追放予定(希望)の悪役令嬢に転生したので、悪役らしく物語を支配する。
「お兄様も甘やかされたかったんですね。わかります」
「全然違う」
冷ややかな視線と共にキッパリそう言い切るお兄様。
ふっ、突っぱねてますけど、リティカには分かっております。
お兄様照れてらっしゃるんですね。お兄様ツンデレだから。
「何を考えているのか当てたくないんだが、とりあえず違う」
「まぁまぁ、そう言わずに。はい、あーん♪」
私は使っていなかった方のスプーンで小さく切り分けた焼きりんごにアイスをつけてお兄様に差し出す。
一瞬、面食らったような顔で私と差し出されたスプーンを見て、紫暗の瞳をパチクリと瞬かせたお兄様は、盛大にため息を漏らす。
「アイス、溶けちゃいますよ?」
私は怒られないのをいい事ににこにこにこにことゴリ押してみる。
まぁ流石にいきなり"あーん"はハードル高かったかしら?
仕方ないな、と下げようとしたところで身体をこちらに寄せたお兄様が、私の手首を掴むとそのまま一口で焼きりんごを食べてしまった。
「もうやらないからな」
指先で口元を拭うお兄様の仕草に、この年にしてこの色香、イケメンって幼少期から何をやってもイケメンなんだなぁとしみじみ思った私は、
「今のもう一度お願いします」
ワンモアプリーズとカメラを取り出して真剣な顔でおかわりを希望する。
「話を聞け、そしてカメラをしまえ」
「もう、カメラで定着するなら映像記録水晶なんて長い名前付けなきゃよかったじゃないですか! 減るもんじゃないし、もう一回くらいやってくれたっていいじゃありませんか?」
「ヤダ。お前その写真どうする気だ!?」
「布教活動と資金稼ぎに使うだけですぅー! 悪用しませんからぁ〜〜」
「悪用する気満々じゃないか!!」
ギャーギャーと2人して騒いでいたら、
「ふふ、お二人は本当に仲がいいですね」
とエリィ様から声がかかる。
「仲が、良い?」
私とお兄様が?
キョトンとする私に、
「ええ、とっても。この子たちもリティー様たちのように仲良しになって欲しいですわ」
そう言って、随分大きくなったお腹をそっと撫でるエリィ様。
そんなエリィ様を見ながら私の脳内に、ある光景が浮かぶ。それは今から6年後、この世界で本編が始まった頃のリティカの記憶。
『学園で話しかけてくるなよ』
祝いの言葉ひとつない、冷め切った兄妹関係。
『俺がお前を助ける事は無い』
その宣言通り、お兄様は断罪される私のことを気に留めてくださった事は1度たりともなかった。
誰1人、味方のいない悪役令嬢。
孤立無縁のリティカ・メルティー。
「どうした、リティカ?」
そう言って心配そうに向けられた優しい声と紫暗の瞳に、私の意識ははっと現在に戻る。
「どこか具合でも悪いのか?」
そう言って私に伸ばされた、私より大きな手。
「無理をするな。また倒れても困る」
そっけないその言葉と優しい手つきには、私に対しての愛情が感じられる。
「お兄様と私、仲良し?」
「……であれば、いいとは思っている」
そんな言葉と共に歩み寄りの姿勢を見せてくれたお兄様。
ああ、違うのだ。
ゲームのリティカと今ここにいるお兄様の妹は。
私は両方に手を当て、自分の頬が熱を持つのを感じる。
「どうした、顔が赤いが」
「ちがっ、別になんでもございません!」
「ふふ、リティー様照れてらっしゃる」
可愛らしいとエリィ様に微笑まれ、なおさら頬に熱が集中する。
「みやぁーー! い、言わないでくださいまし」
からかうのはいいけれど、からかわれるのには慣れていないのよ。
恥ずかしさと嬉しさと照れで感情をもてあました私は、ううっと呻き声を上げつつ、気持ちを落ち着けるように紅茶を口にした。
「全然違う」
冷ややかな視線と共にキッパリそう言い切るお兄様。
ふっ、突っぱねてますけど、リティカには分かっております。
お兄様照れてらっしゃるんですね。お兄様ツンデレだから。
「何を考えているのか当てたくないんだが、とりあえず違う」
「まぁまぁ、そう言わずに。はい、あーん♪」
私は使っていなかった方のスプーンで小さく切り分けた焼きりんごにアイスをつけてお兄様に差し出す。
一瞬、面食らったような顔で私と差し出されたスプーンを見て、紫暗の瞳をパチクリと瞬かせたお兄様は、盛大にため息を漏らす。
「アイス、溶けちゃいますよ?」
私は怒られないのをいい事ににこにこにこにことゴリ押してみる。
まぁ流石にいきなり"あーん"はハードル高かったかしら?
仕方ないな、と下げようとしたところで身体をこちらに寄せたお兄様が、私の手首を掴むとそのまま一口で焼きりんごを食べてしまった。
「もうやらないからな」
指先で口元を拭うお兄様の仕草に、この年にしてこの色香、イケメンって幼少期から何をやってもイケメンなんだなぁとしみじみ思った私は、
「今のもう一度お願いします」
ワンモアプリーズとカメラを取り出して真剣な顔でおかわりを希望する。
「話を聞け、そしてカメラをしまえ」
「もう、カメラで定着するなら映像記録水晶なんて長い名前付けなきゃよかったじゃないですか! 減るもんじゃないし、もう一回くらいやってくれたっていいじゃありませんか?」
「ヤダ。お前その写真どうする気だ!?」
「布教活動と資金稼ぎに使うだけですぅー! 悪用しませんからぁ〜〜」
「悪用する気満々じゃないか!!」
ギャーギャーと2人して騒いでいたら、
「ふふ、お二人は本当に仲がいいですね」
とエリィ様から声がかかる。
「仲が、良い?」
私とお兄様が?
キョトンとする私に、
「ええ、とっても。この子たちもリティー様たちのように仲良しになって欲しいですわ」
そう言って、随分大きくなったお腹をそっと撫でるエリィ様。
そんなエリィ様を見ながら私の脳内に、ある光景が浮かぶ。それは今から6年後、この世界で本編が始まった頃のリティカの記憶。
『学園で話しかけてくるなよ』
祝いの言葉ひとつない、冷め切った兄妹関係。
『俺がお前を助ける事は無い』
その宣言通り、お兄様は断罪される私のことを気に留めてくださった事は1度たりともなかった。
誰1人、味方のいない悪役令嬢。
孤立無縁のリティカ・メルティー。
「どうした、リティカ?」
そう言って心配そうに向けられた優しい声と紫暗の瞳に、私の意識ははっと現在に戻る。
「どこか具合でも悪いのか?」
そう言って私に伸ばされた、私より大きな手。
「無理をするな。また倒れても困る」
そっけないその言葉と優しい手つきには、私に対しての愛情が感じられる。
「お兄様と私、仲良し?」
「……であれば、いいとは思っている」
そんな言葉と共に歩み寄りの姿勢を見せてくれたお兄様。
ああ、違うのだ。
ゲームのリティカと今ここにいるお兄様の妹は。
私は両方に手を当て、自分の頬が熱を持つのを感じる。
「どうした、顔が赤いが」
「ちがっ、別になんでもございません!」
「ふふ、リティー様照れてらっしゃる」
可愛らしいとエリィ様に微笑まれ、なおさら頬に熱が集中する。
「みやぁーー! い、言わないでくださいまし」
からかうのはいいけれど、からかわれるのには慣れていないのよ。
恥ずかしさと嬉しさと照れで感情をもてあました私は、ううっと呻き声を上げつつ、気持ちを落ち着けるように紅茶を口にした。