追放予定(希望)の悪役令嬢に転生したので、悪役らしく物語を支配する。
「話はついたかな? そろそろ出立の時間みたいなんだけど」
私の無事は祈ってくれないのかい? なんて声をかけてきたのは、キラキラとした可愛い笑顔を浮かべる王子様。
うん、私の婚約者様は今日もまぶしい。
スチルに納めたい! ……では、なくて。
「ロア様、何故あなたがそちら側にいるのですか?」
討伐隊が子どもの遠足に見えてしまう原因その2、ロア様に話しかける。
「え? 魔道具の実験面白そうだなって思って」
討伐隊に志願しちゃった、とキラキラした可愛い笑顔で微笑むロア様。
ロア様の天使の微笑みにざわつくギャラリー。
うん、可愛い。
物凄く可愛い。
可愛い、けども。
……しちゃった、って無邪気か!! でも可愛い過ぎて文句が言えないっ!!
「もう、討伐は遊びではないのですよ? 危険過ぎます。それに、お兄様だって」
聞いてませんと拗ねた口調で、遠足に見える原因その3、お兄様に恨めしげな視線を送りつつ、いつもの白衣でもローブでもなく、魔術師としての戦闘服を身に纏ったお兄様かっこいいと反射的に映像記録水晶を構える私。
「師範や父上が行かれない以上、誰かが責任者として討伐に出なくてはならない。俺以上の適任者はいないと思うが」
そんな私の手から無言で映像記録水晶を取り上げたお兄様は、当然のようにそう言った。
「……そうかも、しれませんけど。でもそれにしたって、お兄様はまだ11の年を過ぎられたばかりではありませんか?」
いくらお兄様が天才的に魔法の才があったとしても、まだ子どもが魔物の討伐に出向くなんてと、心情的には反対だ。
確かに今回の討伐には、お父様も師匠も出向かれないが、他にもまだ優秀な魔術師はいるのにと、私は私に内緒で討伐に加わることを決めたお兄様になんと声をかければいいのかわからずうつむく。
「心配しなくても、ただの野外実験だ。無茶はしない。殿下の見張りもしなくてはならないし」
そんな私の頭上にポンっとお兄様は手を乗せる。
「だからおとなしく待っていろ。これ以上師範に迷惑をかけるんじゃないぞ」
「……承知、しました」
もう当日になってしまえば、私に引き止めることなどできるはずもない。
確かにお兄様の言う通り、実際に魔物の討伐を行うのは騎士達なのだから、それほど危険は無いのかもしれないし。
視線を落とした私に、ロア様はこっそり囁く。
「安心して、リティー。ほら、私のカラスは強かっただろ?」
しぃーっと人差し指を唇にあて、小首をかしげるロア様。
確かにカラスは強かった。王族である彼が出向くなら、表に出せない戦力もきっとこっそりついて行くのだろう。
「お土産にリティーが欲しがってた薬草取って来てあげる」
「薬草より、無事にお戻りくださる方が嬉しいです」
「うん、分かった。怪我ひとつなく帰ってくるから、待ってて」
私の手を取って無邪気に指切りするロア様だけど、いつも通りほのぼのとした雰囲気を纏う彼が討伐に出向くなんて心配しかない。
「……約束、ですよ。ロア様が好きなお茶、用意して待ってますから」
なお浮かない顔をする私を見たロア様は、
「俺が出向く事に決めたのは、リティカにそんな顔をさせるためじゃなかったんだけど」
と小さな声でつぶやいて、藍色の目でじっと私を見る。
私はその目に捉えられて瞬きを忘れる。
なぜかしら? 急にロア様を纏う雰囲気や魔力の質が変わった?
「俺はできない約束はしないから、リティカは笑って待っていて?」
くすっと笑ったロア様は、動けなくなった私に近づくと少し背伸びをして私の額に口付けた。
「ふぇ、あ……え!? えっ!?」
「うん、やっぱりリティーは元気な方がいいね。じゃ、行ってきます」
混乱する私を前に、お茶楽しみにしてるねとロア様はいつも通りの可愛い笑顔と口調でそう言って、お兄様と共に討伐隊に戻っていく。
何やらお兄様と言い争っているようだが、この距離では聞こえない。
「……さすが攻略対象。この年であの色香。魔性だわ」
末恐ろしいと思いつつ、これならヒロインもロア様にイチコロなのでは、と王子ルートに希望が持てた。
私の無事は祈ってくれないのかい? なんて声をかけてきたのは、キラキラとした可愛い笑顔を浮かべる王子様。
うん、私の婚約者様は今日もまぶしい。
スチルに納めたい! ……では、なくて。
「ロア様、何故あなたがそちら側にいるのですか?」
討伐隊が子どもの遠足に見えてしまう原因その2、ロア様に話しかける。
「え? 魔道具の実験面白そうだなって思って」
討伐隊に志願しちゃった、とキラキラした可愛い笑顔で微笑むロア様。
ロア様の天使の微笑みにざわつくギャラリー。
うん、可愛い。
物凄く可愛い。
可愛い、けども。
……しちゃった、って無邪気か!! でも可愛い過ぎて文句が言えないっ!!
「もう、討伐は遊びではないのですよ? 危険過ぎます。それに、お兄様だって」
聞いてませんと拗ねた口調で、遠足に見える原因その3、お兄様に恨めしげな視線を送りつつ、いつもの白衣でもローブでもなく、魔術師としての戦闘服を身に纏ったお兄様かっこいいと反射的に映像記録水晶を構える私。
「師範や父上が行かれない以上、誰かが責任者として討伐に出なくてはならない。俺以上の適任者はいないと思うが」
そんな私の手から無言で映像記録水晶を取り上げたお兄様は、当然のようにそう言った。
「……そうかも、しれませんけど。でもそれにしたって、お兄様はまだ11の年を過ぎられたばかりではありませんか?」
いくらお兄様が天才的に魔法の才があったとしても、まだ子どもが魔物の討伐に出向くなんてと、心情的には反対だ。
確かに今回の討伐には、お父様も師匠も出向かれないが、他にもまだ優秀な魔術師はいるのにと、私は私に内緒で討伐に加わることを決めたお兄様になんと声をかければいいのかわからずうつむく。
「心配しなくても、ただの野外実験だ。無茶はしない。殿下の見張りもしなくてはならないし」
そんな私の頭上にポンっとお兄様は手を乗せる。
「だからおとなしく待っていろ。これ以上師範に迷惑をかけるんじゃないぞ」
「……承知、しました」
もう当日になってしまえば、私に引き止めることなどできるはずもない。
確かにお兄様の言う通り、実際に魔物の討伐を行うのは騎士達なのだから、それほど危険は無いのかもしれないし。
視線を落とした私に、ロア様はこっそり囁く。
「安心して、リティー。ほら、私のカラスは強かっただろ?」
しぃーっと人差し指を唇にあて、小首をかしげるロア様。
確かにカラスは強かった。王族である彼が出向くなら、表に出せない戦力もきっとこっそりついて行くのだろう。
「お土産にリティーが欲しがってた薬草取って来てあげる」
「薬草より、無事にお戻りくださる方が嬉しいです」
「うん、分かった。怪我ひとつなく帰ってくるから、待ってて」
私の手を取って無邪気に指切りするロア様だけど、いつも通りほのぼのとした雰囲気を纏う彼が討伐に出向くなんて心配しかない。
「……約束、ですよ。ロア様が好きなお茶、用意して待ってますから」
なお浮かない顔をする私を見たロア様は、
「俺が出向く事に決めたのは、リティカにそんな顔をさせるためじゃなかったんだけど」
と小さな声でつぶやいて、藍色の目でじっと私を見る。
私はその目に捉えられて瞬きを忘れる。
なぜかしら? 急にロア様を纏う雰囲気や魔力の質が変わった?
「俺はできない約束はしないから、リティカは笑って待っていて?」
くすっと笑ったロア様は、動けなくなった私に近づくと少し背伸びをして私の額に口付けた。
「ふぇ、あ……え!? えっ!?」
「うん、やっぱりリティーは元気な方がいいね。じゃ、行ってきます」
混乱する私を前に、お茶楽しみにしてるねとロア様はいつも通りの可愛い笑顔と口調でそう言って、お兄様と共に討伐隊に戻っていく。
何やらお兄様と言い争っているようだが、この距離では聞こえない。
「……さすが攻略対象。この年であの色香。魔性だわ」
末恐ろしいと思いつつ、これならヒロインもロア様にイチコロなのでは、と王子ルートに希望が持てた。