この結婚が間違っているとわかってる

「こんな時間に来てごめんな」
「ううん、大丈夫。入って入って」

小花が拓海を家に招き入れようとしたところで、彼の後ろから小柄な女性がすっと姿を現した。

「こんばんは、小花ちゃん」

拓海の妻の咲だ。結婚式を終えてからロングだった黒髪をばさりと切り、ミディアムボブに変えた髪型は、かわいらしい顔の咲によく似合っている。

(咲さんも一緒なんだ)

拓海とふたりで会えると思っていた小花としては咲の来訪は予想外だ。正直に言ってあまり歓迎したくない。追い返したいけれどそんな幼稚な態度は取れない。

「こんばんは咲さん。どうぞ上がってください」

小花は笑顔を張り付けて咲を招き入れた。

拓海と咲にはダイニングテーブルの椅子に座ってもらい、小花はキッチンでコーヒーを淹れる。それを持ってふたりのもとへ行き、対面の椅子に腰を下ろした。

「はい、これ。小花にお土産」

持ってきた紙袋を拓海がさっそく小花に渡した。

「ありがとう拓海くん」

テーブル越しに受け取って中身を確認する。そこには白と青を基調とした缶が入っていて、さっそく蓋を開けるとほんのりとココナッツの香りがした。どうやらクッキーが入っているようだ。
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