追放予定(希望)の悪役令嬢に転生したので、悪役らしく物語を支配する。
ルールは簡単。背を地面につけた方の負け。決着は手首に巻いた魔法を編んだ紐が切れる事で判定する。
正直、力押しすれば一瞬で勝てると思っていた。
「こんなか弱い私に負けるだなんて。悔しいでしょう、セドリック」
だというのに、ほんの僅かな隙をつきあらかじめ仕掛けてあった魔法陣で全ての魔法を無効化したお嬢様は、俺の事を落とし穴に落として打ち負かした。
ご丁寧に地面に描かれた魔術式で発現するゴーレムを落とし穴に仕込んでおり、ゴーレムに抱きつかれた時点で地面に背がついたのと同じ効果を発揮し、紐が切れた。
「事前に罠を張るのはアリなのかよ」
「あら、ダメだなんてルールを設けた覚えはないわ」
当然のようにそう言い放ったお嬢様は、
「文字さえ書ければこんな事もできるし、読めさえすれば術式が発動する前に消せたはずよ。こんな子ども騙し、私のお兄様には効かないでしょうね」
沢山の術式が書かれた札を手にドヤ顔で笑う。
どう見ても俺より弱い魔力しか保持していないお嬢様に負けた。
勝敗を分けたのは、知識量。
「理解したみたいね、賢くて嬉しいわ」
その時のお嬢が俺に提示したのは、学ぶことで能力を有効に使う事ができる可能性。
「ふふ、じゃあ約束通り最初の命令ね。まずは、しっかり食べて休みなさい。あなた、私の事を笑い者にする気? カビたパンを食べさせたなんて知れたら公爵家の恥じだわ」
俺にそう命令した。
彼女の物言いは、いつだって、冷たくて、尊大で。
「郷に入れば郷に従うものよ。誰もあなたの食べ物を取ったりしないから、隠して取り置く必要はないの。温かいモノは温かいうちに食べなさい」
私の名誉に関わるのよと、まるで自分の事しか考えていないようなふりをして。
俺を傷つけずに従わせるためのものだった。
そろそろいいかしら、と放り込まれた騎士団は居心地が良かった。
騎士団に放り込まれてから、沢山の噂話を聞いた。
リティカ・メルティーは、同じ年頃の貴族、特に女の子達からの評判は最悪だった。
傍若無人で、ワガママで。
誰かを傷つけることも厭わない。
金にモノを言わせて、自分の思い通りに事を運び。
婚約者である第一王子を縛りつける悪魔のような女の子。
王子から愛されていると勘違いしている彼女の代わりになるべく、未来の側室候補として王子に近づこうモノなら、その権力で粛正される。
アレは、絶大な影響力を持つ公爵家の令嬢だから、何をしても許されるだけ、と幾人も俺に囁いて公爵家から離れる事を善人顔で勧めてくる奴ら。
どうして、分からないんだろう?
お嬢のその物言いで、その行動で、いつも誰かが救われているというのに。
だけど、お嬢は憤る俺を前にいつだって涼しい顔をして笑う。
「言いたい奴には言わせておきなさい? 弱い犬ほどよく吠えるって本当ね」
ああ、でも序列が分かる分だけ犬の方がお利口かしら?
そう言ったお嬢の手に握られていたのが様々な人間の秘密だと俺が知るのはもう少し後の話だ。
正直、力押しすれば一瞬で勝てると思っていた。
「こんなか弱い私に負けるだなんて。悔しいでしょう、セドリック」
だというのに、ほんの僅かな隙をつきあらかじめ仕掛けてあった魔法陣で全ての魔法を無効化したお嬢様は、俺の事を落とし穴に落として打ち負かした。
ご丁寧に地面に描かれた魔術式で発現するゴーレムを落とし穴に仕込んでおり、ゴーレムに抱きつかれた時点で地面に背がついたのと同じ効果を発揮し、紐が切れた。
「事前に罠を張るのはアリなのかよ」
「あら、ダメだなんてルールを設けた覚えはないわ」
当然のようにそう言い放ったお嬢様は、
「文字さえ書ければこんな事もできるし、読めさえすれば術式が発動する前に消せたはずよ。こんな子ども騙し、私のお兄様には効かないでしょうね」
沢山の術式が書かれた札を手にドヤ顔で笑う。
どう見ても俺より弱い魔力しか保持していないお嬢様に負けた。
勝敗を分けたのは、知識量。
「理解したみたいね、賢くて嬉しいわ」
その時のお嬢が俺に提示したのは、学ぶことで能力を有効に使う事ができる可能性。
「ふふ、じゃあ約束通り最初の命令ね。まずは、しっかり食べて休みなさい。あなた、私の事を笑い者にする気? カビたパンを食べさせたなんて知れたら公爵家の恥じだわ」
俺にそう命令した。
彼女の物言いは、いつだって、冷たくて、尊大で。
「郷に入れば郷に従うものよ。誰もあなたの食べ物を取ったりしないから、隠して取り置く必要はないの。温かいモノは温かいうちに食べなさい」
私の名誉に関わるのよと、まるで自分の事しか考えていないようなふりをして。
俺を傷つけずに従わせるためのものだった。
そろそろいいかしら、と放り込まれた騎士団は居心地が良かった。
騎士団に放り込まれてから、沢山の噂話を聞いた。
リティカ・メルティーは、同じ年頃の貴族、特に女の子達からの評判は最悪だった。
傍若無人で、ワガママで。
誰かを傷つけることも厭わない。
金にモノを言わせて、自分の思い通りに事を運び。
婚約者である第一王子を縛りつける悪魔のような女の子。
王子から愛されていると勘違いしている彼女の代わりになるべく、未来の側室候補として王子に近づこうモノなら、その権力で粛正される。
アレは、絶大な影響力を持つ公爵家の令嬢だから、何をしても許されるだけ、と幾人も俺に囁いて公爵家から離れる事を善人顔で勧めてくる奴ら。
どうして、分からないんだろう?
お嬢のその物言いで、その行動で、いつも誰かが救われているというのに。
だけど、お嬢は憤る俺を前にいつだって涼しい顔をして笑う。
「言いたい奴には言わせておきなさい? 弱い犬ほどよく吠えるって本当ね」
ああ、でも序列が分かる分だけ犬の方がお利口かしら?
そう言ったお嬢の手に握られていたのが様々な人間の秘密だと俺が知るのはもう少し後の話だ。