この結婚が間違っているとわかってる
「実はボイスレコーダーの電源を入れるのを忘れそうになって」
「小花らしいな」
インタビューの最初に起きた失態について話すと拓海に笑われてしまった。
「もしかしてそれでまたインタビューをやり直したのか?」
「ううん。インタビューをした社員さんが気付いてスイッチを押してくれたから助かったよ」
小花がボイスレコーダーの電源を入れ忘れたのは今日が初めてではない。以前にも社員紹介を担当する同僚の代わりに一度だけインタビューをしたことがあるが同じ失敗をしていた。
そのときはそのままインタビューを続けてしまい、終わってから録音がされていないことに気付いた。ボイスレコーダー任せにしていたので質問に対する答えをメモしておらず、相手の社員に頭を下げてもう一度インタビューをお願いしたときの申し訳ない気持ちを思い出す。
そのときの失態を拓海に話したことがあったので覚えていたらしい。「今回は気付いてもらえてよかったな」と微笑む拓海はやっぱり倉橋と雰囲気が似ていた。
「それでね、インタビューをした社員さんが拓海くんと似ていたの」
「俺に?」
きょとんとした顔を見せる拓海に小花はうなずいた。