この結婚が間違っているとわかってる

『だったらウジウジすんなよ。兄貴はもうあの女のものなんだから』

伊織の言う通りだ。拓海は咲の夫になってしまった。もう小花のものにはならない。頭ではわかっていても心がそれを受け入れられない。

『きっとこの先もずっと私は拓海くんが好きなんだろうな。一生想い続けて生きていくよ』

重い女かもしれない。でもそれが小花の本心だった。

拓海を好きだという気持ちは小花の心の深くに根を張って、どんなに強い力で引っ張っても引き抜くことはできない。

二十六年間の人生で小花は拓海以外の男性を好きになったことがない。だからこれからも拓海を越えるような人にはきっと出会えないのだろう。

『どんな形でもいいから拓海くんのそばにずっといられないかな』

結婚した拓海とはもうこれまでのように気軽には会えない。ましてやふたりだけで会うのはやめた方がいいかもしれない。

拓海が小花を恋愛対象として見ていなくても、妻である咲はあまり良い顔をしないだろうから。

そうなると小花が拓海に会える機会はもうほとんどない。
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