岩泉誠太郎の恋
岩泉君、ありがとう
4月になってエントリーを済ませると、トントン拍子で試験が進み、6月には内々定をもらえた。
夏休みもインターンとして働いて、それが終わると本格的に卒論にとりかかった。授業数が減って楽勝だと思っていた最終学年は、このままあっという間に終わってしまいそうだ。
「椿ちゃん」
図書室で調べものをしつつ勉強していたら、坂井君がやってきた。
「なんか凄く久し振りだね」
「椿ちゃんがいくら誘っても断るからじゃん」
「ごめーん、なんか無性に忙しくて」
「もう内定式は終わった?」
「うん。やっと安心できたよ」
「え?まだ疑ってたの!?」
「いや、なんとなくね?ここだけの話、OBの人がなんか胡散臭い雰囲気が漂う感じの人なんだよねー。多分そのせい」
「OBって、前にイケメンだって言ってた人?」
「うん。爽やかイケメンで優しいんだけど、なんか胡散臭いんだよ。なんでだろう?このモヤモヤを坂井君にも感じてもらいたいわー」
「胡散臭いって、、ちなみに俺は?胡散臭くない?」
「え?坂井君?うーん、坂井君は考えてることがわかりづらいなとは思うけど、別に胡散臭くはないかな?」
「ふーん。でも良かったよ。椿ちゃんがイケメンにメロメロだから構ってくれなくなったのかと心配してたんだよー」
「ないない。本当に忙しかったんだって」
「だったら今日は付き合ってよ。久し振りなんだから積もる話も色々あるし。ね?」
「うーん。わかった。じゃあちょっとだけね」
こうして忙しく過ごす内に、学生生活は終わりを遂げた。
思い返すと、大学で一番仲良くしていたのは坂井君だった。坂井君の一番の友達は私じゃなくて岩泉君なのだから笑えない。
結局岩泉君とはほとんど接点を持たないまま終わってしまった。坂井君による情報漏洩で無駄に彼のことに詳しくなってしまい、妙な親近感はある。だがそれも、卒業して彼を目にすることがなくなれば、次第に薄れていくだろう。
彼のおかげでフワフワとした甘い気分を存分に味わえた。
今時幼稚園児でももっとリアルな恋愛をしていそうではあるが、私がそれで幸せだったのだから、これでいいのだ。
岩泉君、ありがとう。あなたにも、いつか幸せが訪れますように。
夏休みもインターンとして働いて、それが終わると本格的に卒論にとりかかった。授業数が減って楽勝だと思っていた最終学年は、このままあっという間に終わってしまいそうだ。
「椿ちゃん」
図書室で調べものをしつつ勉強していたら、坂井君がやってきた。
「なんか凄く久し振りだね」
「椿ちゃんがいくら誘っても断るからじゃん」
「ごめーん、なんか無性に忙しくて」
「もう内定式は終わった?」
「うん。やっと安心できたよ」
「え?まだ疑ってたの!?」
「いや、なんとなくね?ここだけの話、OBの人がなんか胡散臭い雰囲気が漂う感じの人なんだよねー。多分そのせい」
「OBって、前にイケメンだって言ってた人?」
「うん。爽やかイケメンで優しいんだけど、なんか胡散臭いんだよ。なんでだろう?このモヤモヤを坂井君にも感じてもらいたいわー」
「胡散臭いって、、ちなみに俺は?胡散臭くない?」
「え?坂井君?うーん、坂井君は考えてることがわかりづらいなとは思うけど、別に胡散臭くはないかな?」
「ふーん。でも良かったよ。椿ちゃんがイケメンにメロメロだから構ってくれなくなったのかと心配してたんだよー」
「ないない。本当に忙しかったんだって」
「だったら今日は付き合ってよ。久し振りなんだから積もる話も色々あるし。ね?」
「うーん。わかった。じゃあちょっとだけね」
こうして忙しく過ごす内に、学生生活は終わりを遂げた。
思い返すと、大学で一番仲良くしていたのは坂井君だった。坂井君の一番の友達は私じゃなくて岩泉君なのだから笑えない。
結局岩泉君とはほとんど接点を持たないまま終わってしまった。坂井君による情報漏洩で無駄に彼のことに詳しくなってしまい、妙な親近感はある。だがそれも、卒業して彼を目にすることがなくなれば、次第に薄れていくだろう。
彼のおかげでフワフワとした甘い気分を存分に味わえた。
今時幼稚園児でももっとリアルな恋愛をしていそうではあるが、私がそれで幸せだったのだから、これでいいのだ。
岩泉君、ありがとう。あなたにも、いつか幸せが訪れますように。