この結婚が間違っているとわかってる
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仕事終わりに同僚の美波から食事に誘われた小花は、このあとは特に予定もないのでうなずいた。
連れて来られたのは美波が雑誌で見てから気になっているという昭和をテーマにした居酒屋。
さっそく入店したものの、小花も美波も平成生まれなので懐かしさは感じない。逆に新鮮でわくわくとテンションが上がった。
昭和をイメージした店内には日曜日の夜に放送されている某国民的アニメで見る黒電話や、これはいったいどうやって使うのだろうと疑問に思う家電。当時の子供たちの間で流行っていたのだと思われる年季の入ったおもちゃなど、昭和を感じられるアイテムがいたるところに置かれている。
食事のメニューも当時を意識した料理が揃っていた。
二時間ほど滞在したのだろうか。お店を出た小花が腕時計に視線を落とすと、午後九時をさしている。このまま解散になるだろうと思った小花の腕に美波がぎゅっとしがみついてきた。
「お願い小花。まだ私と一緒にいて。家に帰ってもひとりなのよ~」
引き止められて小花は苦笑を浮かべる。
美波はきっと寂しいのだろう。食事のときに彼氏と別れたと打ち明けられたばかりだ。
原因は彼氏の浮気。美波はもう吹っ切れたと言っていたけれど、やはりまだ引きずっているのかもしれない。