追放予定(希望)の悪役令嬢に転生したので、悪役らしく物語を支配する。
「ふふ、不出来な弟子を持つと大変ですね。師匠」
私はじゃらりと鎖の音を鳴らして、師匠に笑いかける。
「全く、他にやりようがあっただろうが」
師匠は私のやらかしに対し、ため息をつく。
「えー? わざとでは無いのですよ。ちょっとついうっかり手が滑ってしまって、たまたま持っていた水の呪文の入った魔石を盛大にばらまいちゃった、ってだけの話ですわ」
わざとであろうがそうでなかろうが、魔術師見習いが魔石や魔道具を使って一般人を害する行為は、固く禁じられている。
「たまたま持ち歩く量じゃねぇだろうが、アレは。しかもばらまいちゃったついでに、その場にいた令嬢達全員もれなく水浸しじゃねーか」
それは秋の討伐を前にしたパーティでの出来事。
お父様の力で揉み消されることがないように、それはもう大人数の前、私は一切の言い逃れができない状況で大量の魔石をばらまいた。
「あら、人の婚約者に粉をかけようとしていた害獣をもれなく全部まとめてきれいに駆除しただけですよ。それに、スイを使って皆さんのドレスの水分も床にばら撒かれた水も全部回収しましたわ」
ふふっと笑った私に、やっぱりわざとじゃねぇかと師匠は呆れ顔だ。
せっかく綺麗に乾かしてあげたのに、初めて見るスライムは気持ち悪かったらしく会場からパニックになって逃げ出す令嬢多発。
後日速やかに私に1月の謹慎処分が通知された。
「……なぁ、なんでそこまでして俺を討伐に行かせたくなかったんだ?」
師匠がきれいな灰色の瞳で、じっと私を見つめてそう聞いたけれど、
「はて、何のことでございましょう? 私はただ、ロア様に近づく令嬢が気に入らなかっただけですわ」
私はただ肩をすくめて、そう返す。
ここが前世でやった乙女ゲームの世界に似ている事も、白昼夢でみたエリィ様が亡くなる未来も、いっそ話してしまうかと思ったこともある。
だけど、ここまで来ても師匠を討伐に行かせないことが本当にエリィ様の死亡フラグ回避につながるのか確証は持てていない。
何より誰かに話してしまうことでまた別の分岐点が発生してしまい、白昼夢で見た未来が現実になることが怖かった。
「なら、そういう事にしておいても構わんが。……リティカ、この国の王は一夫多妻制だ」
「存じておりますよ」
「お前、こんなことを続ければいくらこの国唯一の公爵令嬢であっても王太子妃の座を追われる羽目になるぞ」
「まだただの婚約者ですし、ただの王太子妃候補です。それに別に王太子妃になれなくったって構わないんです」
と私はいたずらっぽく告白をする。
「は?」
「ふふ、私、わがままだから。愛する旦那様には私だけを愛して欲しい。だから私、王家には嫁げません」
お兄様には内緒ですよと私はしぃーと人差し指を唇につけると、
「さて、師匠。そろそろ帰りましょうか。謹慎中の身でふらふらしてるの外聞悪いし」
そう言って師匠の前を歩く。
「って、お前はまた勝手に」
「ほら、早く来ないと置いていきますよ、師匠」
そう言って、私は歩き出す。
打てる手は全て打った。
後は未来を待つだけだ。ヒトからの悪評など怖くない。だって、私は追放予定の悪役令嬢なのだから。
私はじゃらりと鎖の音を鳴らして、師匠に笑いかける。
「全く、他にやりようがあっただろうが」
師匠は私のやらかしに対し、ため息をつく。
「えー? わざとでは無いのですよ。ちょっとついうっかり手が滑ってしまって、たまたま持っていた水の呪文の入った魔石を盛大にばらまいちゃった、ってだけの話ですわ」
わざとであろうがそうでなかろうが、魔術師見習いが魔石や魔道具を使って一般人を害する行為は、固く禁じられている。
「たまたま持ち歩く量じゃねぇだろうが、アレは。しかもばらまいちゃったついでに、その場にいた令嬢達全員もれなく水浸しじゃねーか」
それは秋の討伐を前にしたパーティでの出来事。
お父様の力で揉み消されることがないように、それはもう大人数の前、私は一切の言い逃れができない状況で大量の魔石をばらまいた。
「あら、人の婚約者に粉をかけようとしていた害獣をもれなく全部まとめてきれいに駆除しただけですよ。それに、スイを使って皆さんのドレスの水分も床にばら撒かれた水も全部回収しましたわ」
ふふっと笑った私に、やっぱりわざとじゃねぇかと師匠は呆れ顔だ。
せっかく綺麗に乾かしてあげたのに、初めて見るスライムは気持ち悪かったらしく会場からパニックになって逃げ出す令嬢多発。
後日速やかに私に1月の謹慎処分が通知された。
「……なぁ、なんでそこまでして俺を討伐に行かせたくなかったんだ?」
師匠がきれいな灰色の瞳で、じっと私を見つめてそう聞いたけれど、
「はて、何のことでございましょう? 私はただ、ロア様に近づく令嬢が気に入らなかっただけですわ」
私はただ肩をすくめて、そう返す。
ここが前世でやった乙女ゲームの世界に似ている事も、白昼夢でみたエリィ様が亡くなる未来も、いっそ話してしまうかと思ったこともある。
だけど、ここまで来ても師匠を討伐に行かせないことが本当にエリィ様の死亡フラグ回避につながるのか確証は持てていない。
何より誰かに話してしまうことでまた別の分岐点が発生してしまい、白昼夢で見た未来が現実になることが怖かった。
「なら、そういう事にしておいても構わんが。……リティカ、この国の王は一夫多妻制だ」
「存じておりますよ」
「お前、こんなことを続ければいくらこの国唯一の公爵令嬢であっても王太子妃の座を追われる羽目になるぞ」
「まだただの婚約者ですし、ただの王太子妃候補です。それに別に王太子妃になれなくったって構わないんです」
と私はいたずらっぽく告白をする。
「は?」
「ふふ、私、わがままだから。愛する旦那様には私だけを愛して欲しい。だから私、王家には嫁げません」
お兄様には内緒ですよと私はしぃーと人差し指を唇につけると、
「さて、師匠。そろそろ帰りましょうか。謹慎中の身でふらふらしてるの外聞悪いし」
そう言って師匠の前を歩く。
「って、お前はまた勝手に」
「ほら、早く来ないと置いていきますよ、師匠」
そう言って、私は歩き出す。
打てる手は全て打った。
後は未来を待つだけだ。ヒトからの悪評など怖くない。だって、私は追放予定の悪役令嬢なのだから。