追放予定(希望)の悪役令嬢に転生したので、悪役らしく物語を支配する。
「リティカに用があるんだと。だから連れて来てやった」
私の視線を受けて師匠は簡単に状況を説明する。
ああ、なるほど。
だから私服なのですね、と私は納得する。それにしても、と私はお兄様の本日の衣装をマジマジと見る。
全身黒で統一し、秋物のコートを羽織りブーツを履いているだけなのに、凛とした佇まいから気品が溢れていて目を引く。
さすが攻略対象。足長っ。スラリと伸びた脚線美の破壊力がヤバい。私のお兄様かっこよ過ぎじゃないでしょうか!?
「……なんだよ」
しまった。私とした事がまじまじと無遠慮に見過ぎましたわ。
だって、お兄様お家では相変わらずほとんど話しかけてくださらないし、映像記録水晶が完成してしまった今、お兄様との接点ってなかなか持てないのですもの。
眼福〜って欲望のまま美少年ウォッチングをしたって許されると思う。
ものすごく仲が良いわけではないけれど、私これでもお兄様の妹ですし。
「本日は休暇をお取りと伺っておりましたが、私に何のご用ですの? お兄様」
コホンとわざとらしく咳をして私はお兄様に笑顔を向ける。
お屋敷ではなく、わざわざ外でしなくてはならないお話。
私には心当たりがないので、お兄様の出方を伺うしかないのだけれど。
「リティカ……その」
口を開いたお兄様は、珍しく言い淀む。私は首を傾げて、続く言葉をじっと待っていたのだけれど、全然言葉が出てこない。
「お兄様?」
促しても沈黙のまま、お兄様の紫暗の瞳は躊躇いの色を浮かべる。
お兄様の性格からして私に急ぎの案件ならさっさと言って済ませるだろうし……本当に一体どうしてしまったのかしら?
お兄様がここに来た理由が全くわからなくて、私は首をひねったあと焼きりんごの存在を思い出し、ポンと手を叩く。
「そうだ! お兄様、一緒に食べませんか? 今からお茶をするところなのです」
このままではせっかくの熱々焼きりんごも冷めてしまうし、アイスが溶けてしまう。
急ぎでないなら、話を聞くのは食べた後でもいいでしょう。
そんな結論に至った私は、お兄様をお茶に誘う。
「……いい、のか?」
驚いたように目を見開いて私にそう尋ねるお兄様に、きょとんと私は首を傾げる。
「……? 焼きりんごはお嫌いですか?」
いや、まぁ確かにお屋敷で一緒に過ごすことが少なく、セザールルート未プレイの私はお兄様の好みを把握していないけれど。
この美味しそうな匂いに抗える人間なんているだろうか? 否、いない!!
「……嫌い、じゃない。ただ、リティカから茶に誘われる日が来るとは、思わなかっただけだ」
ふいっと照れたように視線を逸らしたお兄様。
あぁ、うん。つまり好きってことですね、このツンデレさんめ。尊いかっ!!
ふっ、と口元を緩めた私は映像記録水晶を取り出すと、そのままお兄様を激写した。
「バカ、やめろ」
「えー嫌ですぅ。だってお兄様可愛いんだもん」
私は悪役令嬢ですよ?
尊い対象の貴重なデレを前にスチル回収せずに何をしろとおっしゃるの?
ってわけで、嫌がるお兄様に親指を立てつつ私はイベント会場よろしく撮影会を強行したのだった。
私の視線を受けて師匠は簡単に状況を説明する。
ああ、なるほど。
だから私服なのですね、と私は納得する。それにしても、と私はお兄様の本日の衣装をマジマジと見る。
全身黒で統一し、秋物のコートを羽織りブーツを履いているだけなのに、凛とした佇まいから気品が溢れていて目を引く。
さすが攻略対象。足長っ。スラリと伸びた脚線美の破壊力がヤバい。私のお兄様かっこよ過ぎじゃないでしょうか!?
「……なんだよ」
しまった。私とした事がまじまじと無遠慮に見過ぎましたわ。
だって、お兄様お家では相変わらずほとんど話しかけてくださらないし、映像記録水晶が完成してしまった今、お兄様との接点ってなかなか持てないのですもの。
眼福〜って欲望のまま美少年ウォッチングをしたって許されると思う。
ものすごく仲が良いわけではないけれど、私これでもお兄様の妹ですし。
「本日は休暇をお取りと伺っておりましたが、私に何のご用ですの? お兄様」
コホンとわざとらしく咳をして私はお兄様に笑顔を向ける。
お屋敷ではなく、わざわざ外でしなくてはならないお話。
私には心当たりがないので、お兄様の出方を伺うしかないのだけれど。
「リティカ……その」
口を開いたお兄様は、珍しく言い淀む。私は首を傾げて、続く言葉をじっと待っていたのだけれど、全然言葉が出てこない。
「お兄様?」
促しても沈黙のまま、お兄様の紫暗の瞳は躊躇いの色を浮かべる。
お兄様の性格からして私に急ぎの案件ならさっさと言って済ませるだろうし……本当に一体どうしてしまったのかしら?
お兄様がここに来た理由が全くわからなくて、私は首をひねったあと焼きりんごの存在を思い出し、ポンと手を叩く。
「そうだ! お兄様、一緒に食べませんか? 今からお茶をするところなのです」
このままではせっかくの熱々焼きりんごも冷めてしまうし、アイスが溶けてしまう。
急ぎでないなら、話を聞くのは食べた後でもいいでしょう。
そんな結論に至った私は、お兄様をお茶に誘う。
「……いい、のか?」
驚いたように目を見開いて私にそう尋ねるお兄様に、きょとんと私は首を傾げる。
「……? 焼きりんごはお嫌いですか?」
いや、まぁ確かにお屋敷で一緒に過ごすことが少なく、セザールルート未プレイの私はお兄様の好みを把握していないけれど。
この美味しそうな匂いに抗える人間なんているだろうか? 否、いない!!
「……嫌い、じゃない。ただ、リティカから茶に誘われる日が来るとは、思わなかっただけだ」
ふいっと照れたように視線を逸らしたお兄様。
あぁ、うん。つまり好きってことですね、このツンデレさんめ。尊いかっ!!
ふっ、と口元を緩めた私は映像記録水晶を取り出すと、そのままお兄様を激写した。
「バカ、やめろ」
「えー嫌ですぅ。だってお兄様可愛いんだもん」
私は悪役令嬢ですよ?
尊い対象の貴重なデレを前にスチル回収せずに何をしろとおっしゃるの?
ってわけで、嫌がるお兄様に親指を立てつつ私はイベント会場よろしく撮影会を強行したのだった。