この結婚が間違っているとわかってる

『で、閃いたんだけど。小花なら結婚してからも俺が女と遊びまくっててもなにも言わないだろ』
『まぁそうだね。私は伊織の女性関係に一切興味ないから』

刺されないかを本気で心配はしたものの、刺されたら刺されたで伊織の自業自得だと小花は思っている。女性の気持ちを弄んでいる伊織がいけないのだから。

でも、目の前で刺されたときは救急車を呼んであげるくらいの情はある。

『つまり伊織は女遊びを続けたいから私と結婚したいってこと?』
『そう』

クズすぎる理由に小花は顔をしかめる。

けれど、これが伊織の生き方ならば幼馴染とはいえ否定するのはよくない。というよりも伊織の生き方に口を出したいとも思っていない。

伊織は女遊びのために小花を利用しようとしている。だったら小花も拓海のそばにいるために伊織を利用すればいいだけのことだ。

どうせこの先、拓海を越えるほど素敵な男性に出会えるとも思わない。だったら伊織と結婚するのも悪くはないと小花は思った。

いいよ、その提案を受ける。そう返事をしようとした小花だけどその前に言っておくべきことがある。

『私、伊織のこと嫌いだけどそれでもいい?』
『知ってる。俺も小花が嫌いだからちょうどいいだろ』

なにがちょうどいいんだ。先に嫌いだと言ったのは小花だけど、同じ言葉を伊織に返されてちょっとだけ腹が立った。
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