30日後に死ぬ吸血鬼と30日後に花嫁になる毒姫
ラーテの体調
「わ、私のベッドで?」
「あぁ、俺はまたリビングのソファで寝るし」
「いやね! 塔に部屋は沢山あるから、貴方の部屋も用意したんだから」
バイセイの様子を見に行った時に、四階の部屋を見たがどこも長年使っておらずすぐに人が寝れるような空気ではなかった。
「そうだったのか、どこ?」
「あの……私の隣の部屋なんだけど」
「そうか」
「本の部屋なの。手入れもしているからベッドもたまにお昼寝とか気分転換に使ってたから空気も悪くないから」
「あぁ、わかっている。何をそんなに慌てるんだ」
単純に、昨日のあの儀式……血を吸われるのかと思うとドキドキしてしまうのだ。
「また眠ってしまうかもしれないから、ミルキィのベッドでしよう」
「あの……でも……」
「ミルキィ……?」
「私……こんな、貴方が死んでしまう道を選んで……」
「ベッドで話そう」
ラーテはミルキィの手を優しく掴んでランプを持って階段を上がる。
五階の部屋まで沈黙だった。
「あの……ラーテ」
「座ってミルキィ」
「ええ……あの、気を悪くしたならごめんなさい」
「とんでもないよ。君は俺の願いを叶えてくれる女神様なんだから何を言ってもいい」
「……ラーテ……あなたはそこまで」
やはりラーテにとって死は救いなのか。
「あぁ、俺は死を望む。そして君が普通の女の子になれば婚約者の命も救える。三人が幸せになれるんだ」
「……婚約者の命を……」
「何も悩む必要はない……さぁ……ミルキィ」
一瞬、身を固くした。
抱き寄せられて、またあの時間が始める。まだ何もされていないのに、ラーテの抱擁だけで身体が疼く。
「あ……はぁ……」
「ミルキィは……可愛いな」
ラーテの熱い息が首筋にかかって、そのまま、ちゅ……と吸われる。
「んっ……あぁ」
また快感が全身を貫く。
風呂で洗ったばかりの身体が熱くじっとりと湿って、また胸や秘部に快感が走った。
「あぁ……んっ……ああぁ」
ビクビクと身体が動いてしまうのも、変な声が出るのも恥ずかしい。
だってラーテは血を吸うためにただ身体を支えているだけで、いやらしく触れているわけでもない。
それなのに……そう快楽の波が押し寄せる。
「ひゃ……あっ……だめぇ」
何かが押し寄せて、またミルキィはラーテに強く抱きついた。
足がビクビクして、全身がすごい快感に包まれる。
頬を染めて涙目になるミルキィをラーテもまた熱い息を吐いて、頬を撫でてくれた。
「うん……ミルキィは可愛らしいから、きっと未来の夫も喜んでくれるだろう」
「ど……ど、ういう……こと……?」
「似たような快楽が待ってるよ」
「……わからないわ……」
「それでいいさ……お姫様」
「ラーテ……」
ミルキィがラーテに手をのばすと、彼は優しく抱きしめてくれる。
ぼーっとしながらも、ラーテの香水の香りと温かさで幸福感が胸を占める。
そんなミルキィの髪を撫でながら、ラーテは毒の強い目眩を感じていた。
冷や汗が流れ出るのを耐えながら、ミルキィが寝息を立てるのを待った。
「おやすみ……」
ミルキィを見守って、言われた通り隣の部屋へ行きベッドに倒れ込む。
少し血を吐いて、目眩が襲うなかラーテは気を失いかける。
「……この先に死が……マーヤ……」
女性の名を呼んで、ラーテは気を失った。
次の日から、また二人の暮らしは始まる。
10日間があっという間に過ぎて、ミルキィは骸骨馬ハクビヤに一人で乗れるようにもなった。
バイセイも寝たきりになったが毎日絵本を読む時間は幸せそうだ。
食後にワインを飲んで二人で話をする時間はミルキィにとって一番楽しく……そしてその後の甘美な時間。
それを思い出すだけでミルキィの身体は熱くなる。
快感に震えるミルキィをラーテは可愛いと褒めるが、いつも言う『夫が喜ぶ』という話を聞くと切ない気持ちになってしまう。
その日地下からの荷物を運ぶ際に、ラーテがよろけた。
「ラーテ!!」
慌てて駆け寄り、ソファへ寝かせた。顔色が悪い。
「……毒のせいなのね……」
「はは……甘美なものさ」
「何を言っているの! ねぇ……ラーテ、やっぱりこんなことはもう……」
ラーテの肩を優しく撫でようとしたミルキィの腕をラーテが掴む。
今までされたこともないような、強い握力。
「ミルキィ……!! ここまできて……今更やめるなんて……言うなよ」
瞳も今まで見たこともないような、怒りのような絶望のような。
更に手の力が籠められる。
「ラ……ラーテ……」
「……すまない……だけど、もう乗りかかった船なんてものじゃない俺達は運命を共有しているんだ……もう逃げられない……」
「……に、逃げるなんてしないわ……大丈夫よ。少し休んで」
「……あぁ……よかった……」
ラーテは熱があるようだった。
バイダイに言ってラーテのベッドへ運び、濡らしたタオルを額にあてる。
「……ラーテ……」
あと20日。
この男が弱っていくのを見守らなければいけない。
ミルキィは、朝起きると必ずアイロウ王子からの手紙を読んだ。
王子からの熱い求婚の手紙。
この初恋の君に愛されるために、毒抜きをしてもらう。
20日後には花嫁になる。
そう、思うように思うように、それが愛を手に入れるための行為なんだと思い込むために。
「う……マーヤ……うう……」
うなされるラーテが、女性の名前を呟く。
「……ラーテ……」
「マーヤ……」
何度か名前を呼んで、苦しみ、彼は眠りにつく。
「……いやだ……私、泣いてる……?」
彼が苦しみながら呼んだ女性の名前。
ミルキィは感じたことのない胸の痛みと涙が頬を伝ってるのに気が付いた。
椅子に座りながら、一晩ラーテを見守った。
次の日ラーテは左腕にしびれが出て、動かせなくなった。
「あぁ、俺はまたリビングのソファで寝るし」
「いやね! 塔に部屋は沢山あるから、貴方の部屋も用意したんだから」
バイセイの様子を見に行った時に、四階の部屋を見たがどこも長年使っておらずすぐに人が寝れるような空気ではなかった。
「そうだったのか、どこ?」
「あの……私の隣の部屋なんだけど」
「そうか」
「本の部屋なの。手入れもしているからベッドもたまにお昼寝とか気分転換に使ってたから空気も悪くないから」
「あぁ、わかっている。何をそんなに慌てるんだ」
単純に、昨日のあの儀式……血を吸われるのかと思うとドキドキしてしまうのだ。
「また眠ってしまうかもしれないから、ミルキィのベッドでしよう」
「あの……でも……」
「ミルキィ……?」
「私……こんな、貴方が死んでしまう道を選んで……」
「ベッドで話そう」
ラーテはミルキィの手を優しく掴んでランプを持って階段を上がる。
五階の部屋まで沈黙だった。
「あの……ラーテ」
「座ってミルキィ」
「ええ……あの、気を悪くしたならごめんなさい」
「とんでもないよ。君は俺の願いを叶えてくれる女神様なんだから何を言ってもいい」
「……ラーテ……あなたはそこまで」
やはりラーテにとって死は救いなのか。
「あぁ、俺は死を望む。そして君が普通の女の子になれば婚約者の命も救える。三人が幸せになれるんだ」
「……婚約者の命を……」
「何も悩む必要はない……さぁ……ミルキィ」
一瞬、身を固くした。
抱き寄せられて、またあの時間が始める。まだ何もされていないのに、ラーテの抱擁だけで身体が疼く。
「あ……はぁ……」
「ミルキィは……可愛いな」
ラーテの熱い息が首筋にかかって、そのまま、ちゅ……と吸われる。
「んっ……あぁ」
また快感が全身を貫く。
風呂で洗ったばかりの身体が熱くじっとりと湿って、また胸や秘部に快感が走った。
「あぁ……んっ……ああぁ」
ビクビクと身体が動いてしまうのも、変な声が出るのも恥ずかしい。
だってラーテは血を吸うためにただ身体を支えているだけで、いやらしく触れているわけでもない。
それなのに……そう快楽の波が押し寄せる。
「ひゃ……あっ……だめぇ」
何かが押し寄せて、またミルキィはラーテに強く抱きついた。
足がビクビクして、全身がすごい快感に包まれる。
頬を染めて涙目になるミルキィをラーテもまた熱い息を吐いて、頬を撫でてくれた。
「うん……ミルキィは可愛らしいから、きっと未来の夫も喜んでくれるだろう」
「ど……ど、ういう……こと……?」
「似たような快楽が待ってるよ」
「……わからないわ……」
「それでいいさ……お姫様」
「ラーテ……」
ミルキィがラーテに手をのばすと、彼は優しく抱きしめてくれる。
ぼーっとしながらも、ラーテの香水の香りと温かさで幸福感が胸を占める。
そんなミルキィの髪を撫でながら、ラーテは毒の強い目眩を感じていた。
冷や汗が流れ出るのを耐えながら、ミルキィが寝息を立てるのを待った。
「おやすみ……」
ミルキィを見守って、言われた通り隣の部屋へ行きベッドに倒れ込む。
少し血を吐いて、目眩が襲うなかラーテは気を失いかける。
「……この先に死が……マーヤ……」
女性の名を呼んで、ラーテは気を失った。
次の日から、また二人の暮らしは始まる。
10日間があっという間に過ぎて、ミルキィは骸骨馬ハクビヤに一人で乗れるようにもなった。
バイセイも寝たきりになったが毎日絵本を読む時間は幸せそうだ。
食後にワインを飲んで二人で話をする時間はミルキィにとって一番楽しく……そしてその後の甘美な時間。
それを思い出すだけでミルキィの身体は熱くなる。
快感に震えるミルキィをラーテは可愛いと褒めるが、いつも言う『夫が喜ぶ』という話を聞くと切ない気持ちになってしまう。
その日地下からの荷物を運ぶ際に、ラーテがよろけた。
「ラーテ!!」
慌てて駆け寄り、ソファへ寝かせた。顔色が悪い。
「……毒のせいなのね……」
「はは……甘美なものさ」
「何を言っているの! ねぇ……ラーテ、やっぱりこんなことはもう……」
ラーテの肩を優しく撫でようとしたミルキィの腕をラーテが掴む。
今までされたこともないような、強い握力。
「ミルキィ……!! ここまできて……今更やめるなんて……言うなよ」
瞳も今まで見たこともないような、怒りのような絶望のような。
更に手の力が籠められる。
「ラ……ラーテ……」
「……すまない……だけど、もう乗りかかった船なんてものじゃない俺達は運命を共有しているんだ……もう逃げられない……」
「……に、逃げるなんてしないわ……大丈夫よ。少し休んで」
「……あぁ……よかった……」
ラーテは熱があるようだった。
バイダイに言ってラーテのベッドへ運び、濡らしたタオルを額にあてる。
「……ラーテ……」
あと20日。
この男が弱っていくのを見守らなければいけない。
ミルキィは、朝起きると必ずアイロウ王子からの手紙を読んだ。
王子からの熱い求婚の手紙。
この初恋の君に愛されるために、毒抜きをしてもらう。
20日後には花嫁になる。
そう、思うように思うように、それが愛を手に入れるための行為なんだと思い込むために。
「う……マーヤ……うう……」
うなされるラーテが、女性の名前を呟く。
「……ラーテ……」
「マーヤ……」
何度か名前を呼んで、苦しみ、彼は眠りにつく。
「……いやだ……私、泣いてる……?」
彼が苦しみながら呼んだ女性の名前。
ミルキィは感じたことのない胸の痛みと涙が頬を伝ってるのに気が付いた。
椅子に座りながら、一晩ラーテを見守った。
次の日ラーテは左腕にしびれが出て、動かせなくなった。