追放予定(希望)の悪役令嬢に転生したので、悪役らしく物語を支配する。
35.悪役令嬢の羞恥心。
ヒロインとの初対面に浮かれてやらかしてしまった私は学園での授業終了後、自室に戻るとすぐさまベッドにダイブし、枕に顔を埋めた。
セドじゃないけど、本当に私欲望に忠実過ぎるわ。
だって!
だって!!
ホンモノのヒロイン、めちゃくちゃ可愛いんだもん!!
「はぁぁぁー。絶対、変なヒトって思われた」
悪女だの悪魔だのワガママだの傲慢だの傍若無人だのの悪評は別に構わない。だって私悪役令嬢ですし、そう振る舞ってますし。
「でも、変質者はいやぁぁぁ」
確かにスチル回収のために若干盗撮まがいの事もしてますけども。
でも! 神に誓ってやましい事はやってないわ。悪役令嬢らしく、悪事に手は染めてるけどね。
「ううっ、ちょっと可愛いからいじってみたいなって思っただけなのぉ。セクハラで訴えられたらどうしよう」
不敬罪だとか言われたらいけないからトータルコーディネートなんてロア様相手にもやった事ないのに。
いや、ロア様はそもそもセンスがいいからやる必要ないんだけど。
「せっかく今まで、お兄様とお父様とセドとララとリズを着飾るぐらいで我慢してたのにぃ。予算消費の名目でこっそり公爵家の制服デザインして入れ替えたり、定期的にオシャレイベントつっこんで髪結い師に使用人のみんなを可愛くしてもらったりして満足してたのにぃーーー! 悪役令嬢がいいヒトぶってるなんて恥ずかしすぎてもう学校いけないっ」
わぁぁーーと叫びながら一人反省会を繰り広げる私に、
「リティカ、枕に向かって大音量早口で独り言を言い続けるのは、流石に引くからやめろ。俺の妹の頭は大丈夫だろうか、とそろそろ本気で心配になる」
そう声をかけて来たのはお兄様だった。
「……お兄様、ここは私の部屋ですけど」
レディの部屋に押し入るなんて紳士のなさる事ではございませんわ、とうつ伏せのまま投げやりにぼやく私に、
「何度も声をかけたし、ノックもした。さっさと応答しないリティカが悪い」
ばさっとそう言い切ったお兄様は、
「やる。よく分からんが、元気だせ」
そう言ってイチゴシェイクを差し出した。
ちなみにお兄様、基本的に甘い飲み物は飲まない。
つまりコレは完全に私のために用意されたモノだ。
「ふわぁあぁ!? お兄様のツンデレっ!!」
「いらんなら返せ」
イラァッと青筋を立てるお兄様。
「いるに決まってるじゃないですか。家宝にします」
私は映像記録水晶を取り出して、お兄様ごとイチゴシェイクを激写した。
「……そんなモノまで写真に残すのか。リティカ、いい加減にしないと溶けるぞ」
「うーん、いい感じの構図が決まらなくて。角度と光の当て具合的にはこうかなぁ」
イチゴシェイク相手に本格的な撮影会を開催し始めた私を若干呆れた顔で眺めるお兄様。そんな紫暗の瞳の訝しげな視線を無視して撮影を強行した私は、
「良し、いい感じ。美味しそう」
出来上がった写真を満足気に眺めてアルバムに収めると、イチゴシェイクを堪能した。
「はぁ、美味しい。至福。溶け具合もいい感じ」
さっきまで鬱々としていたくせにころっと機嫌が治るなんて我ながら現金なんだけど、口の中に広がる甘さとイチゴの瑞々しさに幸せな気持ちでいっぱいだ。
「そんなモノ、いつでも飲めるだろうが」
「お兄様がくれた事に意味があるんです」
「そういうものか?」
「そういうものです」
ふふっと私は笑ってイチゴシェイクを堪能する。そんな私の髪を子どもみたいに撫でたお兄様は、
「たまになら差し入れてやる」
と当たり前に笑う。
「じゃあ、私はコーヒーをたまに差し入れる事にします。うちの領地の新鮮なミルク付きで」
お兄様、コーヒーはミルク入り砂糖なし派だ。6年前は知らなかったお兄様の好みを、今の私はちゃんと知っている。
「ああ、楽しみにしてる」
私達、随分仲の良い兄妹になれたんじゃないかしら。
そんな事を考えながら私はイチゴシェイクを飲み干した。
セドじゃないけど、本当に私欲望に忠実過ぎるわ。
だって!
だって!!
ホンモノのヒロイン、めちゃくちゃ可愛いんだもん!!
「はぁぁぁー。絶対、変なヒトって思われた」
悪女だの悪魔だのワガママだの傲慢だの傍若無人だのの悪評は別に構わない。だって私悪役令嬢ですし、そう振る舞ってますし。
「でも、変質者はいやぁぁぁ」
確かにスチル回収のために若干盗撮まがいの事もしてますけども。
でも! 神に誓ってやましい事はやってないわ。悪役令嬢らしく、悪事に手は染めてるけどね。
「ううっ、ちょっと可愛いからいじってみたいなって思っただけなのぉ。セクハラで訴えられたらどうしよう」
不敬罪だとか言われたらいけないからトータルコーディネートなんてロア様相手にもやった事ないのに。
いや、ロア様はそもそもセンスがいいからやる必要ないんだけど。
「せっかく今まで、お兄様とお父様とセドとララとリズを着飾るぐらいで我慢してたのにぃ。予算消費の名目でこっそり公爵家の制服デザインして入れ替えたり、定期的にオシャレイベントつっこんで髪結い師に使用人のみんなを可愛くしてもらったりして満足してたのにぃーーー! 悪役令嬢がいいヒトぶってるなんて恥ずかしすぎてもう学校いけないっ」
わぁぁーーと叫びながら一人反省会を繰り広げる私に、
「リティカ、枕に向かって大音量早口で独り言を言い続けるのは、流石に引くからやめろ。俺の妹の頭は大丈夫だろうか、とそろそろ本気で心配になる」
そう声をかけて来たのはお兄様だった。
「……お兄様、ここは私の部屋ですけど」
レディの部屋に押し入るなんて紳士のなさる事ではございませんわ、とうつ伏せのまま投げやりにぼやく私に、
「何度も声をかけたし、ノックもした。さっさと応答しないリティカが悪い」
ばさっとそう言い切ったお兄様は、
「やる。よく分からんが、元気だせ」
そう言ってイチゴシェイクを差し出した。
ちなみにお兄様、基本的に甘い飲み物は飲まない。
つまりコレは完全に私のために用意されたモノだ。
「ふわぁあぁ!? お兄様のツンデレっ!!」
「いらんなら返せ」
イラァッと青筋を立てるお兄様。
「いるに決まってるじゃないですか。家宝にします」
私は映像記録水晶を取り出して、お兄様ごとイチゴシェイクを激写した。
「……そんなモノまで写真に残すのか。リティカ、いい加減にしないと溶けるぞ」
「うーん、いい感じの構図が決まらなくて。角度と光の当て具合的にはこうかなぁ」
イチゴシェイク相手に本格的な撮影会を開催し始めた私を若干呆れた顔で眺めるお兄様。そんな紫暗の瞳の訝しげな視線を無視して撮影を強行した私は、
「良し、いい感じ。美味しそう」
出来上がった写真を満足気に眺めてアルバムに収めると、イチゴシェイクを堪能した。
「はぁ、美味しい。至福。溶け具合もいい感じ」
さっきまで鬱々としていたくせにころっと機嫌が治るなんて我ながら現金なんだけど、口の中に広がる甘さとイチゴの瑞々しさに幸せな気持ちでいっぱいだ。
「そんなモノ、いつでも飲めるだろうが」
「お兄様がくれた事に意味があるんです」
「そういうものか?」
「そういうものです」
ふふっと私は笑ってイチゴシェイクを堪能する。そんな私の髪を子どもみたいに撫でたお兄様は、
「たまになら差し入れてやる」
と当たり前に笑う。
「じゃあ、私はコーヒーをたまに差し入れる事にします。うちの領地の新鮮なミルク付きで」
お兄様、コーヒーはミルク入り砂糖なし派だ。6年前は知らなかったお兄様の好みを、今の私はちゃんと知っている。
「ああ、楽しみにしてる」
私達、随分仲の良い兄妹になれたんじゃないかしら。
そんな事を考えながら私はイチゴシェイクを飲み干した。