この結婚が間違っているとわかってる

「顔は似てないんだけど雰囲気がそっくりなんだよね。あとその人も学生時代にテニスをやっていたんだって。好きな食べ物や動物も同じだったから驚いたよ」
「それは確かにびっくりだな」
「インタビューの途中から拓海くんと話しているみたいだった」

大げさではなくて本当に小花はそう感じた。

「伊織じゃなくて倉橋さんの方が拓海くんの弟みたい」

これもわりと本気で思ったことだ。

伊織と拓海は血の繋がった兄弟なので背恰好と顔はわりと似ている。でも性格は真逆。優しくて朗らかな性格の拓海と、意地悪で尊大な態度を取る伊織はまったく似ていない。

「そんなに俺と似てたんだ。その倉橋って人」
「うん、そっくり」
「そっか。俺も会ってみたいな」

拓海がそう言ったのと同時にガシャンと大きな音がリビングに響いた。

「大丈夫⁉」

拓海が慌てたように声を掛けたのは隣に座る妻の咲だ。

おそらくコーヒーを飲もうとして手を滑らせてしまったのだろう。マグカップが倒れてテーブルにコーヒーがこぼれている。

「すぐに拭くものを持ってきます」
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