追放予定(希望)の悪役令嬢に転生したので、悪役らしく物語を支配する。
「私はあなたを助けたわけではないし、利用する気満々よ。だけどこれはあなたにとっても現状を打開できるチャンスだと思わない?」
「……チャンス?」
訝しげな金色の目を覗き込みながら、私は弱い自分を隠すように悪役令嬢らしく自信ありげで傲慢な微笑みを意識する。
交渉する時には付け入る隙を見せてはいけないのだと、私はお父様のやり方を見て知っていたから。
「私見た目通りか弱いただの貴族令嬢なの。だから私は私の代わりに戦ってくれるあなたの力を必要としているわ」
王子ルートにおいて、いてもいなくても問題ないセドリック。
本来ならロア様を狙う暗殺者で、恋のライバルなんて側に置く必要ないのだけれど。
隠しキャラらしく、彼はチートタイプだ。
生まれた時から忌み子と蔑まれるほどの魔力を持て余し、幼少期に売られた先で暗殺者として育てられあらゆる戦闘技術を叩き込まれている。
現時点においては彼ほど有能で使える人間はいない。
「コレは前金。ああ、別に持ち逃げしても構わないわよ? 私にとっては端金だし」
挑発するように私はクスッと笑って金貨の詰まった袋を彼の前に積む。
「でも、這い上がるチャンスを掴みたいなら、残る事をオススメするわ。私なら、もっとあなたの能力を有効に使ってあげられる」
私の事を値踏みするかのような不躾な視線。もし彼がもっと年数を積んだ手練れだったなら、私の言葉など耳に入らなかっただろうな、と金色の目から読み取れる感情を受け止めながら私は言葉を選ぶ。
「忠誠心なんかいらないわ。私が欲しいのは"結果"だけ。話に乗るならあなたが使い物になるかどうか、今度の秋の討伐であなたの実力を証明してくださる?」
元よりお金で忠誠心が買えるだなんて思っていないし、こんなもので命を張れだなんて言えないけれど。
「自信がないなら、尻尾を巻いて逃げても構わなくってよ? だけど私に協力するならその能力に見合った金貨と生活を保証してあげる」
私は師匠ルートを完全に潰すために、自分にない能力を持つ彼に課金する。
「自分を変えられるのは自分だけよ。私を利用なさい、セドリック」
そう言って私は言葉を締めくくる。
その金色の目で私と金貨を見比べたセドリックは、
「悪魔みたいな女だな、アンタ」
「あら、うれしい。悪役令嬢には、最高の褒め言葉ね」
にこっと微笑む私を見て、セドリックは金貨を私に押し返す。
「今もらっても困る。預かっておいてくれ。出て行くときに一括でもらうから」
「ふふ、交渉成立ね」
了承を告げた私は金貨を魔術の組まれたバッグに仕舞うと、
「持ってなさい。これは全部あなたのお金だから」
バッグとペアになっているカードを渡す。
そのカードは鍵であると同時に入れたモノが見られるようになっている。
セドリックは今度は素直にそれを受け取った。
「これからよろしくね、セド」
「ああ」
短く素っ気ない返事。
私を信じてなんていないだろうけれど、差し出した手を弾く事なく、握り返したセドリックにほっとして、私は悪役令嬢の仮面が外れた事にも気づかずに、普段通りに微笑んでいた。
「……チャンス?」
訝しげな金色の目を覗き込みながら、私は弱い自分を隠すように悪役令嬢らしく自信ありげで傲慢な微笑みを意識する。
交渉する時には付け入る隙を見せてはいけないのだと、私はお父様のやり方を見て知っていたから。
「私見た目通りか弱いただの貴族令嬢なの。だから私は私の代わりに戦ってくれるあなたの力を必要としているわ」
王子ルートにおいて、いてもいなくても問題ないセドリック。
本来ならロア様を狙う暗殺者で、恋のライバルなんて側に置く必要ないのだけれど。
隠しキャラらしく、彼はチートタイプだ。
生まれた時から忌み子と蔑まれるほどの魔力を持て余し、幼少期に売られた先で暗殺者として育てられあらゆる戦闘技術を叩き込まれている。
現時点においては彼ほど有能で使える人間はいない。
「コレは前金。ああ、別に持ち逃げしても構わないわよ? 私にとっては端金だし」
挑発するように私はクスッと笑って金貨の詰まった袋を彼の前に積む。
「でも、這い上がるチャンスを掴みたいなら、残る事をオススメするわ。私なら、もっとあなたの能力を有効に使ってあげられる」
私の事を値踏みするかのような不躾な視線。もし彼がもっと年数を積んだ手練れだったなら、私の言葉など耳に入らなかっただろうな、と金色の目から読み取れる感情を受け止めながら私は言葉を選ぶ。
「忠誠心なんかいらないわ。私が欲しいのは"結果"だけ。話に乗るならあなたが使い物になるかどうか、今度の秋の討伐であなたの実力を証明してくださる?」
元よりお金で忠誠心が買えるだなんて思っていないし、こんなもので命を張れだなんて言えないけれど。
「自信がないなら、尻尾を巻いて逃げても構わなくってよ? だけど私に協力するならその能力に見合った金貨と生活を保証してあげる」
私は師匠ルートを完全に潰すために、自分にない能力を持つ彼に課金する。
「自分を変えられるのは自分だけよ。私を利用なさい、セドリック」
そう言って私は言葉を締めくくる。
その金色の目で私と金貨を見比べたセドリックは、
「悪魔みたいな女だな、アンタ」
「あら、うれしい。悪役令嬢には、最高の褒め言葉ね」
にこっと微笑む私を見て、セドリックは金貨を私に押し返す。
「今もらっても困る。預かっておいてくれ。出て行くときに一括でもらうから」
「ふふ、交渉成立ね」
了承を告げた私は金貨を魔術の組まれたバッグに仕舞うと、
「持ってなさい。これは全部あなたのお金だから」
バッグとペアになっているカードを渡す。
そのカードは鍵であると同時に入れたモノが見られるようになっている。
セドリックは今度は素直にそれを受け取った。
「これからよろしくね、セド」
「ああ」
短く素っ気ない返事。
私を信じてなんていないだろうけれど、差し出した手を弾く事なく、握り返したセドリックにほっとして、私は悪役令嬢の仮面が外れた事にも気づかずに、普段通りに微笑んでいた。