだから。

「……君は、あの状況でそんな恐ろしい事を考えていたのか?」

「そうですよ。私、悪い子なので。やられっぱなしは性に合いませんわ」

 だって、私は清く正しい悪役令嬢だもの。最高の悪役令嬢は、おとなしくやられたりしないのです。
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