この結婚が間違っているとわかってる
「そうだ、拓海くん。明日の夜はうちで一緒にご飯を食べようよ」
「小花と伊織と一緒に?」
「うん。夕食用意して待ってるから」
咲が不在なのだから拓海を夕食に誘ってもいいだろう。伊織も一緒なら咲に変な誤解を与えないだろうし、弟夫婦の家にご飯を食べにいくだけのことだ。
小花の誘いに拓海はしばらく考えてから「それじゃあお邪魔しようかな」とうなずいた。
明日の夕食は拓海も一緒だ。小花はうれしくて飛び上がりそうになるのをなんとか堪える。
「明日は土曜日だから夜の七時頃でいいかな。待ってるね」
「ああ、よろしくな」
約束を取り付けた小花はご機嫌で自宅に帰った。
(ダイニングテーブルに花を飾ろうかな。食器も新しく揃えよう。服はなにを着よう、髪型は……)
明日の夕食のことを考えて浮かれる小花だけど、ふと我に返って大事なことを思い出した。
(夕食って誰が作るの?)
拓海を食事に誘ったのはいいけれど肝心の料理については考えていなかった。
小花は料理が苦手だ。拓海に食べてもらえるような美味しい料理なんて作れない。レシピ本を見てなんとか作ったとしても味の保証はない。
美味しくない料理を作って拓海に幻滅されたくないと小花は思った。