この結婚が間違っているとわかってる
『だったら別の方法で兄貴のそばにいられるためにはどうすればいいかを考えればいいんじゃねぇの』
『別の方法?』
もしかしてそれが先ほどの『俺と結婚するのはどう?』という言葉と関係しているのだろうか。
『弟の俺と結婚すれば小花は兄貴の義理の妹になれる。同じ名字を名乗れるし親族になるんだから、幼馴染っていう今の関係よりも繋がりが強くなると思わね?』
『たしかに……』
思わず小花は納得してしまった。
できることなら拓海と結婚して妻になるのが理想だ。けれど、それが叶わないとわかった今、拓海のそばにずっといられる方法のひとつとして伊織と結婚という手もあるのかもしれない。
(でも、それってどうなんだろう……)
お願いしますと簡単には言えない。でも伊織の表情からは冗談を言って小花をからかっているようにも見えなかった。
わりと本気で結婚を提案しているのだろう。
『でも、仮に私と伊織が結婚するとして、それは伊織にメリットがあるの?』
小花は大好きな拓海の義理の妹というポジションを手に入れて、親族としてずっと拓海のそばにいられるというメリットがある。
だけど伊織はどうだろう。小花と結婚してなにか得することがあるのだろうか。
『あるよ、俺にも』
伊織が会場内のどこか一点をぼんやりと見つめながら答えた。