追放予定(希望)の悪役令嬢に転生したので、悪役らしく物語を支配する。
お兄様に聞いて探しに来てくれたと言うロア様は、だからといって帰ろうと促すわけでも誰かに知らせを送るわけでもなく、ただ隣に座ってスイと戯れていた。
「私が一番にリティーを見つけられると自負していたんだけど、今日はスイに先を越されたな」
「きゅー」
スイがロア様の手の中でどやーと声を上げる。
「ふふ、スイはリティーが好きなんだね」
私と一緒だとニコニコ笑うロア様はスイを指で突きながら、
「まぁ、リティーの"一番"は私だけど」
とスイに話しかける。
「きゅゆ!? きゅきゅきゅきゅーー!!」
ロア様の言葉に猛抗議を上げるスイ。
「あははー何言ってるかさっぱりわかんない」
そんなスイを見て楽しげに笑うロア様。
「きゅーー!」
ぴょんぴょん跳ねて怒るスイ。
「まぁ、事実だから」
スライム相手にキラキラした笑顔で応対するロア様。
「きゅーきゅ、きゅ」
それに対し拗ねたような声でスイは反論する。
会話が成立しているのかいないのか全く分からないのだけど、とりあえず私に言えることは一つだけ。
「尊いっ」
ロア様とスイ、めちゃくちゃ可愛いな。
というかこの1人と1匹はいったいいつ知り合ったのか?
疑問は尽きないのだけれど、映像記録水晶を師匠の家に置いて来てしまった私にはスチルとして残すことができないので、可愛いを堪能しつつ脳内メモリーにその光景を焼き付けた。
「ロア様は、どうやってここに?」
「んー内緒」
しぃーっと人差し指を唇に当てて小首を傾げるロア様はとにかく可愛いくて、私は素直に誤魔化される事にした。
思い返せば、私は"かくれんぼ"でロア様に勝てた事が一度もない。
「ロア様、実は暇なんですか?」
「ふふ、そうだねぇ。最近リティーが遊んでくれないから暇だねぇ〜」
ねぇ、と小首を傾げてスイをふにふにと押して遊ぶロア様。
「コレ私も一匹欲しいなー」
「残念ながら、増産予定はございません」
スイがスライムらしく分裂でもすれば別だけど、と心の中で付け足して私はクスリと笑みを漏らす。
「ロア様は"かくれんぼ"得意ですね」
「リティーがかくれるの下手なんだよ」
ふふっと楽しそうな声で笑うロア様を見て、私は彼のお嫁さんになりたいと思った日の事を思い出す。
人よりずっと恵まれている環境にいるはずなのに、それを自覚することのなかった前世を思い出す前の私。
沢山のモノを与えられていたのに、それでもどうしようもなく、泣き叫びたくなる衝動に駆られる日があった。
私を通して、別の誰かを見ているお父様。
言葉を交わす事さえない、お兄様。
ワガママ放題の私の陰口を叩きながら、適当に宥めすかす周りの大人達。
沢山の人がいる広いお屋敷のなかで、ひとりぼっちで、空っぽの自分と向き合う恐怖と虚無感。
私は"寂しかった"のだと今なら分かる。
どこまでが許されるのか知りたくて、困らせるみたいに突然ふらっといなくなる私。
だけどお屋敷のみんなはお父様も含めて本当の私の事をよく知らないから、私がどこに隠れても誰も私を見つけてくれない。
何をしても怒られないのは、私が全く期待されていないから。
どんなわがままも通るのは、私が何の影響力もない愛玩動物と変わらないから。
本当の意味で誰にも愛されていない、まるで中身のない人形のような私。
それに気づいたのは、いくつの時だっけ?
はっきり言葉にできないくらい幼かった私は、それでもこれから先もそれが続くのかと思うと目の前が真っ暗になった。
いっそのこと、誰も私のことを知らないどこかに行ってしまえたらいいのに。
そんなことできるわけない私にできたのは、結局いつも通り隠れることだけだったのだけれど、そんな私の事をロア様はいつだって見つけ出してくれた。
いつも、どこに隠れても、必ず今日みたいにリティカを見つけてくれる。
そして、無理矢理連れ戻す事はなく、いつも側で私が動き出すのを待ってくれているのだ。
「私が一番にリティーを見つけられると自負していたんだけど、今日はスイに先を越されたな」
「きゅー」
スイがロア様の手の中でどやーと声を上げる。
「ふふ、スイはリティーが好きなんだね」
私と一緒だとニコニコ笑うロア様はスイを指で突きながら、
「まぁ、リティーの"一番"は私だけど」
とスイに話しかける。
「きゅゆ!? きゅきゅきゅきゅーー!!」
ロア様の言葉に猛抗議を上げるスイ。
「あははー何言ってるかさっぱりわかんない」
そんなスイを見て楽しげに笑うロア様。
「きゅーー!」
ぴょんぴょん跳ねて怒るスイ。
「まぁ、事実だから」
スライム相手にキラキラした笑顔で応対するロア様。
「きゅーきゅ、きゅ」
それに対し拗ねたような声でスイは反論する。
会話が成立しているのかいないのか全く分からないのだけど、とりあえず私に言えることは一つだけ。
「尊いっ」
ロア様とスイ、めちゃくちゃ可愛いな。
というかこの1人と1匹はいったいいつ知り合ったのか?
疑問は尽きないのだけれど、映像記録水晶を師匠の家に置いて来てしまった私にはスチルとして残すことができないので、可愛いを堪能しつつ脳内メモリーにその光景を焼き付けた。
「ロア様は、どうやってここに?」
「んー内緒」
しぃーっと人差し指を唇に当てて小首を傾げるロア様はとにかく可愛いくて、私は素直に誤魔化される事にした。
思い返せば、私は"かくれんぼ"でロア様に勝てた事が一度もない。
「ロア様、実は暇なんですか?」
「ふふ、そうだねぇ。最近リティーが遊んでくれないから暇だねぇ〜」
ねぇ、と小首を傾げてスイをふにふにと押して遊ぶロア様。
「コレ私も一匹欲しいなー」
「残念ながら、増産予定はございません」
スイがスライムらしく分裂でもすれば別だけど、と心の中で付け足して私はクスリと笑みを漏らす。
「ロア様は"かくれんぼ"得意ですね」
「リティーがかくれるの下手なんだよ」
ふふっと楽しそうな声で笑うロア様を見て、私は彼のお嫁さんになりたいと思った日の事を思い出す。
人よりずっと恵まれている環境にいるはずなのに、それを自覚することのなかった前世を思い出す前の私。
沢山のモノを与えられていたのに、それでもどうしようもなく、泣き叫びたくなる衝動に駆られる日があった。
私を通して、別の誰かを見ているお父様。
言葉を交わす事さえない、お兄様。
ワガママ放題の私の陰口を叩きながら、適当に宥めすかす周りの大人達。
沢山の人がいる広いお屋敷のなかで、ひとりぼっちで、空っぽの自分と向き合う恐怖と虚無感。
私は"寂しかった"のだと今なら分かる。
どこまでが許されるのか知りたくて、困らせるみたいに突然ふらっといなくなる私。
だけどお屋敷のみんなはお父様も含めて本当の私の事をよく知らないから、私がどこに隠れても誰も私を見つけてくれない。
何をしても怒られないのは、私が全く期待されていないから。
どんなわがままも通るのは、私が何の影響力もない愛玩動物と変わらないから。
本当の意味で誰にも愛されていない、まるで中身のない人形のような私。
それに気づいたのは、いくつの時だっけ?
はっきり言葉にできないくらい幼かった私は、それでもこれから先もそれが続くのかと思うと目の前が真っ暗になった。
いっそのこと、誰も私のことを知らないどこかに行ってしまえたらいいのに。
そんなことできるわけない私にできたのは、結局いつも通り隠れることだけだったのだけれど、そんな私の事をロア様はいつだって見つけ出してくれた。
いつも、どこに隠れても、必ず今日みたいにリティカを見つけてくれる。
そして、無理矢理連れ戻す事はなく、いつも側で私が動き出すのを待ってくれているのだ。