岩泉誠太郎の恋

更なる条件

父さんとの約束の期限である3年が、もうすぐ終わろうとしている。

結果から言ってしまうと、在庫管理システムはどうにか完成させることができた。

取引先の協力が不可欠だが、規模が小さ過ぎても効果が見えにくい。システム自体も需要予測の時とは比べものにならない程に複雑なものとなり、俺の想定より大がかりなプロジェクトになってしまった為、まだ結果が出ていない。

計算上の予測では数年で資金回収が可能となるはずだが、結果を待たず更に規模を拡大する計画が出ているらしいので、間違いなく成功したと言えるだろう。

やれることは、全てやりきった。

年が明けて少ししてから、社長室に呼び出された。

「需要予測システムの導入と在庫管理システムの構築か、、3年間の成果としてはよくやったな、お疲れさん」

「ありがとうございます」

「で?気持ちは変わらなかったのか?」

「はい。もちろんです」

「そうか。じゃあ約束通り、春から三角エネルギーへの出向を許可しよう。副社長として行かせるから経営の勉強をしてこい。あと、あそこはDXの進みが悪いから最低でもDX認定の取得、それを次の条件にしとくかな。銘柄選定を目指せとは言わない、余裕だろ?」

「、、はい。わかりました」

「そういえば、彼女、安田さん?随分活躍してるらしいじゃないか。語学能力を買われて営業にって話も出始めてると聞いたぞ?目標は結婚だったよな?まあ、お前なら大丈夫か」

からかってるつもりか?本当にむかつくな。

「もちろん、万が一結婚という話になった場合の条件も、念の為考えてあるぞ?」

ああ、そういうことか。

父さんに5枚の見合い写真を渡された。

「え?」

「うちに利がある家のお嬢さん達だ。安田さんと結婚するなら、その中の一社でいい、結婚で繋がる以上の関係を築くんだ。期限は1年。無理なら見合いだ。いいな?」

どんだけ条件を出したらこの人は満足するんだろうか、、

その日緊急でいつもの飲み会が開かれた。

「結婚で繋がる以上の関係って何だよ!」

「へー。みんなかわいいね。合成かな?」

「俺はこの子が好みかなー。でもこの子、三角にメリットある?聞いたことあるけど確かベンチャー企業だよね?」

「ん?ああ、IT関連のコンサルで大当たりしてる企業だよ。確かにこことの繋がりで融通が利けば、まあそこそこメリットにはなるんじゃない?知らんけど」

「ふーん。そんな優良企業でも、三角との繋がりが欲しいもんなんだねー」

「ひとり娘で跡取りも欲しいんじゃない?社長はまだ若いみたいだし、孫に期待って感じ?三角の御曹司は優秀だって巷で有名だから、遺伝目当てか?」

「跡取りねー。誠太郎程の優良遺伝子じゃないけど、これ、俺じゃ駄目なのかな?」

「「え?」」

啓介の爆弾発言に、俺と宗次郎さんは一瞬言葉を失った。
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