あなたは運命の人

 さすがに無いだろうと思う。だって私にそんな事して何の意味がある?

 ……いや、私にじゃないか。私を含めたアプリの利用者に対してって事だ。そうなると考えるべきは企業にとってのメリット……。
 マッチング率を上げる事によって顧客満足度をあげる為、とか? それで良い噂が流れれば新規の顧客ゲットにも繋がるのかも……でもこんなのバレたら大変な事になるよね? それこそ詐欺で訴えられるような……利用規約にAIが紛れてますって書いてあったっけ? そもそも規約なんて全然読んでないから分かんない……。

 ピコンッ

「! ケイタさん!」

 急いで開くと二言、“ただいま。今日もお疲れ様”と簡潔な内容のメッセージが届いていた。いつもなら大喜びのその内容がなんだか怪しく感じてしまい、余計に私の不安を掻き立てる。

“おかえり。休日もお仕事お疲れ様”

“あのね、お疲れの所に申し訳ないけど、今度会える日にちって決まりそう?”

 ドキドキ、ドキドキ。ついに聞いてしまったと、心臓が大きく動き出す。向こうから言ってくれるのを待とうと思ってたのに。どうしよう。これで断られたら決まりかな。こんなにやり取りしてるのに会わないなんて、そうそう無いよね? 可笑しいよね?
 返事が遅い可能性の方が高いのは分かってるけれど、ついスマホを握りしめて返信を待ってしまった。誤魔化されるかな。もう少し待ってって言われるかな。不安に押し潰されそう——と、その時。

“今月末はどう?”

きた! 返事が返ってきた!

“空いてる! 絶対空けるね!”

“無理しないで。でも、ありがとう”

「〜〜! やっぱりケイタさん!」

 こちらこそありがとうと返して、そのままカレンダーにイベントを記入した。嬉し過ぎる。早く今月末よ来いと、ウキウキしながら当日までの毎日を過ごしていった。
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