追放予定(希望)の悪役令嬢に転生したので、悪役らしく物語を支配する。
「あなたがいくら聖乙女などともてはやされようとも、私にとっては関係のないこと。視界に入れることさえ煩わしい」
この国で私の大好きな人達に、ずっと笑っていて欲しい。
「ロア様についてもそう。たかが一回のエスコート。その程度のことで、浮かれないでほしいわ。奪えるものなら奪ってごらんなさい。どうせ、あなたたちごときでは何もできないのだから」
子どもの頃好きだった絵本みたいに王子様とお姫様が結ばれて、ハッピーエンドで幕を閉じる。
規定通りに私がいなくなり、大団円。
それが私の悪役令嬢としての最適解。
「覚えてらっしゃい? 私の前に立ちはだかると言うのなら、それは何人であったとしても容赦しないわ」
だから、私は私の望むストーリーを手に入れる。
傲慢で、ワガママで、この世のすべてが自分のものだと信じている、ゲームの中のリティカ・メルティーと同じように。
「誰かを使うような遠回しの事などしない。私が直接手を下してあげる」
私は意地悪げに口角を上げ、楽しげにそう言葉を紡ぎながら、私は軽く指先をライラちゃんの顎に当てて、ご理解いただけたかしら? と小首をかしげてまるで無邪気で残酷な子供のように笑って見せた。
「ええっと、あのぅ」
私の事をその美しい翡翠色の目に映したライラちゃんは、困惑した表情で何度もゆっくりと目を瞬かせる。
ふっ、私の悪役令嬢ムーブが決まったようね! と内心でドヤる私に。
「お嬢。いつ突っ込もうかなと思っていたんですが、セリフと行動が合ってない」
冷静なセドの声が耳に入る。
「えっ?」
我に返った私はパチパチと空色の目を瞬かせ、ライラちゃんの肩にいるスイを見つめる。
「きゅーぅぷ」
スイがどやーっとばかりに雄叫びを上げたので、私はゆっくりと彼女を見つめる。
ペンキもぶっかけられた水も綺麗にスイが"吸収"してしまったため、跡形もなく綺麗になくなり。
艶めく長い青緑色の髪は一部編み込まれお嬢様風に。
その髪にふわりと留まる彩を与える華やかな花の形をした髪飾りは紛れもなく私のイメージカラーで。
気づけば私の周囲には私物のお化粧直しセットが転がり、私の手には櫛が握られていて。
ほんのり化粧が施され、私のお気に入りの香水が僅かに香る誰もが振り返る可愛い美少女がそこにいた。
「お嬢、欲望に忠実過ぎんだろ」
お嬢のそういうとこ嫌いじゃないけど、とセドは爆笑するけれど、できたら早い段階で止めて欲しかった。
私、うっかりめっちゃくちゃいい仕事してしまったじゃない!
えぇーーーっ、コレどーすんの?
と収拾方法が思いつかず固まる私に、ライラちゃんは薄桃色の唇で優しく弧を描き、
「それでも、この事態を収めていただいたことに変わりはありませんので、私は勝手に感謝することにいたします」
このような醜態を晒し、ご不快にさせてしまったことを併せて謝罪いたしますと彼女は花がほころぶように、きれいに笑った。
最推しの笑顔にやられて私の胸はきゅんと高鳴る。
ふわぁぁぁーーーーっ、さすがヒロイン。ロア様の未来の嫁。いい子過ぎる。
「えっと、あの、メルティー公爵令嬢?」
困惑気味に小首を傾げた仕草もパーフェクト。
本物の破壊力はヤバかった。
このスチルを永久保存したいのだが、どこに課金したらよろしいか。とりあえず、魔法省? いいえ、魔道具ならお兄様? それとも師匠?
などと脳内で感情処理できずバグった私は、
「か、勘違いしないで! 今から精霊祭の打ち合わせでロア様やお兄様にお会いするのでしょう? ドブネズミを高貴なお二人の前に出すわけにはいかないから整えただけなんだからぁ」
まるでツンデレのような捨て台詞を吐いて逃走した。
しまった。
私とした事が。ツンデレはお兄様の専売特許なのにぃ。
などと頭を抱えたのはそれから10分後のことだった。
この国で私の大好きな人達に、ずっと笑っていて欲しい。
「ロア様についてもそう。たかが一回のエスコート。その程度のことで、浮かれないでほしいわ。奪えるものなら奪ってごらんなさい。どうせ、あなたたちごときでは何もできないのだから」
子どもの頃好きだった絵本みたいに王子様とお姫様が結ばれて、ハッピーエンドで幕を閉じる。
規定通りに私がいなくなり、大団円。
それが私の悪役令嬢としての最適解。
「覚えてらっしゃい? 私の前に立ちはだかると言うのなら、それは何人であったとしても容赦しないわ」
だから、私は私の望むストーリーを手に入れる。
傲慢で、ワガママで、この世のすべてが自分のものだと信じている、ゲームの中のリティカ・メルティーと同じように。
「誰かを使うような遠回しの事などしない。私が直接手を下してあげる」
私は意地悪げに口角を上げ、楽しげにそう言葉を紡ぎながら、私は軽く指先をライラちゃんの顎に当てて、ご理解いただけたかしら? と小首をかしげてまるで無邪気で残酷な子供のように笑って見せた。
「ええっと、あのぅ」
私の事をその美しい翡翠色の目に映したライラちゃんは、困惑した表情で何度もゆっくりと目を瞬かせる。
ふっ、私の悪役令嬢ムーブが決まったようね! と内心でドヤる私に。
「お嬢。いつ突っ込もうかなと思っていたんですが、セリフと行動が合ってない」
冷静なセドの声が耳に入る。
「えっ?」
我に返った私はパチパチと空色の目を瞬かせ、ライラちゃんの肩にいるスイを見つめる。
「きゅーぅぷ」
スイがどやーっとばかりに雄叫びを上げたので、私はゆっくりと彼女を見つめる。
ペンキもぶっかけられた水も綺麗にスイが"吸収"してしまったため、跡形もなく綺麗になくなり。
艶めく長い青緑色の髪は一部編み込まれお嬢様風に。
その髪にふわりと留まる彩を与える華やかな花の形をした髪飾りは紛れもなく私のイメージカラーで。
気づけば私の周囲には私物のお化粧直しセットが転がり、私の手には櫛が握られていて。
ほんのり化粧が施され、私のお気に入りの香水が僅かに香る誰もが振り返る可愛い美少女がそこにいた。
「お嬢、欲望に忠実過ぎんだろ」
お嬢のそういうとこ嫌いじゃないけど、とセドは爆笑するけれど、できたら早い段階で止めて欲しかった。
私、うっかりめっちゃくちゃいい仕事してしまったじゃない!
えぇーーーっ、コレどーすんの?
と収拾方法が思いつかず固まる私に、ライラちゃんは薄桃色の唇で優しく弧を描き、
「それでも、この事態を収めていただいたことに変わりはありませんので、私は勝手に感謝することにいたします」
このような醜態を晒し、ご不快にさせてしまったことを併せて謝罪いたしますと彼女は花がほころぶように、きれいに笑った。
最推しの笑顔にやられて私の胸はきゅんと高鳴る。
ふわぁぁぁーーーーっ、さすがヒロイン。ロア様の未来の嫁。いい子過ぎる。
「えっと、あの、メルティー公爵令嬢?」
困惑気味に小首を傾げた仕草もパーフェクト。
本物の破壊力はヤバかった。
このスチルを永久保存したいのだが、どこに課金したらよろしいか。とりあえず、魔法省? いいえ、魔道具ならお兄様? それとも師匠?
などと脳内で感情処理できずバグった私は、
「か、勘違いしないで! 今から精霊祭の打ち合わせでロア様やお兄様にお会いするのでしょう? ドブネズミを高貴なお二人の前に出すわけにはいかないから整えただけなんだからぁ」
まるでツンデレのような捨て台詞を吐いて逃走した。
しまった。
私とした事が。ツンデレはお兄様の専売特許なのにぃ。
などと頭を抱えたのはそれから10分後のことだった。