30日後に死ぬ吸血鬼と30日後に花嫁になる毒姫
王子からの求婚
「アイロウ様が……私と婚姻……を?」
手紙にはアイロウが王からの命でザクスミルキが19歳になる来月、婿として塔にやってくるという事だった。
『僕は、君と出逢った時から君を想っていた……』
信じられない恋文だった。
あの出逢いから10年以上。
「ザクスミルキ……君を愛している。僕は、もうこの想いに嘘はつけない。来月、君に会いに行くよ……そして僕と結婚しよう……」
一文、一文読み上げて心が震える。
ザクスミルキもまた、あの日からずっとアイロウ王子を想っている。
「でも……でも、私と結婚なんて……」
ザクスミルキの血も体液も猛毒だ。
この塔に入れば、同じ空気を吸うだけで何日もつかもわからない。
代々、毒姫が世継ぎを生むために選ばれる男は確かに王家の血筋ではあった。
しかし、死んでしまうのだ。
アイロウ王子は確かに第二王子だが、毒姫に与えるような存在ではないはず。
「アイロウ王子が死んでしまうなんて……いや!」
しかし手紙には、アイロウ王子のザクスミルキへの愛が丁寧に綴られている。
『君以外の誰とも結ばれる気はない。命を捧げることになっても君だけを愛している』
何度も繰り返される愛の言葉。
そして最後には一ヶ月に此処に来る事を楽しみにしていると書いてあった。
「アイロウ様……でも、もう1枚……こ、これは王様の」
最後の一枚は王の名と玉璽が押された正式な通達だった。
これはすなわち王命なのだ。
「我が息子、アイロウと毒姫ザクスミルキよ。二人を心から祝福する……」
愛の告白に、結婚、死、そして王命。
クラクラと倒れそうなほどの衝撃だ。
「嘘でしょ……一ヶ月後に……王子様が」
部屋に夕日が差すまで、ザクスミルキは心配したバイダイが扉をノックするまで色々な事を考えてしまった。
「ザクスミルキ、ドウシタ」
ササッとパスタを作ってみたが食欲が湧かない。
バイダイが一向に食が進まないザクスミルキを心配するような発言をした。
「ザクス……ドシタンダイ」
弱りきった乳母ゴーレムのバイセイはダイニングの車椅子に座っている。
「バイセイ、なんでもないの。ごめんね」
「……ザクス……ナンデモハナシナサイ……」
この事を話したらどう思うだろう?
ずっと面倒を見てくれた乳母……いや、母のような存在。
王子様が結婚してくれる! なんてバイセイも喜んでくれるのではないだろうか?
でもザクスミルキは迷っていた。
この愛の先にあるのは……アイロウの死だからだ。
「……今日は、もう休もうかな」
「ソウカイ、カワイイコ」
いつまでも乳母のバイセイにとってはザクスミルキは小さな少女だ。
自分を産み落とした母のことはわからない。
子を産んだ毒姫はどうなるのか……誰も教えてくれないからだ。見えない未来の恐怖。
だけど、此処から逃げてもイバラの棘に迷路で迷い刺され死ぬ。
運良く出られても自国民を毒で苦しめることになる。
ザクスミルキはダイニングテーブルのチェアから立ち上がって、バイセイにかかった毛布を優しくかけ直して土の頬にキスをした。
「じゃあオフロに入って、そのままもう寝ます」
「ソウカイ……カワイイザクス……オヤスミ」
お風呂は塔からすぐ近くの小屋で温泉が湧いている。
こんな場所へ来る人間も魔物も魔獣もいない。
なのでザクスミルキは着替えとバスタオルとランプを持って温泉へと向かう。
「え……うそ」
塔から出て温泉小屋までは、石を並べた道が出来ている。
そこに誰かが倒れていた。
手紙にはアイロウが王からの命でザクスミルキが19歳になる来月、婿として塔にやってくるという事だった。
『僕は、君と出逢った時から君を想っていた……』
信じられない恋文だった。
あの出逢いから10年以上。
「ザクスミルキ……君を愛している。僕は、もうこの想いに嘘はつけない。来月、君に会いに行くよ……そして僕と結婚しよう……」
一文、一文読み上げて心が震える。
ザクスミルキもまた、あの日からずっとアイロウ王子を想っている。
「でも……でも、私と結婚なんて……」
ザクスミルキの血も体液も猛毒だ。
この塔に入れば、同じ空気を吸うだけで何日もつかもわからない。
代々、毒姫が世継ぎを生むために選ばれる男は確かに王家の血筋ではあった。
しかし、死んでしまうのだ。
アイロウ王子は確かに第二王子だが、毒姫に与えるような存在ではないはず。
「アイロウ王子が死んでしまうなんて……いや!」
しかし手紙には、アイロウ王子のザクスミルキへの愛が丁寧に綴られている。
『君以外の誰とも結ばれる気はない。命を捧げることになっても君だけを愛している』
何度も繰り返される愛の言葉。
そして最後には一ヶ月に此処に来る事を楽しみにしていると書いてあった。
「アイロウ様……でも、もう1枚……こ、これは王様の」
最後の一枚は王の名と玉璽が押された正式な通達だった。
これはすなわち王命なのだ。
「我が息子、アイロウと毒姫ザクスミルキよ。二人を心から祝福する……」
愛の告白に、結婚、死、そして王命。
クラクラと倒れそうなほどの衝撃だ。
「嘘でしょ……一ヶ月後に……王子様が」
部屋に夕日が差すまで、ザクスミルキは心配したバイダイが扉をノックするまで色々な事を考えてしまった。
「ザクスミルキ、ドウシタ」
ササッとパスタを作ってみたが食欲が湧かない。
バイダイが一向に食が進まないザクスミルキを心配するような発言をした。
「ザクス……ドシタンダイ」
弱りきった乳母ゴーレムのバイセイはダイニングの車椅子に座っている。
「バイセイ、なんでもないの。ごめんね」
「……ザクス……ナンデモハナシナサイ……」
この事を話したらどう思うだろう?
ずっと面倒を見てくれた乳母……いや、母のような存在。
王子様が結婚してくれる! なんてバイセイも喜んでくれるのではないだろうか?
でもザクスミルキは迷っていた。
この愛の先にあるのは……アイロウの死だからだ。
「……今日は、もう休もうかな」
「ソウカイ、カワイイコ」
いつまでも乳母のバイセイにとってはザクスミルキは小さな少女だ。
自分を産み落とした母のことはわからない。
子を産んだ毒姫はどうなるのか……誰も教えてくれないからだ。見えない未来の恐怖。
だけど、此処から逃げてもイバラの棘に迷路で迷い刺され死ぬ。
運良く出られても自国民を毒で苦しめることになる。
ザクスミルキはダイニングテーブルのチェアから立ち上がって、バイセイにかかった毛布を優しくかけ直して土の頬にキスをした。
「じゃあオフロに入って、そのままもう寝ます」
「ソウカイ……カワイイザクス……オヤスミ」
お風呂は塔からすぐ近くの小屋で温泉が湧いている。
こんな場所へ来る人間も魔物も魔獣もいない。
なのでザクスミルキは着替えとバスタオルとランプを持って温泉へと向かう。
「え……うそ」
塔から出て温泉小屋までは、石を並べた道が出来ている。
そこに誰かが倒れていた。