あなたは運命の人

 待ち合わせ当日。ケイタさんから指定された駅の時計台の前に私は居た。ここは待ち合わせの有名スポットなのか、他にも何人か同じ様に人を待つ姿があった。

 約束を取り付けてからそれはもう気合いを入れていた私は、メイクも髪型もこれまでの経験をフルに活かし、一番丁寧に力を込めた。服のコーディネートだってそう。この日の為に買い物へ行ったのは言うまでもない。今日のテーマは清潔感と女子力である。
 今日の為の準備はとっても楽しかった。自分を綺麗に着飾る事に、大学生を経て社会人五年目の今ではもうすっかり慣れてしまっていたけれど、まだこんなにウキウキするのかと自分に驚いた。それだけ私は、ケイタさんに会いたかった。

 今日は良い天気。まるでお日様にも味方されてるみたい……なんて。待ち合わせ時間には少し早かったけれど、一応着いた事を連絡しておこう。

“今着いたよ。今日の服装はワンピースで、白いカバンを持っています。分かったら声掛けてね”

“もう着いたの? 悪いけどもう少しだけ待っていて下さい”

 すぐに返事があってにやにやしてしまった。今日ついに会えるのだという実感が強くなる。

“大丈夫だから、焦らずゆっくり来てね”

 まだ集合時間でも無いし、のんびり待とう。
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