この結婚が間違っているとわかってる

そうと決まれば呑気にネイルを乾かしている場合ではない。お風呂上りのすっぴんで髪も乱れている。服装もダボっとした部屋着だ。

(このまま拓海くんには会えない)

小花は急いで自室に向かい、クローゼットの中から服を引っ張り出した。

拓海に会うのだからおしゃれをしたい。でも、外出するような畏まった服は違和感がある。迷った末に部屋着の中でもかわいいものを選んで身に着けた。

再び化粧を施してセミロングの髪をハーフアップにまとめる。しばらくすると来客を知らせるチャイムが鳴った。小花は急いで玄関に向かう。

「いらっしゃい拓海くん」
「こんばんは」

扉を開けるとスーツ姿の拓海が立っていた。

手にはお土産と思われる紙袋を持っている。仕事が終わってから一度自宅に帰宅してここに来たのかもしれない。

拓海の自宅は小花と同じマンションの別の階にある。会社員である拓海の給料では手が出せない高級マンションだが会社を経営している咲の父親が購入したそうだ。

先に入居をしたのは拓海たちで、そのあとに小花たちも越してきた。拓海の近くにいたいという小花のために伊織が購入してくれたのだ。
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