この結婚が間違っているとわかってる

「料理もできないのに兄貴を夕食に誘ったりすんなよ。つか咲さんはどうした」
「友達と旅行中で明後日までいないんだって。拓海くん家にひとりだから一緒にご飯食べようと思って」

それで食事に誘ったのだが小花は料理が苦手だ。伊織に作ってもらおうと思ったが断られてしまった。このままでは肝心の料理が用意できない。

「じゃあなにか適当に頼んで配達してもらえよ。ピザとかどう?」
「それじゃダメなの。拓海くんはコンビニ弁当やスーパーのお惣菜が続いているだろうからきちんとした料理を食べてもらいたい」
「だったら自分で作れ」
「無理」

首を横に大きく振った小花を見て、伊織が呆れたような表情を浮かべる。しばらくなにかを考えるような素振りを見せたあとで溜息混じりに口を開いた。

「わかった。じゃあ教えてやるからお前が自分で作れ」
「伊織は作ってくれないの?」
「俺は教えるだけで手は出さない。小花が全部自分で作れ。それなら手伝ってやる」

教えてもらったところで上手にできるだろうか。でも、伊織に見放されて全部自分で作るよりかはマシなものが作れるはずだ。

「お願いします」

小花は腰を直角に折って伊織に深く頭を下げた。
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