この結婚が間違っているとわかってる
涼やかな目元に長い睫毛。緩いカールのかかったブラウンヘアはサイドが少し刈り上げられてすっきりと爽やかだ。身長も一八〇センチは優に超えている。
伊織が外見にとても恵まれているのは認める。そのせいで女の子たちにモテまくる人生を送っているのも知っている。でも、いったいこんな男のどこがいいのだろうと、小花は子供の頃からずっと不思議だった。
「伊織のやつ、また別の女の子連れてる」
今一緒に歩いている彼女は伊織のどこがいいのだろう。彼女ほど美しければもっとマシな男を捕まえられるのに。伊織みたいなクズに引っ掛かってかわいそう。
小花は彼女に同情しつつ、妻である自分に見られているとも知らず堂々と女遊びをしている夫から冷たく視線を逸らした。
伊織が女性と親密にしているのを見るのはこれが初めてじゃない。結婚する前もその後も何度も見掛けている。でも、小花は一度もそれを咎めることはせず見て見ぬふりをしていた。
というのもこれがこの結婚の〝約束〟だから。
今夜も伊織は妻である小花と暮らす家には帰ってこないのだろう。
それでも別に構わない。
これが小花自身で選んで決めた結婚の形だから。
小花と伊織はもう半年も仮面夫婦を続けている――。