この結婚が間違っているとわかってる
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翌日は午前中に伊織とスーパーに買い物に出掛けて、お昼過ぎから早々と夕食の支度に取り掛かった。
伊織のスパルタ指導のもと出来上がったのはハンバーグ。少し焦げてしまったし形も歪だけど、手作りしたソースをかけて、付け合わせに焼き野菜を足すとそれなりの見た目にはなかった。
味見もしたけれど、これなら拓海に食べてもらえると思える程度にはよくできたと小花は思う。
コーンスープは鍋に粉末と牛乳を入れて混ぜただけで手作りとはいえないけれど、時間が足りなかったのだから仕方がない。
お米も炊いて料理がすべて揃ったのは約束の時間の十五分前。ダイニングテーブルに花も飾り、拓海を迎える準備は万端だ。
「じゃあ俺は出掛けるから」
拓海の到着を待っていると伊織がリビングを出ていこうとするので小花はとっさに引き止めた。
「どこ行くの? これから夕食なのに」
「俺はいない方がいいだろ。せっかくだから兄貴とふたりで食えよ」
「でもーー」
「女と約束してるから」
じゃあなと軽く手を振って伊織はリビングを出て行った。パタンと扉が閉まる音が静かに響く。