図書室の姫
─クルッ
長い髪を翻し、振り向いた。あの大きな瞳で…
「そのシリーズ…面白いよなっ…俺もその本、気に入っているんだ…」
何か話そうと考えたか、口に出た言葉はつまらないことだった…
俺がソワソワしていると
───クスッ
「…へ?」
彼女の顔はまた前髪で見えなくなっていたが、
今確かに笑った。
普段授業で必要な時ぐらいしか声を発しない彼女。
それにいつも無表情…だと思う…
そんな彼女が笑った…?
そんなことを思いながら顔を上げると彼女はもう図書室からいなくなっていた…
久野充美がいなくなった図書室には、顔を真っ赤にした俺しか残っていなかった…